第14話 初クエスト その3
対ベアフライの狩りは予想より順調だった
火力のある精霊魔法で半端にダメージ与えてモンスターハウス(魔獣の群れ化)を起こす事を危惧して1匹ずつ引き出してみんなで叩く戦法を当初組んだのだが、アイス・ブルームのレベル3と4を連発する事で素材傷つけず倒せる事が判ってからは俺が走り回って10~13匹ほど集めて開けた場所で倒し、ロバート達5名で解体・素材採取してる間は座ってMPの回復と言う戦法に変えた。
アイス・ブルーム二発程度の魔力消費は1分程度のお座りで回復するのだが
魔石だけじゃなく肉や皮、羽も生産素材として買い取り対象になるのでそんなに慌てて倒しまくる必要は無い、丁寧に作業する事で上質素材取れればそれだけPTが得る収入増えるのだから、とロバートに
何回かそのような狩りをして休憩しているとすこし離れてこちらを見ている人影に気づいた。
中級コッコ(騎乗用動物で姿は大型の
革兜から出る金髪が襟首にかかる程度の長さ、種族は
この森を担当している王国守備隊とは違うようだが……
こちらが彼に気づいたと判るとゆっくりと近づいてきた
「そちらのPTのリーダーは魔法士の貴方かな?」
なんかまずい事でもしただろうか、狩りをしている他所のPTに話し掛けるのはあまり無かったはずだ、が……
考えられるのは何組かのPTが単体の敵を狩っている狩場で範囲魔法で敵を集めて狩るのはマナー違反だとされる、始める時に他の冒険者が狩りをしていないのを確認して開始したとばかり思ってたが見落としてしまったか。
「いえ、このPTリーダーは 私ロバート・ブラウンです。」
「貴方がPTリーダーか、私はクラン『エトワール』のゲイル・ブロムバッハと申す。」
「私たちはまだクランも形成できない新米ですが、なにか拙い事してしまったでしょうか?」
クランとは冒険者が集まり相互補助など目的に盟約を結んだ団体である
俺がやってたゲームでは「ギルド」と呼ばれPVP(対人戦闘)システムの中核を成していた
「新米と称するにはずいぶんと派手に狩りして居たようだが?」と俺の方をちらりと視線をおくる
「協会からの
協会からの指定クエストは重要視されてある程度優先されている。それでも傍若無人に振舞ってよいわけでは無いのでロバートは言葉に注意払いつつ訊ねる。
クエストによっては格上の先輩プレイヤーをPTに組み入れて試練を果たすのは協会規定で認められる行為である。
もっとも冒険者ランクで言えば俺は一番下(Eランク)の新参者であるけどな
「協会の指定クエストはそのPTの技量向上と戦術の研鑚のために課せられるものである、効率を図るのも良いが格上の者に頼って楽をするのは誉められるものではないな。」
あー、多分この人はロバート達が寄生プレイしてると勘違いしてる、訂正したほうがいいかな
「えっと、このPTメンバーでは私が一番下のランクなのですが。」
「なんですとっ!? それで貴方のランクはいかほどですか?」
「つい先日登録したてのランクE冒険者のベル・カッツェです、どうぞよしなに。」
ランクEは街中での雑用やお使いクエから始めて街の外に出られるのはDランクからなのが協会で受付嬢から教えられた知識である、ゲームだとすぐ街の外で狩りしてたから知らんかった
もちろんレベルは100超えてるのでこの辺の魔物ならソロでも平気なのだが言わないで置く、聞かれて無いし。
「ほう、冒険者なりたてでその魔法の威力、失礼ながらその杖は家宝とかですかな?」
まぁ冒険者成り立てて火力ある魔法ぶっ放してたら杖のおかげと思うのは自然だろうな。だが魔法を覚えるのはそれなりの経験値積んでないと収得できない事知らないはず無いんだが、射撃士らしいし自分の専門外の職には不見識なのだろうか。
ちなみに今使っているのは100R(レア)杖の『赤金剛鸚鵡の杖』である。
ウッドワース王国の北、メタリギア共和国から更に東の砂漠地帯を越えた月牙峡谷のボス魔物を粘着狩りして得たドロップ品だが家宝とまで言うシロモノではない。
銀行貸し金庫にはギルメンと一緒に潜ったダンジョンで得た130+杖と130R杖が眠っている。
レベルが上がればそれに切り替える予定であるが、いつになるかは判らない。
「家宝ではないですがこの地に来るまで愛用していた杖ですね。」
「なるほど、この地に来てさほど日にちが経ってないと言うことですか、あなたもホーリーライトからここで修行に来たくちですかな?」
『あなたも』と言う事はこの人物もホーリーライトから来たと言う事だろうか。
ロバートはヒト族だが--両親はホーリーライト出身だが--ここウッドワース国生まれだ。
キノコ森からグリンワルドの街へ帰還する際その事をロバートから聞いている
従って「ホーリーライトから修行に来た」の主語はゲイルと名乗った人物自身のことだろう。
さて、自分の事はどれだけ明かして良いものか……
「いえ、ホーリーライト王国ではなく『日本』から来ました。」
プレイヤーなら『ははっ、ナイスジョーク』と言うか、他国サーバープレイヤーなら出身国の事で雑談がはじまるだろう、やってたゲームはアメリカ・台湾・シンガポール・フランスにサーバー置いていたし、今いる世界が日本以外のサーバーの可能性も少なからずある。
もっとも、これまでの会話で目の前の人物がプレイヤーでないとほぼ確信していた
視野の右上隅に表示しておいたレーダーでは「青い点」つまり
「ニホンですか…、聞いた事無い国ですね、遠つ国からの旅人でしたか…どうです?ケモノヒトの多いこの国よりホーリーライトに来てはいかがですかな?」
本人は善意のつもりだろうがやってる事は「引き抜き」である
しかもPTでクエストをやってる最中にする事ではない、マナー違反も
もともと細目だったルークは
だが彼らは怒鳴らず、唸り声も出さず静かにこちらを見守っている。
代表であるPTリーダーのロバートが怒りを堪えているからだ
「話を遮って済みませんが、我々はクエストの途中であります、狩りの続きを再開してもよろしいでしょうか?」
ここで暴力沙汰に及べば森を警備している兵が駆けつけてくるのは確実である
マナー違反を犯した愚か者を
喧嘩両成敗で自分たちも罰せられてクエスト失敗になるのは避けたい。
狩りの終了後に協会に報告して協会からクランに警告行く事で我慢するしかない
「あぁ、これは失礼、乗り物クエストの途中でしたね、お時間取らせて申し訳ない。
はやくブタさんもらえると良いですねぇ。」
一応謝罪の形を取っているが侮蔑的な微笑みはそのままである
騎乗動物無しのレベル10台と中級騎乗動物持ちレベル40越えはそれだけ明確な格差がある。手を出してきたら返り討ちにあわせる程度の攻撃スキルを持っている。
もっともそれは俺という存在を脳裏からすっぽり抜け落ちている計算としてだが。
「話は終わったな、馬鹿はさっさと立ち去ってくれ、狩りの邪魔だ。」
念のため周囲をマップとレーダーで確認しておいた
警備兵はここから500m離れた詰め所に二名、我々の近く半径100m以内に狩りをしている他の冒険者は居ない。
北に20m離れた場所にひとつ青い点が有るが姿は無い。このゲイルという馬鹿の仲間ではない、仲間なら馬鹿を止める責任があるからな、そこに居るのに姿が見えないのは隠密スキル「カモフラージュ」を使っているからだ。ゲイルが来る前にちらちら視界の隅にいた冒険者が居たがたぶん『そいつ』だろう。
ランクアップクエストでときたま協会の職員が隠れてチェックすると宿の酒場で先輩冒険者の話を聞いたから状況からほぼ「当たり」のはず。
「無礼なっ、火力自慢な魔法使いらしいが、それでは長生きできぬぞ。」
確かに魔法封じる『
初手でそれを喰らわせば後はいかようにも料理できる
でも『
まぁ殺す気でクリティカル狙うなら『対魔封矢』より別のスキル撃つべきだがな。
丁度良い按配に近づいてくるアレを利用させてもらおうか
目を閉じてこれから放つ呪文をショートカットにセットする
「【
平地で障害物無しの条件だが10m以内なら指定先に瞬時に移動する魔法でゲイルから距離をとる。
「迸れ我が魔力 盾となりわが身を守れ【
「なにっ、このっ」
奴は一瞬俺を見失ったが呪文詠唱を耳にして即座に位置を割り出し
だが魔導障壁は完成し、矢は光る壁に阻まれて地に落ちた
攻撃を受けた事でシステムが自動的に赤表示(敵認定)した、PKプレイヤーには
あとから運営から警告が行く、度重なればBANだ
まぁGMコールだせるかわからんけどなw
時間的余裕有るので詠唱短縮せず本来の威力発揮を重視してっと
「紅蓮の炎を纏い 来たれ赫怒の霊鳥 我が前の敵を焼き尽せ【
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騎乗動物は魔法生物で使用しないときは「アイテム指定」として鞄に収める事出来ます
ロバート達が指定クエストで得ようとするブタ形で速度は10km/h(だいたいママチャリくらい
ゲイルの乗っている中級では30~40km/hくらいです
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