第8話 冒険者協会 その2
レベル120でも安心できないイベント
それが参加拒否できない「強制クエスト」で発動されるとマジヤバイ
それは「戦争イベント」である
モンスター相手ではなくプレイヤーとの対人戦闘
高レベルになると魔法使いだけでなく戦士も遠距離攻撃スキルや広域攻撃スキルを持ち、レベル170プレイヤー相手だとレベル120魔法使いは出会ったら即死亡である
唯一の対抗策はこちらの重装甲戦士が味方からの各種
ただ、これらの攻撃も必ず当たるとは限らない
レベル差が10有れば「
おまけに相手の攻撃には命中率上昇でほぼクリティカルとなる
紙装甲の魔道士はもとより盾持ちの重装甲戦士もレベル差で蹂躙対象仲間入りだ。
そんな化け物が俺の居たサーバーでも30名居た
他の先行サーバーなら100名越えて居るだろう
ゲームなら
ただ、それは「非戦闘ギルド」が取れる手段であって
「戦闘ギルド」でそんな事すればギルドに居づらくなるのは自明の理である
俺の居たサーバーでオープンから居たフレンドはPVP戦争実装してから半年で9割去っていった
あまりの評判の悪さで運営がアップデートで
そんな「戦争イベント」が週2回起きたら………
「ここグリンワルドにおいて『緊急コール』『強制クエスト』は現在のところ
『大量発生したモンスターが街道の通行の安全を脅かすレベルと報告された場合の討伐』『集落を高レベルモンスターが襲撃した時の防衛』の二つですね。」
「現在のところ、と言う事は他には?」
「40年ほど昔の話となりますが『異界からの侵略』と言う災厄が有って、その時はここグリンワルドだけでなく四ヶ国すべてを挙げた戦闘が数年続き、それらを退けた、と記録にあります。」
「それは「戦争」ですか?」
国を挙げての戦闘なら「戦争」なのだろうけどどこか違和感があったので確認する
「冒険者だけでなく国の正規の兵士が動いて大規模に戦闘したわけですから「戦争」と言えばそうなのですが、当初国と国が戦っていたのが「何者かが画策して争わせている」と判明してからは四ヶ国が協力して彼らと戦い・退けたわけで彼らの本拠地は結局不明で終結したと聞いております」
「もちろん協会は四カ国各地で現在も調査はしてますが通常業務ではなく、なんらかの兆しが有った場合に『
……俺の知っている「戦争イベント」は四カ国のギルドが領地を賭けて戦う奴である
だがこの世界では40年前に「異界からの侵略者」に対して四カ国合同で戦ったのがそれで、聞いた様子では現在では行われていないようだ………
「
「ありがとう、そのような事態になれば俺もなんとかしないとならないだろうな……。」
知らず知らずのうちに声に震えた調子が表れてしまった
受付嬢の狐さんは新人をちょっと脅かしすぎたようだと解釈し、慌てて宥める口調に変わった
「えっと、これらの
いいひとだなぁ……笑顔になった時の口元の犬歯がちょっと大きいのが怖いけど。
「質問が無ければ冒険者登録に移りたいと思いますが、冒険者志願の気持ちに変わりは無いですか?」
「はい、登録します、それと書類の代筆もお願いします」
登録料の銀貨2枚と代筆料金の銅貨20枚を受付カウンターのトレイ皿に置く。
「それではお名前と持っているスキル、これは技能名ですね、それを申告お願いします。複数所持している場合は組み合わせにより自動的に職名が決定します。」
魔法と武器スキル持ってる場合は魔法戦士とか聖戦士とか厨二心くすぐるアレになるのだろうか、残念ながら武器スキルは持ってないけど。
「名はベル・カッシェ。スキルは精霊魔法と神聖魔法を覚えています。」
「
受付嬢は記入した書類をA4サイズの灰色の箱のふたを開けて置き、手前側のスリットに名刺サイズの鉛色の金属板を差し込んで箱のふたを閉じた
「仮登録をいたしますので、この箱の上面に手を乗せてください、正規の協会証は明日お渡ししますが、クエストの受注や協会関連施設、銀行の取引は本日から可能となります、紛失した場合の再発行は銀貨3枚となりますので無くさないようにしてくださいね。」
俺は言われた通り箱の上面に左手を乗せると受付嬢は「アクセプト」と短く唱えた
箱は全体が黄色く輝やいて温かくなり、俺から見て手前から奥のほうに白い光を一往復してもとの色に戻った、なんかコピー機みたいなんですけど、すごくね?
箱から取り出されて手渡されたカードには
【ベル・カッシェ】ランクE ノービス
スキル:神聖・精霊 ジョブ:ウィザード
うむ、ちょっと表記が素っ気無い気もするけど身分証明書があるのは心強い、なんたって某仮面ヒーローと同じ響きがするから気分も昂揚するってもんだ。
カードを手にして「ヒョーッ!」「シャアッ!」と浮かれている姿を見て受付嬢は営業スマイルと違った微笑を浮かべている、小学生の男の子のゴッコ遊びを見守る近所のお姉さまみたいな気持ちなんだろう、それが観察対象が二十歳過ぎの野郎だとしてもだ
となりの猫顔や狗顔の冒険者がこちらを見ているのに気付き、ちと赤面してしまった。こほんと咳払いして受付嬢になにか良いクエストの出物無いか尋ねてみる
受付嬢は初心者向けクエストの依頼書の束を取り出して幾つか挙げてくれた
沼の中の島々を結ぶ木造橋の修繕かその資材の運搬、
ポーションの材料となる薬草採取
「樹魔の森」や「キノコの森」に居る守備兵への伝言配達と報告書の回収、
木造橋の修繕には「大工」スキルが必要だし、大工になるつもりはない、
資材運搬は戦士志願の体力ある奴を募集と言う事でパス、
伝言は特別なスキルは要さないが広大な森の移動は日の傾いた今から始めるのは向いていない、明日以降なら良いかもしれない。
薬草採取は常時募集してるし期限指定でもないのでこれにするか「採取」スキルは取る予定だしな
「スキルは収得枠に制限とかありますか?」
キノコ森で知り合ったPTは全員が生産もしくは生活スキル持ちだったから「6枠限定」でない可能性が高かったがまずは確認しないとな
初心者のうち生産スキルで後になって戦闘特化にする仕様の可能性も残ってる
「冒険者ランクとは別に冒険者レベルと言うのが有りまして、まったくの初心者が所持出来るのは6つほどですが冒険者レベルが上がるごとに獲得できる枠が拡大されます、だいたい5レベル上がれば1つ拡大でEからDに上がるのがレベル10から13辺りですから2つ獲得して生産・加工や資材採掘・採取のスキル獲得してる人がオーソドックスですね。
近接戦闘の剣や斧をメインウェポンにしてサブウェポン遠距離戦闘の弓を取る人も居ますが、持ち物が雑多になったり持ち替えに手間取ったりで、複数武器スキルで実用的なのは弓メインでサブ
(やった、レベル120だとあと24も追加収得可能て事じゃね、これ)
小さくガッツポーズ取った俺を見て受付嬢は小さくため息ついたようだ
さきほどまで死にそうな顔していたのが嬉々としているのだから取らぬ狸のなんとやらと言う言葉を思い浮かべているのだろう、獣人が居るこの世界でそんな諺が有るかどうか不明だが。
「新規スキルの収得には協会の審査と認可が必要なので、今すぐ取れるとは限らないですよ。」
やんわりと釘刺しキターーーーーーーッ
「スキル習得申請は常時受け付けますが、審査は週2回の審査会のある日に応募者をまとめて行います、これは鑑定スキル持つ人がこの支部に滞在してるときに限られるからです。」
「スキルの新規収得はこの建物の二階で審査と合格した人に対しての講習会があり、だいたい二時間ほどを目安にしてください。」
「申請費用は銀貨1枚ですが、もし不合格でも返却はしません、これは諸経費としての必要額なので冷やかしは本人にとっても審査員にとっても損でしかありません。」
うむ、金とひまのある奴で資格をコレクションにする趣味の人がこの世界でもいるんだろうね、受付嬢の立場にちょっと同情してみる、俺にそんな趣味は無いから、うん、たぶん
審査のある日を聞いてみると明後日に開くそうなのでその時受けよう
明日はお手紙配達クエを受けることにしてその旨申し込むとホッとした表情浮かべた
なんやかんやで1時間以上説明につき合わせてしまったもんな、いつかお礼せねばと思い、食事のお誘いしたのだが「ランク上がって一人前になったらその時考えても良いですわ」との返事、まぁ駆け出しのペーペーじゃこんなもんだわな
せめてお名前でも、と食い下がると
「イーニャ・シュテッフェンです、頑張る人は素敵ですけどぉ~
しつこい人はぁ~…… 敵death《デス》。」
「はひ、ごめんなさい少し調子に乗ってました 」
というかどこかで聞いた姓なんですけど
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