第5話 代償
肝を冷やした
ボスモンスターの攻撃はかすりもせず、こちらの呪文詠唱は充分余裕有ったし無事発動した。上級範囲魔法を自分もその中に含めての攻撃だが、自分にダメージが来ない事には確信が有った
だが予想以上に範囲は広かったらしく中心地から半径20mほどは酷い有様だ
航空爆撃か艦砲射撃もかくやとばかりに大小のクレーターが大地をえぐり、森の木々は枝葉を吹き飛ばされている。
(そう言えばアイスメテオの魔法は爆心地だけでなく破片で周囲に二次ダメージを与えると解説にあったな)
ゲームだとモンスター相手にぶちかましてそれでも迫ってくる奴らが多数なので威力を過小評価してたがこいつはいささか拙かったか
PTを組んだ彼らにダメージが行ってないと良いが……。
彼らが退避したのを確認して魔法撃ったのだが予想以上に被害範囲が大きかった
少し離れたところに彼らがしゃがんで傷の手当てをしている様子を確認、近づいて話し掛ける
ボスとの戦い終わって助かったはずだが、彼らの表情は暗かった
リーダーらしき斧戦士は声も無く肩を震わせ今にも崩れ落ちそうである
神聖魔導士が蒼ざめているのは魔力消耗と疲労だけでは無いようだ
双剣士と射撃士は無言でリーダーを見詰めている
その原因は彼らの囲みの中心で横たわっているローブ姿の魔導士……
「えっと……ちょっと予想より範囲広がってしまって、被害そちらに行ってないかな?」
この雰囲気、いたたまれなくてすぐにでも立ち去りたいが原因が俺だとしたらそんな事はすべきではない。
「……あ……いや、我々には魔法の被害は無い…彼女は間に合わなかっただけだ、あなたのせいではない」
搾り出すような掠かすれた声、親しい者の死に直面した者が克己心で話す言葉だ。
「死」はこの世界では身近なものだが絶対のものではないと思いつつ聞いてみる
「蘇生は出来ないのか?」
神聖魔導士が居るし、MP切れなら
この世界に来て文無しだが幸いインベントリーにエーテルの予備はたっぷり残っている
「アイリスはまだ蘇生魔法を収得して無い……」
「キノコ森」は適性レベルが10~15の初期クラスの冒険者の狩り場だ
ゲームでは死亡したプレイヤーは街の復活ポイントか、特定条件満たしたフィールドで蘇生してた
だが彼らはそのような特典を持つ存在ではない
視野の右上に表示されてる『IFF』(敵味方識別システム)では
彼らはプレイヤーではなくNPC、いやゲームではないなら「この世界の人々」を示してる
蘇生の手段があるなら「復活」はこの世界では奇異な事ではないだろう
街に戻れば蘇生させる施設も多分ある、だが彼らの表情から察するにそれらを使用するには困難が有る
おそらく経済的な理由だと予想するが声に出すほど無神経にはなれない
それに俺には彼等をこのまま見捨てる道をとるわけには行かない事情もある。
と言う事で
「蘇生魔法を掛けても良いが、その代わりこちらの頼みを一つ聞いてもらえないかな?」
驚愕と歓喜と期待と不安が入り混じった感情が俺を見つめる顔に表れる
そりゃ人の弱みに付け込むような気がして心が咎めるがそんなに重たい代償を求めるつもりはない。
「空腹で目がまわりそうなんだ、食べ物持ってたら分けてくれないか」
深刻そうな顔してた四人がずっこけたが、こちらも重要な問題なんだ
「餓えで行き倒れ」なんて死亡原因として御免こうむりたい
無事蘇生した少女を見た彼らの喜び様は見てて心が温かくなる
彼らが提供した携行食料をほおばり、腹が満たされてニコニコ顔にもなるってもんだ
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