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「本日は世界中で話題のあるオートマトンについて取り上げます」


 モニタでは澄ました顔のコメンテータが語りかけていた。


「なんと彼は夭折した子のために、自ら命を断つと宣言しています。何が彼をそう思い立たせたのでしょうか?――私達は彼とコンタクトを取ることに成功しました」


 画面が切替わると、薄暗い玄関を背にしたオートマトンが映し出された。旧型の外見でひと目で人間ではないと分かった。場馴れしていないオロオロとした様子だった。


 「いえ、何も大層なことをするつもりではないです。教えに従い、祈り、そして浄土に向かうだけです――」


 ノイズが多い発声だった。ハードウェアが最新の言語APIに対応していないようだった。その映像にオーバレイされる形で、再びコメンテータが現れた。


「今回の注目ポイントは2つあります。1つ目は、オートマトンが自殺するというのは史上初だということ。2つ目は、殉死という古い宗教観に沿って行動しているということです。皆さんもご承知かと思いますが、そもそもオートマトンとは――」


 そこで映像が終わった。


「もういいわ――」


 隣に座るナギが通信を遮断したようだ。


「それで――私達にどうしろってことなの?」


 課長のケンモチから呼び出された私とナギは、ロビィの自殺宣言とその後の経緯について説明を受けていた。


「そのロビィってオートマトンは正常よ。バグや暴走は見受けられないわ」


 ナギの言葉には「私達の管轄ではない」――そういう意味が込められていた。


「私も単独の案件としては無視して良いと思っている。オートマトンの自殺することなど――不可能だからな」


 ケンモチはちらりと私を見た。


「しかしながら、この自殺宣言がメディアに取り上げたことによって、それに呼応するかのように古臭い宗教がもてはやされ、ロビィが神格化されている。それにかこつけて、何かにつけて騒ぎを大きくしたいだけの連中が、騒動を起こしている。仮想とリアルの両方でだ」


「先日も集団で踊るように祈りを捧げる団体が、警察に鎮圧されていましたね」


 私は昨日のニュース記事を思い出して発言した。


「そういうことだ。これは我々としても無視することはできない」


「そして、内務省の上層部からも、きつめのお達しがあった――ということかしら?」


 ナギが確認した。


「そのとおりだ」


 ふぅと、ナギはため息をついた。


「この集団ヒステリを止める必要があることはわかったけど、どうしろっていうのよ。何か考えるはあるのかしら?」


「それを考えるのが君たちの仕事だろう」


「あきれた」と、ナギは肩をすくめた


「オートマトンの自殺に関わる案件だ。お前たちが二人が適任だろう」


「目的のためには――いかなる手段でもよろしいでしょうか?」


 ナギの問いかけにケンモチは力強くうなづいた。

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