今からしゃべるの禁止!

ナノハナ

1

 いちねんせいになったーら、いっちねんせーいになったーら、友だち百人できるかなー


 ママといっしょに小学校にいく。うすいピンクのランドセル、春にぴったりの桜色。

 車ぞいの真っ白なガードレール、車のシューっという音と同学年の子供の声に混ざって、「きもちわる」というあの子の声。でも、あたりを見渡してもあの子はいない。

 幼稚園で、近くに来ただけで悪口をいわれたような気がした、あの子。顔も見たくないのに、なんで同じ小学校なの。


 校庭の桜が舞う。桜をおいかけると、目がクラクラしてきた。弱いね、って聞こえる。涙が浮かんで、桜がふわふわに見える。でもね、泣いても誰も気づかない。


 どうやったら友だちができるんだろう。知らない女の子がこわい顔で近づいてくる。

「友だちになる?」

「いいよ」

 勇気を出して返事をした。女の子がよかったとほほえむ。

「ゆきちゃんっていうんだよ、よろしくね」

 なにがゆきちゃんだ。自分の名前にちゃんなんかつけるな。心の中で思っても、声が出せない。

「よろしくねー」

 わたしの気持ちとおくちは、分離している。まるで、自分が自分じゃないみたいに。きもち悪い。

 わたしの心と口は、ごっつんこしているんだ。戦ってるんだ。でも、仲良くできないんだ。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る