零の魔導士と5人の姫
ヒラフクロウ
序章
この世界は魔法の世界。
誰もが産まれた時から魔力が備わり、だれでも魔法が使える世界。
人は、体内に宿る魔力を用いて、魔法を使用する。
なので、魔力の多い者はそれだけで優遇され、国の重要なポストについていった。
のちに、彼らは自身の事を貴族と呼び、それ以外は市民と区別し始めた。
そんな貴族たちの間で作られた役目の一つに、魔導士というものがある。
貴族たちは自身の権力誇示のため、魔力の向上、魔法の研鑽に余念がなかった。
その貴族たちを支え、サポートする者、それが魔導士である。
魔導士により、貴族の魔法はより高位へと導かれていく半面、市民との差はさらに広がり、より差別も拡大していった。
そんな状況を憂いた一人の魔導士がいた。
その魔導士は貴族から離れ、市民にもその知識や技術を伝えて歩いた。
時には人の命を救い、時には市民の生活をより豊かにしていった。
その姿に初めは懐疑的だった市民も心を打たれ、いつしか彼は尊敬の念を込めて大魔導士と呼ばれるようになった。
その状況を快く思わなかった貴族は、大魔導士の暗殺を試みる。
果たして暗殺は成功。しかし、それが大きな戦争の引き金になってしまった。
市民は大魔導士を殺されたことを恨み、貴族に仕えていた魔導士も、貴族に反発する者も出てきた。
そして、今から10年前に貴族と市民、魔導士による国土を全てを巻き込んだ戦争に発展してしまう 。
その戦争は多くの人の命を奪い、多くの家や建物を焼いた。そこに勝者などなかった。
戦争から1年後、市民の代表と貴族代表である国王との間で調停が結ばれ、ようやく戦争は終結を迎えた。
調停により、表向きな貴族と市民の間の差別はなくなった。
けれど、魔力の差という決定的な事実は変えることはできず、今でも小さな火種ははらんでいる。
また、魔導士は幅広い知識を持ち、卓越した技術で人と魔法を結ぶものとされ、正式な国家資格となった。 現在、この十年で正式な魔導士はたったの10人という狭き門だが。
そんな世界で、もし魔力を持たない少年が魔導士を目指すと聞いたら、どう思うだろうか。
これは、そんな少年が多くの出会いを経て、魔導士を目指す物語。
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