ストーリー12~14

ストーリー12:別離


登場人物

ブロント、スカーレット



 ブロント「この惑星に必要なのは重力制御でしょう。大気摩擦はエネルギー消費に影響します。」

スカーレット「ええ、その通り。……ですが、私達の技術力ではまだこの惑星の大気摩擦が邪魔で思うように外へ出られないんです。」

ブロント「最もです。私はあなたに会う前から、この重力制御回路をここに残すつもりでした。私の星の金属と共に。」

スカーレット「あなたの星の技術力は、こことは遥かな差が……。私に託されてもそれが叶うかどうかは保証しかねますわ。」


 スカーレットの研究室、テーブルにブロントが用意した重力制御回路基板と重金属片の画。


 ブロント「まずは重力をコントロールすることです。惑星の重力に影響を受けずに外に出る。この惑星は大気摩擦が厳しい。まずここからです。いかなる形をしていても、重力制御が出来れば摩擦の負担を無にして外に出られます。これは兵器としてではなく、輸送の一貫として開発をお願いしたい。」

スカーレット「分かりました。約束します。あなたの星の様なステルスは、その後考えます。」

ブロント「ええ、その方向で進めてください。私に出来るのはここまで。あとはここ地球の生命体のある限り、進化を期待しています。」


 必要なのはこれだけでは無い筈だが、スカーレットはそれ以上何も追求しなかった。ブロントとて同様で、地球レベルを考慮した。


 ブロントは数日間滞在してしまった。


 夜を迎えた画へ。2人はベッドに。


 ブロント「かつて、私の血縁のノアーナ人と、ここ地球人との間に子孫が出来ました。その子孫は特殊な能力を身に付け、ノアーナやこの惑星に多大な影響を及ぼす人物となってしまった。私達はそういう子孫は残すべきではないのです。……スカーレット、あなたの事はこのまま忘れずに帰りたい。」

スカーレット「ブロント、私は、私の事はどうでもいい。あなたと共に有ればそれで……。子供は私が責任持って育てましょう、約束します。」

ブロント「スカーレット、私達は遺伝子が違いすぎる。仮に私達の子孫が出来ても、特殊能力を持つ子供に何が出来よう。」

スカーレット「いいえ、私は未来を考える子孫に必ず育てあげます。誓ってあなたの星に迷惑になる子供には育てません。」

ブロント「スカーレット……そこまで考えて……。それで良いのでしょうか……。」

スカーレット「ええ、もちろんです。あなたと出会ったのは、この上もない縁ですわ。」

ブロント「スカーレット……。」


……熱い抱擁ほうようがベッドの中で広がった……。


 翌、早朝……。


 ブロント「スカーレット、私は帰らねばならない。あなたに託す技術は決して兵器として発展しない様望む。……それから、これを……。子供を授かったらその子に渡して欲しい。平和の象徴たる紋章だ。私の願いでもある。」

スカーレット「分かりました。代々受け継がせます。ここ地球もあなたの星の様な優れた技術力を養える様努めますわ。」


 紋章のペンダントをスカーレットの手に渡すブロント。

涙を浮かべ、ペンダントを握りしめるスカーレット。


 ブロントの宇宙船、ステルスを一瞬解放し再びステルスを纏い消える。それにハッと気付く窓辺のスカーレット。手にはペンダントが握られていた。


 別カット、スカーレットの後ろ姿。ゆっくり引き。



ストーリー13:データの真相


登場人物

ラムル、バンズ、ポートル、ピコ、ジャン、フライ



 バンズのドック、3人がピクをテーブルに囲んで座っている。

それぞれの側にAnnも見える。今日は普段あまり連れていないポートルのAnn、フライも来ている。


 バンズ「ようやく管理部データの抽出が終わったよ。」

ポートル「今日はそれの集まりね。で、何か収穫有った?」

バンズ「前に話した通り、ロックを掛けたのは最近で、ブロント長官だった。……それよりも、別の疑問点が浮上。」


 ラムルは不安げな表情……。

ラムル「別の疑問点って、まさかお父さんが何か……。」

バンズ「ラムルのお父さんって言うより、あなたの先祖に関して少々。」

ポートル「先祖?って、どこまで遡る話よ。」

バンズ「ピコ、データ投影して。」

ピコ「了解バン。」


 ピコから管理部データが投影される画。


 バンズ「あぁそれから、ジャンとフライにデータ転送。ジャンとフライは転送受け取ったらメモリーお願いね。」


 遠目からの全員。ピコのデータ転送中の画面から、ジャン、フライのメモリー完了の画まで。


 バンズ「ノアーナ星RJ計画管理部の惑星分類データNo.B4571、私達の9代程前のカーレイ家ご先祖様がさ、その時代、例の水の惑星へRJ計画を実行した様なんだよ。」

ラムル「そんなに昔に⁉︎……しかもその事を父は知っていた訳ね……。そして自分の代になって再び訪れたんだ。」驚きの表情のラムル。


 ポートル「一度RJを完了させたら二度と訪れない規則じゃなかったの?」

バンズ「うん、そこなんだよねー。今日の集まりの話題。」


 ラムルの表情を移すかの様な画をアイキャッチ代わりに1カット


 バンズ「カーレイ家が代々、RJの経過を気に留めていた様子なのはラムルからも聞いた。一般には検索すら出来ないはずが、今のブロント長官の代までに多数の検索履歴が残っている訳で……。どうやら気に留めていた位では済まないみたい。」

ポートル「魅力的な惑星ほしなのは確かだけど、末代まで気に留める根拠はなんだったの?」

バンズ「それは不明。」

ラムル「カーレイ家が代々気に留めていて、父の代でRJ計画を実行した。私はそこまで聞いててあとは何も知らされてなかったわ……。父が2度目のRJだったのも今初めて知った。」

バンズ「アタイが思うに、ブロント長官はラムルに触れてほしくない為にデータをロックしていた。何か隠しておきたい何かが有るんだと感じたよ。」

ポートル「リターナ壊滅以来、ノアーナは他の惑星との交流は避けてきた……。それ、ノアーナの歴史とも関係しそうだけど。」

ラムル「実は水の惑星ほしとの交流が有ったとか?」

バンズ「いや、それも調べた。でも今まで交流している事実は無し。」

ラムル「カーレイ家が関係している……という事……⁉︎。」

バンズ「アタイはそう思う。」

ポートル「ノアーナが何事も無くここまで発展してきた。特別悪い問題も無かったみたいだけど……。」


 3人の暫くの沈黙……。


 ラムルのup、決意したかの表情で、

ラムル「私、父に話してみる。父は絶対何か隠してる。……ポートル、バンズ、ここまでの話は、私が全て調査した結果とさせて。カーレイ家の血を受けた者としても黙ってはいられない。」

バンズ「分かった。アタイはあなたを守るよ、ラムル。」

ポートル「私も同じ。今までの3人の友情はこの時の為に有り!」

ラムル「ありがとう。」

バンズ「長官と接触する時は音声モニターさせてね。ピコ、ラムルにモニターマイクを渡して。」

ピコ「かしこまりましたバン。あなた達の会話のメモリーもしますが、ここはジャンに中継スポットをお願いし、万全を記しましょう。」

ラムル「ピコ、あなたは本当にいい子ね。ありがとう。」


 ピコにハグするラムル。


 割って入るポートル、

ポートル「さぁさぁ、皆さん。次は作戦会議よー。」



ストーリー14:ラムルの決心


登場人物

ラムル、バンズ、ポートル、ピク、ピコ、フライ



 新しい飲み物を用意しているピク、自分をテーブルにせず、別のテーブルを用意する画。

ピクは頭のテーブルでは小さいと悟ったか、大きめのテーブルに、飲み物とデザートが加えられた。これはピクの気持ちである。


 バンズ「ありがとう、ピク。気が効くわね。」

ピク「ごゆっくり、バン。」


 ピクは隅に避けて待機モードへ。


 ポートル「ラムル。長官と話す時、必ずジャンを側に連れてきてね。念の為ジャンが音声を中継して、ピコとフライがメモリーしとくから。」

ラムル「分かった。」

バンズ「話の途中、長官はどんな行動を取ると思う?」

ラムル「水の惑星に関してのロックの事があるから、私の行動を何かしら制限すると思うわ。父の意思による行動はとても厳しいから。さすがに軟禁されたりは無いと思うけどね。」

ポートル「隠された事実が相応の問題だったなら、どうか分からない。色々なパターンで作戦立てなきゃ。」

バンズ「ポートルの言う通り。ラムルの行動制限、……さてそれは何かな?。」

ラムル「まず間違いなくカーラントをロックして飛べなくして宇宙そらへ出られなくするでしょうね。それから、家を出るなり行動履歴を管理するかも。最悪は会話まで止められるかも……。」

バンズ「ひぇ、厳しいねーお宅……。当然ジャンも対象になってくるのかなぁ……。」

ラムル「うん……でも今は、両親から見たジャンは私のペット位にしか見ていない様だから、ジャンを逃げ道にするのが得策かも。」


 バンズ、いつの間にかジャンを側に連れてきている


 バンズ「ジャン?出来る?作戦通りにしっかりラムルを助けるんだよー。」

ジャン「お任せください。抜かりなく行動します。」

バンズ「良い子ねージャン。」


 スリスリするバンズ。


 呆れ顔のラムル、ポートル。


 ポートル「ジャンを連れて、長官と話を進める。ラムルへの対応が心配ね。データを閲覧不可にしなければならなかった理由は? 水の惑星ほしはカーレイ家にとって何なのか? 長官が 2度目のRJ実行に至った経緯は? ……って、こんなとこかしら。」

ラムル「いきなりそこまでを聞くのは……ちょっと急ぎ過ぎじゃないかしら?……水の惑星ほしの所在は私達で掌握出来てるんだし、なるべく穏便に話したいわ。」

ポートル「うーん、となると……閲覧不可となっている現状から、独自に調べてみた。その結果、こうでしたが。って感じかな。」

ラムル「うん、そんな感じで話すのがいい。私も父の出方によってはブチギレそうだから。」

バンズ「2度のRJ計画について、何故そうしたのかって所から話を広げる?」

ラムル「話した結果はどうなるか分からない。でも父が水の惑星ほしについて何か知っている。若しくはカーレイ家が代々何かを隠してきた。……その事を父が私に話すか拒否するかよ。」

バンズ「ラムルの言う通りね。私達は少なからず、水の惑星ほしへのRJの実行、しかも2度行われた事実を知ったのだから、後には引けない。」

ポートル「後には引けない……か。その通りね。」

ラムル「父には、水の惑星ほしを調査出来た事を伝える。昔、RJ計画を実行したにも拘らず、父が2度目のRJを決行した。それは何故だったのか?を聞いてみる。って所で良い2人とも?」


 2人、無言で頷く。Fade-out。

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