9 異世界転生したら学校に通うことになったんだが

第395話 丸出しお守りとお城のご飯進化様





「……どうしたもんかこの写真」





 火の国デゼルケーノからの帰り道、俺達は王都ペルセフォスで魔晶列車を一旦降り、サーズ姫様に相談に乗ってもらうことに。


 内容は途中知り合った女性クロをどうしたらいいか、というもの。


 クロの本名はクロックリム=セレスティアといい、その正体は魔法の国セレスティアの第二王女様。


 はっきり言って街の人である俺には手に余る御身分。


 セレスティアの国宝であるオウセントマリアリブラなんて貴重な本も持っているし、どうしたものか。




 サーズ姫様に相談した結果、セレスティア王国の第二王女様は勉学の為に諸国を巡り、現在ペルセフォスにいて、かの有名な大魔法使いラビィコールの下で魔法を学んでいる、ということにするそうだ。


 セレスティアは魔法の国。


 その魔法の国の王女様がラビコに魔法を習うことは国の為を想って行動している、と言えるしな。


 サーズ姫様が個人的に魔法の国の女王であるサンディールン様に手紙を送り、そのことを伝えるそう。二人は仲が良く、国家間の変ないざこざにはならないとは思う。


 まぁクロ本人は違う目的で動いているっぽいが、それは俺がどうこう聞ける話ではないだろう。


 

 そんなでクロが俺のパーティーに加入。



 トラブルの予感がバリバリするが、パーティーにお綺麗な女性が入ってきて文句なんか微塵もありはしない。


 俺、童貞だし。



 そんなことより今俺には大きな悩みがあるんだ。





「モロ出しじゃねーか、これ」


 ペルセフォス王国聖なる祭典の翌日早朝、お借りしているお城二階の来客用の部屋を出てすぐにある共用の男子トイレで俺は大きな溜息を吐く。



 手にしている写真は昨日夜、悪乗りした女性陣に羽交い締めにされジャージのズボンを降ろされ、俺の下半身丸出しを撮られた物。


 女性陣全員笑顔で俺だけ涙目。


 ラビコとハイラとクロが超笑顔でピースサイン。ロゼリィとサーズ姫様は大人し目に微笑。なんかみんなの性格出てるなぁ。



「って何を自分の丸出し写真見て感慨にふけっているんだ、俺は」


 撮られた写真は全部で七枚。


 この異世界のカメラに連写機能なんて当然無く、写真を撮るには一枚一枚印紙をセットし、撮り終わったら手動で紙を入れ替えないとならない。


 だが撮り手だったバニー娘アプティが残像が見える速度で手を動かし、クロの知り合いのおじいさんがサービスで入れてくれた初期セットの印紙を瞬時に入れ替え連写連写。一枚ぐらいなら、と諦めていた俺が唖然とする事態に。


 アプティ曰く「……人数分です……」だと。


 すぐさま回収し、自分の丸出し写真を俺が肌身離さず持ち歩く羽目に。


 これは一体何のお守りなんだ、と。


 俺の状態はあれだが周りの女性陣がお美しいし、とても満足気で良い笑顔なので処分するのはもったいない感じ。


 ラビコが本気で着飾ったドレス姿なのがすごく貴重。ロゼリィとクロもレンタルではあるがドレス姿だし、とても華やか。



 

「社長~おっはよ~。あ~もしかして昨日の写真見ながら朝から頑張ってたってやつ~? あっはは~」


 男子トイレを出ると、廊下で待っていたと思われる水着にロングコートを羽織った魔女ラビコがニヤニヤ右腕に絡んでくる。


 自分の丸出し写真を見て何を頑張るんだよ。



「ね~社長~。昨日の写真さ~私にだけ一枚分けてよ~ね~ね~」


 甘えた声でラビコがねだってくるが、誰がやるか。


「馬鹿言うな、この写真は誰にもやらん。こんな写真がもし出回ったら俺終わりだろ」


「ちぇ~。我が夫の裸の写真は妻であるこの私に持つ権利があると思うんだけどな~」


 ラビコが不満そうに言うが、誰が夫で誰が妻だ。


 俺は十六歳の童貞少年だっての。





 カフェジゼリィ=アゼリィは午前十時からなので、お城の巨大な食堂で朝食をいただくことに。


 食堂にラビコが登場した途端、ご飯を食べに来ていた騎士さん達の視線が一気にこちらに集まった。


 さすがにラビコは王都での注目度がすごいな。


 しかもデゼルケーノでの千年幻撃破の情報がペルセフォスにも届いているそうで、ラビコに向けられる憧れの視線が今まで以上にすごい。


 千年幻戦は俺とベスにラビコにクロとの共闘で、止めは愛犬ベスだったのだが、強すぎる力だとラビコが判断し、あの大魔法使いラビコ様が仲間と共に倒したというふうになっている。



「やぁやぁ皆さん、朝ご飯をご一緒させてもらいますよ~」


 ラビコが手を振りその視線に応えると、騎士達から歓声が上がる。


 なんか昔は愛想もなく、いつもムスっとしていたってのが信じられない。今のラビコは大抵笑顔で楽しそうにしているんだがなぁ。



 以前ラビコが所属していたのはルナリアの勇者率いるパーティー。


 そこで毎日のように行われる蒸気モンスターとの激しい戦いの連続で、そういう心の余裕はなかったということだろうか。


 その後パーティーが解散となり、命のやり取りの日々から開放され心の余裕が出来た状態なんだろうか。


 なんにせよ、ラビコにはこの笑顔が似合う。



 頭が良く、考え方と行動が大人で格好いいし、魔法の腕前は世界屈指レベル。


 はっきり言って尊敬しているし、異世界での俺の師匠だと思っている。



「ん~? おやおや~? な~んかラビコさんに熱い視線を送る少年がいるけど~、ペロッむむむ~これは童貞の味だ! なんつって~あっはは~」


 ラビコにそれなりのリスペクト視線を送っていたら、右腕に絡みつき頬を舐められた。


 それを見ていた男騎士達がザワザワと騒ぎ出す。


 や、やめろよ……俺を一瞬にしてペルセフォス男児の敵に仕立て上げるな。


 そして童貞なのは確かだが、味には出ていないだろ。ああ、俺の見た目と行動が童貞っぽいって言うんなら、まぁ……。



 本日の朝メニューは焼き立てパンに根菜スープ。


 メイン皿は蒸し鶏の粗みじん香味野菜のタルタルソースかけ。


 うむ、うまいぞ。


 以前食べたときとは違い、メニューがジゼリィ=アゼリィっぽくなっている。


 そういえばペルセフォス聖なる祭典のお食事会で、現国王フォウティア様がお城のシェフがジゼリィ=アゼリィに何度も通って勉強しているとか言っていたか。



「な~んかお城のご飯のレベルが上がっているね~。これはジゼリィ=アゼリィの影響かね~あっはは~」


 ラビコも気が付いたようで、根菜スープを指す。


 この根菜を多めに使い、食感を残すやり方はシュレドの得意技。マジでお城のシェフのレベルが上がっているぞ。


「確かに……ジゼリィ=アゼリィの味に近い雰囲気を感じます」


 ジゼリィ=アゼリィのオーナー夫妻の娘であるロゼリィも変化に気が付いた。正直、以前のお城のご飯は、まぁ……うん、ぐらいのレベルだった。それがこの味の変化、ここのシェフ、急速に進化しているぞ。


「……おいしいです」


 おっと、ジゼリィ=アゼリィ以外のあまり美味しくないご飯は、紅茶のついでにつまむ程度しか食べないバニー娘アプティもその感想ですか。


 足元のベスも犬用メニューにがっついているし、これは負けてらんないなぁ、カフェジゼリィ=アゼリィも。




「なぁキング。実はこないだの千年幻との戦いでよ、冒険者カードがパッキリ割れちまったンだ。時間があるなら冒険者センターに行って再発行してぇンだけど」



 もりもりご飯を食っていたら、クロが俺のジャージの裾を引っ張り上目遣い。


 ああ、いいなその角度。よくゲーム画面で見るやつだぞ。


 胸元が大きく開いた服なら尚良しなんだが、クロは露出少なめの服なのが残念。


 クロは頭にゴーグルを付け、猫耳フードがついたロングコートを羽織っている。中はなんというかパンクっぽい服装で、素肌はあまり見えない。ラビコやアプティのように歩くたびに揺れるお胸様が間近で見放題ではなく、しっかりと着込んでいる。


 唯一見えるのは短パン下の太もも。


 これはエロい。


 他はがっちり隠しているのに、ここだけ無防備なのがたまらなくエロい。


 まさかそれを計算した「見せ太もも」なのか……! だとしたら、じーっと凝視してあげるのが彼女に対して俺が出来る唯一の報いなのでは。


 おっと、あんまエロい視線で見るとロゼリィという名の鬼がフィーバーしてしまうので、このへんにしておこう。




 そういや冒険者センターって各街にあるんだよな。当然この王都ペルセフォスにもあるってわけか。



 デゼルケーノからソルートンの帰り道に王都に寄ったんだが、別に帰るのに一分一秒を競っているわけじゃないし、寄り道ぐらいはいいだろう。



 王都の冒険者センターってのにも興味があるし、ちょっと行ってみようか。











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