第390話 パーティーバランスと王都の聖地はいずこ様
「ふーむ……」
久しぶりに訪れた王都のカフェジゼリィ=アゼリィにてランチメニューを頂く。
デザートのシロップ漬け輪切りオレンジが入ったチョコレートケーキも食べ終え、紅茶を優雅に楽しんでいる女性陣をぼーっと眺める。
まぁ皆さん、俺なんかが側にいていいのか不安になるほどの美人さん揃い。
そして皆様実にスタイルがいい……。
「あ~社長が全員の胸の大きさを見比べているよ~。きっと頭の中では私達、すんごいプレイさせられているんだろうな~あっはは~」
水着魔女ラビコが俺のエロい視線に気付き声を上げる。
ふふ……甘いなラビコ。俺が見ていたのは皆様のお胸様とお尻様さ! ああ、もちろんお足様も見ていたさ。お腰様のラインも最高だよな!
もしここにいる全員と同時にエッローんなことしたらと妄想していたけど、んなこと口が裂けても言えねぇ。
「……ふっ、ちげーって。なんだか知らんけどクロがメンバーに入ったみたいだからさ、パーティーバランスってやつを考えていたのさ」
俺は片肘をつき、見えないウイスキーでも傾けているようなポーズを決め、なんでもエロで片付けようとするラビコを鼻で笑う。
ああ、もちろんその場しのぎの思い付きさ。
「んん~? 何その余裕なポーズ。今の目は絶対ここにいる全員とエロいことをする妄想してただろ~?」
ぶっふ……なんでこの魔女はピンポイントで俺の妄想を寸分違わず当ててくるんだよ。
俺喋ってた?
間違っても机の下から覗き込んで俺のズボンを確認しないでくれよ。
速攻バレっから。
「あ~ホラ見ろ~超反応してんじゃんか~」
ラビコが瞬時に机の下に潜り、俺の股の間に顔を近付けてくる。
や、やめろ……! そこに顔近付けんなよ、余計反応するだろうが!
うわぁこれ、エロい本でよくある視点だ……なるほど、こんな感じなのね。
「ニッハハ、すっげぇ仲良いなぁキングとラビ姉。んでぇ、なんだよそのパーティーバランスってやつは」
クロが全て食べ終わり椅子にあぐらをかいて、興味あり気にこちらを見てくる。助かるぜ……全力でそっちに話を持っていこう。
「あ、いやいつも一緒にいるのって俺、愛犬ベスにラビコ、ロゼリィにアプティになるんだよな」
話が違う方に行き、ラビコがつまんなそうに机の下から出てきて椅子に座っている俺の背中に寄りかかってくる。
「ソルートンだけで考えると、街の人に魔法使い、宿の娘に格闘家って分類になるんだろうか。そこにたまに商売人アンリーナ、そして今回魔法使いクロ。冷静に見ると不思議なメンバーで成り立っているなぁ、と思って。まぁ戦闘で危ないときは、最終的にベスが全部追い払ってくれそうだけど」
ラビコは世界に名を馳せる大魔法使いだし、アプティは正体蒸気モンスターでサーズ姫様を余裕で押さえ込むほどの実力者。滅多なことじゃ危険な状況にはならんと思うが。
つい数日前、デゼルケーノで千年幻ヴェルファントムとか言う上位蒸気モンスターに出会って危険な状況になったばかりだけど。でも滅多に無いだろ、あんなあっぶねーやつ。
「あっはは~別に今の私達は蒸気モンスターを討ち滅ぼそうって集まったパーティーじゃないし~社長の『世界の全てを見たい』っていう願いに賛同した集まりだし~、いいんじゃないの~?」
ラビコがケラケラ笑い、俺の背後から抱きついてくる。肩が至福の感触。
「まぁそうなんだけど。なんつーか世界を股にかける冒険者のパーティーってのには必ずいる、正統派の剣士様ってのがいないなぁとふと思ってな」
普通はその剣士的な役目が俺で、勇者になるはずなんだがな。
この異世界に来るときによくある女神様的な人には会った記憶はないが、もし今会えるのなら俺の想いの一つでも言ってやりたい。
──本当にこの素晴らしいハーレムで、ちょいエロイベントが結構頻繁に起こるメンバーに組んでくれてありがとう、と。
マジで。
「はいっ! それ私ですー! 私、剣に槍が使えます! さらに料理洗濯お掃除も全部得意です! 先生の求める理想の全てを兼ね備えています!」
ハイラが目を輝かせ、ずばっと元気に右手を挙げる。
そういやハイラは飛車輪乗りではあるが、基本の剣に槍が使えるんだっけか。
ペルセフォス王国の白を基調とした鎧を着て、スラっとした剣を持つ姿は確かに剣士だな。
そういやハイラって一人暮らしなのかね。騎士の寮とかあるのだろうか。
「ほう、君は剣士を所望か。ではハイラインの上位クラスである私などどうだろう。クロックリム殿と合わせ、国境という線を越え、二人の王族を従えるパーティーというものを組めるのは君だけだと思うが。ああ、君との子供を剣士に育て上げるというのもいいな。実に優秀な戦力になってくれそうだ」
サーズ姫様が自身とクロを指し、なにやらアピールをしてくる。
「サーズ様がいいなら私もいいですよね、先生! 飛車輪で世界を見て回って、気付いたら家族が増えていて……」
「あ~うるさいぞペルセフォス組~社長の夜のパーティーメンバーはもう満員なんだっての~」
サーズ姫様に続き、ハイラも身を乗り出して妄想を語るが、ラビコがイラっとしながらそれを制する。
確か俺はパーティーバランスの話をしていたのだが、ラビコの言う夜のパーティーメンバーって単語はなんなんだろうか。
まぁラビコも言ったが、このパーティーは戦闘目的じゃあないからな。
俺の世界の全てが見たいっていうワガママに付き合ってもらっているわけだし、バランスとか今はいいか。
「あ、そういえばデゼルケーノでカメラ買ったんだ。せっかくだしサーズ姫様とハイラとシュレドにナルアージュさんとの写真撮っておきたいな」
ふとデゼルケーノに何しに行ったか思い出し、俺はロゼリィにカメラを使っていいかお伺いを立てる。
「うおおおカメラ買ったんすか旦那! さすがっす! え、デゼルケーノに行った……あ、危なくなかったんすか?」
ちょっと手を空けてもらい、シュレドとナルアージュさんに三階の王族専用部屋に来てもらう。
「で、デゼルケーノですか。移動だけで疲れがすごそうです……」
やはり二人の感想も同じか。デゼルケーノに行くってのは結構覚悟いるもんなぁ。
スタッフの一人に頼み、カメラで写真を撮ってもらう。
「あ、こらペルセフォス組~! 社長にくっつくな!」
「ん、いいではないか。これは動かぬ証拠になるんだ。いかに私と彼の心が通じ合っているか、そして気軽に触れ合える仲なのだと」
「なるほど……! さすがサーズ様ですー! さ、先生もっとぐっと体を寄せて……」
サーズ姫様とハイラにも了承を得たので、さっと撮りたかったのだが、なんだか位置取りで大揉め。
アプティは興味なしで、無表情に俺の後ろに立つ。ロゼリィはサーズ姫様に遠慮し俺の横を譲ったが、ラビコが二人を俺から剥がそうと激怒。
サーズ姫様が俺の右腕に、ハイラが左腕にがっつり抱きついている状況。
うむ、俺は何の文句もない。腕が至福なのさ。
シュレドとナルアージュさんは苦笑い。
クロはサーズ姫様が真面目でちょっと怖い人だと思っていたらしく、目の前で行われる行動のギャップがツボに入り、ずっと笑っている。
ってこれ以上はお店に迷惑か。
「ラビコ、ほら来い」
サーズ姫様とハイラを剥がそうとしていたラビコの頭を撫で前に立たせ、肩越しに俺の顔が出るようにしスタッフさんに合図。
「社長はペルセフォス組に甘いんだって~! こいつらマジで良からぬこと企んでいるのに~!」
「では撮りますよー……はい!」
昼食後、サーズ姫様とハイラとラビコがいると噂が広まり、お店が大混雑。
さすがにペルセフォス組のお二人は午後のお仕事があるのでお城に戻ったが、俺達はお店を手伝うことに。
「ラビコ……離れてくんねーかな……」
「いや~」
ロゼリィに愛犬ベスを預けカウンター接客を、アプティに紅茶配膳をしてもらう。
クロはあまり顔が出るのはまずそうなので、三階の王族専用部屋で自前の魔晶銃の整備。
ラビコにはローズ=ハイドランジェ商品のカウンターの後ろに立っていてくれとお願いしたのだが、厨房で皿洗いをする俺の背中に張り付いて離れない。
皿洗いの邪魔なんですが……。
「い、いいんすか旦那……け、ケガだけはしないで欲しいっす!」
「大丈夫だってシュレド。ソルートンでは最初アルバイトでよくやってたし」
申し訳なさそうにシュレドが見てくるが、俺他に何も出来ないんだって。
皿洗いのついでに食べ残しなどのチェックもしたかったしな。
さすがにあれからシュレドがかなり微調整を繰り返したらしく、多過ぎず少な過ぎず丁度いい量を出しているようだ。食べ残しが本当に少ない。
「ってラビコ、マジで動きにくいから……」
「いや~。あの変態姫は油断すると絶対何か仕掛けてくるから離れたくない~」
本当にラビコが俺の背中にビッタリくっついて離れやしねぇ。
いや、お胸様が背中に当たるので不満はないのだが、俺はペルセフォスでどうしてもやらなければならいことがあるのでシュレドから情報が得たかったのだが……。
そう、俺は現在王都に住んでいる男であるシュレドに、聖地の場所を聞かなければならないんだ。
ソルートンにあって、人口が数十倍はある王都に無いわけがないあの聖地。
シュレドも独身だし、そういう情報は得ているだろう。それをぜひとも男同士肩組み合って聞きたかったのだが、ラビコがなんだか離れてくれない。
お手伝いが終わったら温泉施設に行くのだが、そのときはさすがに男湯女湯別れるし、早めに上がってお店戻ってシュレドに聞くか。
待てよ、そういやあいつがいたな。
ペルセフォスで一番とか言う隠密、アーリーガル=パフォーマ。俺が背中に付けているマントを、王都からソルートンに持ってきてくれた男。
あいつが得意なのは姿を消し気配を消し、暗闇に紛れ動き普段得られない情報を得る仕事。
そう、エロ本屋では気配を消し、暗闇に紛れひっそり買うのが礼儀。
まさにエロ本屋にはうってつけの男。
きっとアイツしかしらないエローい情報を持っているに違いない。
一見、王子風のイケメンで真面目君に見えるが、ああいうやつこそ心底エロいと相場が決まっている。
よし、女性陣がお風呂に入っているあいだにお城へ行き、隠密エロマスター王子にとっておきのエロの聖地の情報を聞こう。
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