第327話 その後の王都カフェ報告とアンリーナの咆哮様
アンリーナが各地で仕事を終わらせ、ソルートンに帰ってきた。
お疲れ様と、宿自慢のバラの湯に入ってもらうが、ラビコ、ロゼリィも一緒に入るとのことなので、俺はバニー娘アプティに重要なミッションをお願いしたのだが……。
お風呂でじっくり彼女達の体を見てもらい、あとで絵に描いてくれないかと画伯に頼むも、出来上がったのは数字の3を横にした絵。
どうやらアプティに絵画センスはないようだ。
「はぁ……」
俺は深い、深い溜息を吐き一階食堂へと戻る。
「おや~どったの社長~。アプティ連れて戻ってきたと思ったら溜息なんてついちゃってさ~」
席に座ると、水着魔女ラビコが身を寄せてニヤニヤと絡んでくる。
「な、なんでもない。財布を取りに行っていただけだよ」
軽くウソをつき、正社員五人娘の一人、アランスに紅茶ポットを注文。
「お待たせ隊長……どぞ」
うむ、相変わらずここの紅茶は美味い。
アンリーナももうご飯は食べ終え、ゆっくりと紅茶をたしなんでいた。
「まずは改めてお礼だな。アンリーナ、王都でのカフェに協力してくれて本当にありがとう。君がいなければあそこまで上手く行かなかった、本当にそう思う」
俺はアンリーナに向かって深々と頭を下げる。
「頭を上げて下さい師匠。王都でのカフェにはこちらも商売として便乗させていただきましたので、お礼を言うのはこちらですわ。本当にジゼリィ=アゼリィの集客力には驚くばかりです」
アンリーナも俺に向かって頭を下げてくる。
「まぁまぁ~そういう形式張ったのはなしなし~。商売上だけの付き合いじゃないし、お互いを信頼しているのはもう分かっているんだからさ~あっはは~」
ラビコが俺とアンリーナの肩を掴み、ゲラゲラと笑う。
「分かりました、ラビコ様。皆様とはもうお友達のように思っていますし、私と師匠はすでにただならぬ関係でした」
アンリーナがニッコリ笑うが、俺との関係がフィクション全開なんだが。
「あとでオーナーであられるローエン様にも報告書をお届けいたしますが、こちらに来る前に一度王都に寄りまして、その後の状況を聞いてまいりましたわ」
アンリーナが大きなカバンから分厚い封筒を取り出す。
さらに別の封筒を取り出し、中から紙と写真を見せてくれた。
おや、こっちに来る前に王都に寄ったのか。
「こちらが一週間の売上推移、こちらがお客様の来店人数に平均単価、人気のメニューなどが書いてあります」
おお、なにやらグラフが書かれた紙だが、売り上げがマジですごいな。
あれから下がること無く、平均して売れていたのか。
お客さんの入りも減少せずに、日々増えている様子。
シュレドとナルアージュさんがうまくやっているようだなぁ。
「うっわ~すっごいね、コレ~。ってことは、あれから毎日あの混雑が続いているってことか~こりゃ大変だ~あっはは~」
そう言われたらそうだな……あの混雑がずっとか、それは相当大変なことになっていそう。大丈夫なんだろうか……。
「スタッフの数を増やし、上手く対応していましたわ。シュレドさんが毎日楽しそうにお仕事をされているようです。王都にお店を持てたことが、本当に嬉しいようです」
そうか、シュレドは頑張っているのか。
夢だったらしいしなぁ、大きなお店持つの。
王都なんか最高の場所だろうな。
「こちらがお写真になりますわ。営業中に撮ってまいりました」
アンリーナが何枚かの写真を並べてくる。ほう、どれどれ。
写真にはお店の前で大行列を作るお客さんの風景と、混雑した店内。
さらには調理中の厨房に人気メニューが写っているな。
「うわぁ、すごい……店員さんの立場から見たら、本当に忙しそうです……」
ロゼリィが写真を覗き込み、冷や汗をかいている。
俺達もこの混雑は体験したが、本当にキツかったからなぁ。
「あれ、写真にサーズ姫様とハイラが写っているぞ」
多くある写真の一枚に、ド緊張で顔が強張ったシュレドとニッコリ笑顔のナルアージュさん、その横には制服姿のサーズ姫様にハイラが写っている。
「はい。サーズ様とハイラ様は、あれからもほぼ毎日ご来店されているようです。そのせいもあってか、お店はかなりの混雑となっているようですわ」
俺の質問にアンリーナが答えてくれる。
そうか、サーズ姫様とハイラが見れるなら行ってみたい、というお客さんがたくさん来てくれているのか。
知名度アタックは本当に効果があるんだなぁ。
「王都のカフェは順調……いえ、はっきり言いまして想像以上の売り上げですわ。そして今度は本店であるソルートンのジゼリィ=アゼリィの増築、ですわね」
アンリーナが書類を片付け、新たな書類を出してくる。
「あ、そうだアンリーナ。俺、その増築した客室を買い取って自分の家にするつもりなんだ」
王都では相談ついでに言ったが、正式にアンリーナに言っていなかったか。
俺が気軽に伝えたら、アンリーナが驚きの顔になる。
「し、師匠……! ついに私との新婚生活がスタートするのですね!? ヌッフファ……なるほど……こんな形のプロポーズもある、と! なんというサプライズ!」
アンリーナがいきなり立ち上がり、両手を空に掲げ、吠える。
……俺、何か勘違いさせるような変なこと言った……か?
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