第232話 俺VSバスタオル装備の女性陣様


「うわぁとても綺麗ですっ。植物が飾ってあったり、柱の彫刻もオシャレです」



 ペルセフォスのお城の入り口から、細い道をしばらく歩くとあるラビィコール研究所。


 そこは水着魔女ラビコの専用研究所で、そこに至る道から外観、内部の管理がしっかり行き届いている。

 

 サーズ姫様がしっかり管理するように指示を出しているそうで、騎士達が交代で管理し、ハイラも道の花壇の整備や、中にある大浴場の清掃もやったことがあるそう。


 広い吹き抜けの大部屋の向こうに、これまた大きな温泉施設が作られていて、天然温泉がどこからか引かれているんだと。



 中に入ると、まぁ豪華な作りの施設。床に敷かれている石すら高級そうだ。入った途端ロゼリィが思わず声を漏らす。




 結局俺は抵抗をやめ、風呂に入ることに。


 実際旅の疲れを癒やしたいのと、足を伸ばせる大浴場ってのは心惹かれる。ああ、理由はそれだけだ。


 他意はない。本当にない。本当だ。



 女性陣にはバスタオルを巻いて入ってもらうことに同意してもらった。


 ロゼリィ、アプティ、サーズ姫様、ハイラ、アンリーナ……なんというあられもない姿……。この状況でなんで俺が一緒なのか疑問だが、考えたら負けだと悟る。


 公共の施設じゃなくてラビコの私設だから、お風呂にバスタオル巻いて入るマナー違反は許してくれ。そうじゃないと俺の心が持たない。



「うっは~綺麗じゃないか~いや~なんか滅多に来ないのに悪いね~しっかり管理してもらっちゃって~」


 後ろからラビコがしっかりバスタオルを巻いて歩いてきた。


 あれ、今気づいたけど、普段の水着よりバスタオルを巻いたほうが肌の露出が少ない……。


 なんという救世主……! 右を見ても左を見ても露出が多い中、どこに視線向ければいいか英断しないといけない状況に現れた天使じゃねーか。


 助かるぞ、ラビコ。


「それだけペルセフォス王国はラビィコールを評価している、ということだ。勇者パーティー解散後も国に残り、大規模戦闘の先頭に立って戦ってくれたからな。正直、うちは物理火力は有能な人材が多くいる。だが、魔法使いは当時手薄だったのでな、お前のおかげで多くの命が救われたことへの対価と考えてもらいたい」


 身体中にボディソープの泡で覆われたサーズ姫様がラビコに微笑む。


 うっへ、言っていることは素晴らしいんだけど、ほぼ裸で泡だらけの状況は何言ってもエロく見える。


 ああ、正直に言おう。


 湯気がかなり上がり、普通は視界が狭いんだろうが、俺には森の中の澄んだ空気状態だ。身体のラインはバッチリ見える。


 あれかな、バスタオルに穴が開くんじゃないかと思うぐらい見てもいいのかな。


 でもそうすると体育座りのまま動けなくなるので湯船に入って、なぜかバスタオルを巻くといつもの水着より肌の露出が減ったラビコを見て気を落ち着けよう。



「ふ~んだ。親を亡くし、悲しむ子供が見たくなかっただけだよ~だ。国のことなんか考えていなかったね~」


 ……そうだった……ラビコは孤児院出身だからな。


 その辛さを身にしみて知っているんだろう。なんていうか、ラビコっていい奴だよな。


 今の生き方、考え方、正直格好いいと思う。人として尊敬もしているし、女性としてもかなりラビコは好きだな。


 ラビコに比べたら俺なんて考え方も行動も子供っぽくて全然ダメな男なんだけど、いつか堂々とラビコの横に立てる男になりたいもんだ。



「あれれ~選び放題の中、社長の視線は私に向いている~? あっはは~これは勝っちゃったかな~みんなごめんね~」


 ラビコが俺の視線に気付き、湯船に入ってきて身体を密着させてくる。


 うっぐ、下半身の関係上、俺もうここから動けません……。


「そっか~やっぱり社長は私が一番気になるのかな~? あっはは~まぁそうだよね~このメンバーの中じゃ一番裸を見られているし~このタオルの下が想像しやすかったのかな~?」


 見られたんじゃなくて、見せてきたとか、偶然見えたハプニングだろうが。



「ほう、なるほどな。何度か裸を見せることで妄想をさせやすくし、気が付いたら自分の虜にしているという作戦か。さすが魔女だよ、恐れ入る」


 サーズ姫様が感心したように頷く。


 え、今までのあれってそういう作戦だったのか? だとしたら見事にはまっているぞ。


「まっさか~そこまで計算はしてないよ~だ。私は本当に好きな男には小細工なんかしないで、正面からぶつかるのみさ~」


 身体を洗い終えたロゼリィ、アンリーナ、ハイラ、アプティが湯船に入ってくるが、王族であるサーズ姫様とラビコの間には入りにくいようで、大人しい。


 中央にある大きな湯船は二十人は入れそうな物で、俺はその端っこにベスを抱いて入っている。


 右側にはラビコがいて、俺の左側にサーズ姫様が入ってきた。


「勝算は? ライバルは多いらしいがどうなのかな」


「知らないね~。勝つまでやればいいのさ~。最悪引き分けに持ち込んで負けなければいいんじゃないかな~あっはは~」


 引き分けとはどういう状態をいうのだろうか。


 さて、俺の視界を占める肌色の割合いの高さをどうにかしないと、さすがの俺の完璧な紳士の心にもほころびが生まれそうだ。



「ははっそれは分かりやすくていいな。こういう駆け引きはいかんせん苦手でな、正面からぶつかり勝つまでやればいい、か。それなら私にも出来そうだ、どれ……こういう感じだろうか」


 そう言うとサーズ姫様が俺に身体を密着させ、その豊かな胸を押し付けてきた。


 これはまずい。ゆっくりと風呂に入り疲れを癒やしたかったが、緊急退避が必要か。


 この状況を抜けるのは味方が必要。


 アテならある、そう無限ブロックの持ち主……。



「アプティ、マスターとして命じる。俺を守れ!」


 そう言い放つと、俺は湯船を抜け出し全速力で走る。


「……了解しましたマスター。この生命に変えましても……」


 目から赤い光を放ち、アプティが湯船から跳び上がる。


 本気モードのアプティで蒸気が口から出ているが、これだけ湯船から湯気が出ている状況、ラビコ以外は誤魔化せるだろう。



「あっはは~アプティを引き込んだのは正解だね~。でもキャベツ無しとはいえ、魔法を使えるラビコ様と変態姫が組めばそっちに勝ち目はないね~!」


「ははっ、いいだろう。ここは利害の一致ということだ! 続けハイライン、目標を捕らえる!」


 ラビコが立ち上がり、両手に紫の光を宿らせる。


 ちっ、キャベツ無しでもそこそこいけんのかよ。


 サーズ姫様も緑の光を右手に宿らせる。


 こちらはもとから近接タイプだからな、槍無しの素手だがやっかいか。ハイラという部下もいるし、ここはベスも参加させるか。


 さすがにこの状況ではロゼリィとアンリーナは無力。悪いが大人しく風呂に入っていてくれ。



「ベス、来い! サーズ姫様を押さえ込め!」


 ハイラもサーズ姫様の命令で風呂から飛び出し、戦闘モードに。


 だがハイラはそれほど戦略は考えないタイプ。


 なら頭であるサーズ姫様を抑えれば、ハイラ含め二人を無力化出来る。あとはラビコをアプティでなんとか抑える!


 ベスが前足を使い、風圧のみのかまいたちをサーズ姫様に放つ。


「はははは! これが君のご自慢のベスか。どれ、サーズ=ペルセフォス……参る!」


 ベスの放ったかまいたちを、サーズ姫様が両手の緑の光でうまく弾く。


 あれは風の力だろうか。ベスのかまいたちと同属か。


「ごめんなさいベスちゃん! でも先生を物に出来るチャンスは逃せません! ファウアステル!」


 ハイラが右手でVの字に斬り、衝撃波を発生させベスを襲う。


 甘いぞハイラ、その程度ベスにはそよ風だぜ。


「弾けベス! シールドアタック!」


 俺の声にベスが答え、吠える。額から青い光を放ち迫るV字攻撃を消し去る。


 いいぞベス! 魔王戦以降、ベスの火力が上がっているようだぞ。これは行ける……!


「遅いな! アズゥロウラ!」


 サーズ姫様が上から風の塊をベスに放つ。


 ちっ、ハイラを時間稼ぎに使ったのか。悪いがここは本気を出す。早めに二人を抑え、ラビコをどうにかしないとならん。



「行くぜ!! 狼武装……イルシオフェンリス!」


 ベスが俺の声で身体から強力な青い光を放ち身体を覆う。それが形を成し、四メートルほどの大きさの光の狼となる。


「これは……!? 狼武装どころのレベルでは……!」


 サーズ姫様がベスの变化に驚き声を上げる。


 風の塊がベスに当たるが、緑の光は力なく霧散する。


「す、すごい……! さすが先生です! 格好いいですぅー! むぎゅっ……」


 ハイラが戦闘を放棄して俺に抱きつこうとしてくるが、ベスが右手で抱え込み、左手でサーズ姫様をも押さえ込む。


「はははは……! これが君の力! ベスという単体での最高火力を君の指示で思い通り動かすか、これはやっかいだ! 完敗だ、はは」


 よし、ペルセフォス組は押さえ込んだ。あとはラビコのみ。


 こちらは近接専門アプティ、向こうはキャベツ無しの魔法タイプ。どうみてもこちらが有利だな。



「あっはは~これが神獣イルシオフェンリスかぁ~すっごいな~。そういえば社長ってば、ベスとアプティを思いのままに操れるんだよね~キャベツ無しでは不利かな~と」


 俺の前には口から蒸気を放つ、完全覚醒アプティ。


 ベスがペルセフォス組を抑えたので、ラビコには援軍もない。勝ったか。



「でもこっちにはまだ使える駒があるんだよね~と。そらアプティ、くらいな~!」


 ラビコが手から紫の光の帯を放ち、アプティの足を捕まえる。


 あれは……俺がこっそりエロ本買いに行ったときに使われた拘束魔法か。


 ちっ、アプティの自慢の足が抑えられてしまった。


「アンリーナ~! ロゼリィのタオルをはがすんだ~!!」


「がってん承知ですわ!」


 ラビコが叫ぶと、アンリーナが迷わず呆然と立っていたロゼリィのバスタオルを引き剥がした。


「ふぁっ!? あ……いやぁぁあああ!」


 素晴らしい弾力と共にあらわになるロゼリィの大きな胸。


 こ、これは……なんという大きさと美しさか……。


 俺は思わず走るのをやめ、自分に与えられた最大の力であるその目に全てのパワーを注ぎ込む。


「ナイスだアンリーナ! ……永久保存モード!」


「あ……いやっ……み、見ないで下さいー!!」


 俺の熱い超高画質保存モード視線に気付いたロゼリィが手でお胸様隠し、座り込んでしまう。


 時間にして二秒ほどだっただろうか、俺にはその短い時間がとても長く、永久の時間にも思えた。


 ええいくそ、動画保存機能はないのか! それすらないのに何が王の眼だの千里眼だの……! このポンコツ……あ。



「はい、捕まえた~。私の勝ちだね~あっはは~」



 気づくとラビコに背中から抱きつかれていた。


 しまった俺のチートアイは全てロゼリィの胸を脳に焼き付ける作業の真っ最中で、ラビコの動きは全く見ていなかった。


 やられた……。


「もう社長のバスタオル意味ないね~隠す気ゼロだこりゃ、あっはは~相変わらずの迫力。これは女を惹きつけるね~」


 しまった……俺の紳士というステータス表記がどこかへ飛んでしまっている。俺の俺自身の制御も忘れてロゼリィの美しき物に見とれていた。



「勝者には口づけを……ってね~これぐらいの我が儘はいいよね、社長……」


 そう言うとラビコが後ろから俺の頬に軽く唇をつける。


「今までも好きだし、これからも大好きさ~。ずっと付きまとうんだから覚悟しろ、あっはは~」



 ラビコが優しく微笑み、顔を赤くする。












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