第222話 いざ魔法の国セレスティアへ 8 俺の武器撫で撫でとカボチャ使い様


「王族だから一人部屋というのはおかしい話だ。むしろ王族である私の意見を第一に考え、彼を私に差し出すべきだ」


「はぁ~? さっき自分が王族であることは考えないで欲しいとか言ってたろ~? ここは付き合いの長さで決めるべきだとラビコちゃん思うわけで~」



 さすがにペルセフォス王国第二王女サーズ様と、ペルセフォスでは国王と同じ権力を持っているラビコが言い合いを始めると、他の女性陣は黙って見ているしか無い。


 ハイラはサーズ姫様の部下だし、ロゼリィにとっては憧れのお姫様。アンリーナもさすがにお姫様とラビコには強くは出れない様子。アプティは興味なし、俺の髪を櫛でとかし始めた。ありがとう。


 ベスもカゴでもぞもぞし始め、そろそろ部屋に開放して走らせてやりたい。



 止めるか、しゃあねぇ。


「指輪もないような雑魚は~引っ込んで……むはっ」

 

 俺はラビコの頭を撫で、話を止める。そのまま優しく撫で続け、ラビコの気持ちを落ち着かせることに。


「ラビコ、そこまでだ。それより腹減った、さっさと荷物置いて昼にしようぜ」


「む~……う~。お昼~? ああ、うん分かったよ~」


 ラビコが少しづつ興奮を収め、肩の力を落とした。うん、それでいい。軽くラビコを抱き寄せ、頭を手でぽんぽんとする。


「あっはは~社長ってあったかい~」


 ラビコに笑顔が戻った。こんなもんか。


 しかし本当にお腹が空いているんだよな。実は俺達は朝ご飯は食べていない。


 着いたら駅で買おうかと思っていたのだが、サーズ姫様がいるからものすごい歓迎を受けてしまって機会を逃したからなぁ。



「はは、本当にラビィコールは君の言うことは聞くんだな。まるで猛獣使い……ふわっ」


 俺はラビコを左手で抱いたままサーズ姫様の頭も撫でる。


 見ていたラビコ、ハイラが驚くが、構わず撫でる。


「サーズ姫様もそこまでです。他国に来て身内でトラブル起こしているのを見られたら、あまりいい印象は受けないかと。身内で言い争いが起きるぐらい、嫌々来たみたいな間違った見方をされかねないです」


 サーズ姫様もまさか俺に頭を撫でられるとは思っていなかったようで、相当驚いている。王族様相手にやっていいことではないが、俺はこれしか気を静めさせるやり方を知らん。


「ふぅっ……そ、そう言われればそうだな……。すまない、無理に来てもらったゲストである君に気を使わせるとか王族失格だ」


 いつものサーズ姫様に戻ってくれたようだ。さぁ、無礼なことをした俺を処分してくれて構いません。


「その……なんだ。父以外で初めて男性に頭を撫でられたよ。なんというか、いいものだな……。男の大きな手で撫でられるというのは、守られているようで心が落ち着く。なるほど、これがワガママ魔女ラビィコールを手懐けた君の武器か。はは、私も君に手懐けられてしまったよ」


 サーズ姫様が軽く顔を赤くし俺を見てくる。あれ、怒らないのか……助かった……。



「…………どうした、なぜとどめに私を抱き寄せない? ラビィコールと同じ扱いをしてほしいのだが」


 俺を見たまま動かないと思ったら、それを待っていたのか。いや、さすがにサーズ姫様を抱き寄せるというのは……。まぁ、いいか。


 やっていいんなら喜んでやりますよ。俺は撫でていた右手でサーズ姫様の肩を掴み、軽く抱き寄せる。


「うわわっ、せ、先生……」


 ハイラが驚きの声を上げる。


「ほぅ……ふむ、これは……私の心にクマが灯るぐらいいいものだ。こうしていると君の優しい心が伝わってくるよ」



 なぜかラビコとサーズ姫様を同時に抱く展開に。


 つーかこの姿を見られるほうがスキャンダルなんだろうが。


 ところで心にクマが灯るって、何。初めて聞く言葉なんだが。


 あとサーズ姫様……胸がかなりのボリューム……。




 部屋割りは俺が独断で決めた。


 サーズ姫様にハイラのペルセフォス組で一部屋。上下関係でうまくいくだろう判断。


 二部屋目はアプティとアンリーナ。この組み合わせは天敵コンビということで。あと多分アプティは朝俺の横にいるだろうから、実質アンリーナ一人。


 最後は俺、ラビコ、ロゼリィで一部屋。まぁなんだかんだ一番付き合い長い組み合わせ。気心も知れているし、ラビコさえ抑えれば多分大丈夫だろう。




「あ~あ、まさかあの変態性癖女の頭を撫でて抱くとはな~社長ってば怖いもの知らずでラビコさんドキドキしたよ~」


 部屋に入り荷物を置いていると、ラビコがニヤニヤ話しかけてくる。

 

 内心は俺だって怖かったんだぞ。街の人が王女様の頭撫でるとか下手したら処刑もんだろ。


「そうですね、さすがにびっくりしました……。でもあなたに頭を撫でられると大人しくなるのは、よく分かります。私もそうですし……」


 ロゼリィが俺に近寄り頭を向けてきた。上目遣いで見てくるが……撫でろとご所望ですか。どれ、ロゼリィも撫でておくか。


「ふふ、これですこれ。これをされると心にあなたが入ってきて安心します。守られているような暖かい気持ちになります」


「ベスッ」


 ロゼリィの頭を撫でていたら、カゴから開放したベスがこっちも撫でろアピール。


 思わず三人で笑う。






 時刻はお昼。


 サーズ姫様とハイラはサンディールン様と会談とお食事会。


 ハイラが俺の側を離れたくないとゴネたが、サーズ姫様をしっかり守るようにと頭を撫で指示を出した。


 俺達は国同士の会談には参加出来ないので、街に出てご飯を食べてくる。セレスティアに来たことがあるラビコとアンリーナの情報を頼りに散策してみようか。




「街に行くのでしたら案内役として、我が国が誇る魔法使いノイギア=ギリオンをおつけいたしましょう」


 地図を広げて皆で話し合っていると、サンディールン様が気を使って人を呼んでくれることに。まぁ他国のお城含め街中を自由に歩き回るには、この国の誰かがいたほうが楽だよな。


 紹介され現れたのは杖を持った、長いウェーブ髪を後ろに大きなリボンでまとめている、つり目の美しい女性。歳は俺より一、二個上だろうか。


「……ノイギア=ギリオンです」


 素っ気なく答え、ラビコを睨む。



「なんか睨まれてるけど、ラビコ何かしたのか?」


 俺が小声でラビコに耳打ちをするが、ラビコは首を振り否定。


「いや~会うのは初めてさ~さすがに名前は知っているけど。セレスティアで一番有名な魔法使いで~カボチャ使いとか聞いたな~」



 カボチャ使い? パンプキン魔法とか特殊なものでも使うのだろうか。それだとハロウィンで大活躍しそうな魔法使いだぞ。











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