第170話 さぁ、ケルシィへ! 3 アンリーナの秘密の鍵様
「こちらがイベントホールになります、遊技場、運動器具などもこの六階にありますのでご自由にご利用下さい」
アンリーナに船内を案内してもらう。
まぁ、とにかく豪華。
絨毯一つとっても綺麗な刺繍が施された高級品。各所に灯された明かりも魔晶石を利用したもので、宿にある物とはレベルの違う明るさだなぁ。ランプ一個取っても格上と分かる。
「五階が皆様のお部屋がある階となります。レストランもありますので、うちのシェフの腕をご堪能下さい」
船首側がレストランで船尾側が宿泊施設か。
真ん中はロビーになっていて、ここで集まってくつろげそうなソファーがあり、簡単な飲み物も飲めるようだ。
ロビーを囲むように個室があり、そこに俺達の部屋が割り当てられた。
「師匠……」
アンリーナが小声で俺を呼び個室のさらに先、通路の一番奥を指す。
「あの先に私の部屋があります……寂しくなりましたらすぐに来て下さいね、鍵はこちらです」
なにやら豪華な鍵を手渡された。
なんかゲームにでも出てきそうな金の鍵、いや……渡されてもな……。
一通り案内が終わり、割り当てられた個人部屋に一回入る。
八畳はあるだろうか、内装も豪華。ベッドもふっかふかだ……隣町に行ったときの漁船もいい思い出になったが、どっちがいいか選ぶならやっぱりこっちだよな……。
何度も乗れるクラスの船じゃないし、アンリーナに感謝しつつたっぷり堪能させていただこう。
ベスをカゴから出し、自由にしてあげる。
部屋外では海に落ちる危険があるから出せない。ここまでずっとベスと一緒だったが、俺なんかといてベスは幸せなんだろうか。異世界に来てしまって、環境が大きく変わってストレスとかないのか不安になる。
いつも舌出して尻尾振ってくれているが、実際どう思っているのかなぁ。俺をいいパートナーと思ってくれているのだろうか……。
「ベスッ」
ベスが吼え、俺に体を摺り寄せ甘えてくる。とりあえず大丈夫そうか。
ロビーに集まり航程の確認。
朝四時に出航なので、多分みんな寝ている間にソルートンは見えなくなっているだろうか。ロゼリィは早起きで六時には起きているだろうから、最初に太陽に照らされた大海原を見れるのかな。
「じゃあみんな今日はもう寝ようか。目が覚めたらそこは大海原の上だ!」
俺が興奮気味に宣言をする。
これだけ豪華な船でこれから旅に出れると思うと、さすがの俺も興奮を隠せない。
「はい! 王都の次はケルシィ……あちこち行けて見識を深めることが出来そうです。宿の為にもこのチャンスを生かしてがんばらないと!」
意気込むロゼリィ。今回は王都のカフェジゼリィ=アゼリィの料理人探しだからな。自分のお店のことだし、気合が違うなぁ。
「……はい、マスター……ここの紅茶美味しいです……」
寝る前に紅茶飲んで大丈夫か、アプティ。
いや、蒸気モンスターは人間とは違うのかね。カフェインとか関係ないのかね。
「あっははは~いや~さすがアンリーナの船だよ~快適快適~高級品食べ飲み放題とかここに住みたいぐらいだね~」
どこぞから持って来たと思われるお酒を抱え、ラビコが笑う。
飲んで寝る気か、こいつ。
まぁいい。目覚めの大海原を想像して俺は寝るぜ。
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