第169話 さぁ、ケルシィへ! 2 ロゼリィのお守り様
「ようこそグラナロトソナスⅡ号へ! 皆様、自分のおうちのようにおくつろぎ下さい!」
復活したアンリーナが両手を広げ宣言する。
クルー達がラッパを出し、夜だから控えめに軽く演奏。
「うわ……私なんかが乗ってもいいのでしょうか……」
ロゼリィがちょっと豪華な船と、クルー達の歓迎のパフォーマンスにびびってキョロキョロしだした。
ああ、俺もちょっと自分の場違い感を抑えるのに必死だ。いつものオレンジジャージだし。
航程は明日朝四時出発、明後日の朝九時頃に補給で途中にある大きな島に寄り、そこから一日でケルシィに到着する予定。
なんと普通の船で四日なのだが、アンリーナの最新大型高速魔晶船だと二日で行けると聞きビビッた。その情報で一番ほっとしていたのはロゼリィ。四日と二日は大きく違うからな、それぐらい船酔いはきつい。
演奏を終えたクルーの男達がそわそわとラビコの前に列をなし、何やら話をしている。話がまとまり、ラビコが手を出し握手会が始まった。
「ラビコさんだ……やった」
「まさか本物にお会いできるとは、船乗りやっててよかった」
ラビコが愛想よく笑顔で握手に応じている。
ああ、そうかラビコって世界的に有名な魔法使いなんだよな。一緒にいると忘れがちだけど。
「申し訳ありませんラビコ様、クルー達がどうしても握手がしたいと……」
「いやいや~こっちだって無理言って乗せてもらっている身だし~これぐらいはするよ~」
アンリーナがラビコに謝り、軽い世間話を始める。
さて、船内に入ろうとしたらロゼリィがすすっと寄って来て、何かを俺の手に握らせてくる。
「あの……これ……王都で買った物でして……邪を弾き、持つ者を守るというお守りだそうです。よかったら持っていて欲しいです。私には何の力もないですが、せめてあなたの気持ちだけでもお守りしたいです……」
それは王都の紋章が入った小さな小袋。
よく観光地で売っているお土産だろうか、それでも俺を想い渡してくれたのなら、これはもう立派なロゼリィのお守りだ。
「ありがとう。これがあれば、いつでもロゼリィに守られている気持ちになれそうだ」
王都に行く途中に飛龍に襲われ、危険な場面があったしな。
あのときロゼリィ本気で泣いていたし、ロゼリィなりの俺を守りたいというありがたい気持ちなんだろう。
俺は大事にポケットにしまう。
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