第138話 ウェントスリッターへの道 5 必勝法は曲がらないハイラ様


 国王主催のお食事会をなんとか乗り切り、翌日。




 お姫様にハイラの練習時間を割いてもらい、特訓開始。




 と言っても、俺が教えることは一個だけ。


 レースは明後日、今からハイラの根本を変える特訓なんて無理だろう。


 基本こういう乗り物は体重移動、シフトウエイトがものをいう。曲がるときにどこに何割体重を持っていき、減速をどれぐらいに抑えるかは経験と勘で計る。毎日のプラス一の積み重ねの作業なので、こればっかりは明後日には間に合わない。


 でもまぁ、今の遠心力に振り回される、大回りのカーブは少し改善したい。


 とりあえず最終コーナー手前までは、なんとか先頭集団に食いついてもらわないとならん。





「せ、先生ー! で、できませーん!」


 王都の少し外れにある岩場。


 そこに良い感じのL字に切り込まれた場所があったので、そこで練習している。


 まずは、今より小回りに曲がる練習な。



「曲がる方向に上半身の体重乗せて曲がるんだ。落とすスピードは体感で覚えろ」



「ひぃいい! 体重ですか? こ、こうですかー」



 ハイラが飛車輪を操り空を飛び、左に曲がる。体も左に傾け、遠心力に振られる体重を堪えた。


 うん、これでいいや。今までより全然マシになった。




「オッケーハイラ。一個クリアだ」



「え、え? 先生これだけなんですか?」



 ああ、そうだよ。基本なんてこれだけだ。


 あとは当人が慣れで工夫しろ、と。




「正攻法で勝ちたいのなら、今のを零コンマ零一単位で速度、体重移動の感覚を体に叩き込み、何度も練習し一度もミスしないレベルまで引き上げる。……が今はそんな時間は無い」


「うう、それは無理ですー……私、小心者で飲み込み悪い頭なので……」


 ハイラが泣き顔でモジモジし始めた。


 大丈夫だ、そんなやり方しないで勝てる方法がハイラにはあるんだよ。




「いいか、ハイラ。俺が考える必勝法、それは今のハイラなら絶対出来ることだ」


 ハイラが不安そうな顔で俺をじーっと見ている。





「最後は曲がらない、いいか……曲がらず直線で飛べ!」





「は、はい! ……え、ええ!?」 




 ハイラが条件反射で返事をしたが、俺の言葉の矛盾に驚いた顔をする。










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