第111話 そうだ、王都へ行こう! 6 終点の街の薄味紅茶と奇跡の走りの女性様


「お~見えてきたよ~あれがソルートンから一番近い魔晶列車の駅がある街、フォレステイさ~」




 空が紅くなり、何かの鳥達の鳴き声が聞こえ出す時間。




 早朝出て夕方に到着、本当に半日ぐらいの距離なのか。


 街に近付くにつれ人が増え、建物も増えていった。



 ここは魔晶列車の終点。荷物が運ばれここで降ろされるからか、石造りの巨大で頑丈な倉庫がずらーっと並んで建っているのが見える。


 近くに広大な森林があるようで、木材の商売が盛んらしい。






「なんかソルートンとは雰囲気違うなぁ、木造の物が多いんだな。すごい木の香りがする」


 俺は周りをキョロキョロ見回し、新しい街を観察する。


 当然内陸なので、海の香りはない。


 とにかく荷物を運んでいる人が多い。馬車や荷車などでたくさんの荷物をあちこちに運んでいる。




「南に暗示の森っていう広大な森林があるからね~林業が盛んなのさ~。でも~その森は不思議なところで~年に何十人もの伐採作業員が行方不明になるんだよね~怖い怖い~」


 いきなり怖い話すんなよ、新しい街を楽しもうとしてんのに。


 今回は行かねーぞ、そんな怖いとこ。








 街の雰囲気を味わいながら歩き、休憩で喫茶店へ入る。



「ラビコ、乗る列車はどうするんだ? ここで一泊で明日とかか?」



 注文した紅茶を飲みながらラビコに聞く。


 うーん、味が薄い……。



「……マスター……荷物からアップルティを出してもいいですか……これ、飲めたものじゃ……」


 アプティが紅茶の香りを嗅いで、荷物から茶葉を出そうとしている。


「だめだ、アプティ。我慢しろ、王都に着いたらおいしい紅茶で乾杯しようじゃないか」


 ちょっと不満そうにアプティが出された紅茶を飲む。



「あっはは~ここはマシなほうだよ~駅だから物資も豊富だしね~ちょ~っと高額出せばおいしいお店もあるよ~行くかい?」


 高額なのか、行かねーっす。


 小皿で出てきたレモンの輪切りを浮かべれば、まぁ飲めるし。




「え~と、休んだらすぐ乗車かな~ここから二日かかるから気合入れてよ~」


 列車で二日か、体がギシギシになりそうだな。馬車での半日すら体がきついってのに。


 寝台列車的な施設はあるのだろうか。



「ラビコ、その列車で寝るんだろ? そういう設備があるってことか?」


「お? なんだい社長~追加で借金かい? 普通は二人用の椅子で無理矢理寝て耐えるんだよ~個室も数個あるけど~たっかいよ~? いいのかい? 私はそっちのほうがいいけど~」


 ぐ、あるけど高いのか。


 しかし二日も乗るわけだし普通の椅子ではさすがにな、女の子が三人いるし……迷う必要ないか。



「個室を取ろう。さすがに二日はキツイからな……」



「毎度~借金上乗せありがとうございま~す。じゃあ駅行って個室があるか聞いてこようか」







 喫茶店を出る。



 もう日は落ち、暗闇の夜。


 あちこちに街灯があり、お店の明かりも灯り夜の繁華街といった雰囲気になっている。


 アプティは紅茶を半分残していた。気持ちは分かるがね。俺もレモンで誤魔化しながら飲んだし。



「ロゼリィ、酔いは大丈夫か? これから列車に乗るが」


「はい、馬車では問題なかったです。列車も大丈夫だといいのですが……あとお風呂に入りたいです……」


 ロゼリィはちょっと不安そうな顔している。



 お風呂なぁ、たしかに汗を少しかいているから入りたいが。列車の時間があるなら考えよう。


 ベスはいたって元気。ご飯がたりないアピールをしてくるぐらいの元気っぷり。






 駅舎に近づくと溢れる人人人……。すごい活気だな、みんなどこに行くのかなぁ。いつか本当に俺はこの世界を全部見てやるんだ。




「え~と、窓口は~……」


「あ……! い、いました! 確保……確保ですー!」


 叫びながら知らない女性が俺達を指し、全力で走ってくる。




 転ぶようで転ばない奇跡のバランスの走りに、俺は目を奪われた。



 た、頼むから直前でコケて俺の腹にダイブとかベタなことはやめてくれよ?








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