第106話 そうだ、王都へ行こう! 1 土下座から始まる旅行計画様
皆は土下座をしたことはあるだろうか。
俺はある、しかもつい最近裸で土下座をした。
では人から強制されていない、自分から土下座をする状況とはどういう時だろうか。
そしてその時はなんというセリフを言っているだろうか、想像してみて欲しい。
多分、こうじゃないかな。
「すまんラビコ! 金貸してくれ! 一生のお願いだ、お金は絶対返す!」
お昼、ランチタイムで混雑する中、俺はおでこを床に擦りラビコの靴を舐める勢いでお願いする。
プライド? そんなもんあったって異世界じゃ食っていけん。むしろ邪魔だ。
「うっわ~すっごいな~社長。私と二人きりの部屋とかじゃなくて~この混雑する食堂でやるんだ~やっぱ他の男とは違うな~色んな意味で。あっはは~」
俺の異世界での世間体は地に落ちている。もう何も怖くはないのさ。
「ど、どうしたんですか!? 毎月のお給料で生活出来ているじゃないですか。もしかしてこの街に来る前に借金があったとかですか!?」
ロゼリィが目を丸くして俺の肩に手を当ててくる。
いや、そんなものは無い。
俺は異世界のこの街にいきなり来て、一日目にロゼリィのとこにお世話になっている。借金を作る暇も無かったよ。
アプティも不思議そうに俺を眺め、俺の横に正座し土下座のポーズをする。
「マスターがするなら私も……」
「ありがとう、アプティ。でもこれは俺の問題なんだ」
アプティに頭を上げさせる。
あとバニーで土下座の格好をすると大きなお尻が強調されて、実に見応えが……。
「ふぅ~ん? よく分かんないけど~アプティのお尻を眺める余裕はあるんだね~ふふふ~じゃあ足をお舐め! なんつって~……」
ラビコが誘惑するかのように足を組むが、俺はすぐさまラビコの美しいふくらはぎを大事に抱え舐め始める。こんなんご褒美だろ。
「ぅっひいっ! 冗談だってのに本当にやるな~! くすぐった……いひゃひゃ~」
ざわつく店内。
ロゼリィが驚きながらも顔を紅くし、興味ありそうに見てくる。小さな声で足をお舐め、足をお舐め……とぶつぶつ繰り返しているが、何を想像しているんだ。
「頼むラビコ、俺は真面目に話しているんだ。お金を貸してくれ!」
引き続きベロンベロン足を舐める。俺は大真面目だぞ。
「うひゃっはは! やめっひいいいいっ~!」
暴れるラビコの足を力で抑え、今度は太ももを舐める。
ラビコが力なく椅子の背もたれにうなだれ、抵抗しなくなった。
「あっはは……これやばいね~社長に力で抑えられて無理矢理……あはは~くせになりそ……分かったよ、いくら欲しいのさ~」
やったぞ、俺はラビコを落とした。土下座した甲斐があるってもんだ。
ロゼリィがいつもみたく怒って止めるのではなく、紅い顔の半開きの口でぼーっと眺めていたのは気になるが、今はいいか。
「王都に行きたい~? どうしたのさ~社長ってば……あ、ついに私と一緒になる決心したの~?」
ラビコがニヤニヤ言ってくるが、そうではない。
この異世界でかなり栄えているっぽい王都に行きたいんだ。
見てみたい、が俺にはお金が無い。宿屋で毎月貰えるお金を貯めれば、いつかは旅行代は貯まるだろうが、それでは時間がかかりすぎる。
こういうことは早いうちに事を起こしたほうがいい。幸いラビコは金持ちだ、知り合いでもあるから返済の融通も聞いてくれそう……だし。
「俺は王都を見てみたい。見識を広めるのなら一秒でも早いほうがいい。世界というものを直に見て、肌で感じて、多くのものを学び吸収したい。そこで得た知識という財産を糧に悩み、自分の道を決め、進んで行きたいんだ」
ざわついていた食堂内が俺の宣言で静かになった。
ラビコがパチパチと拍手をし始める。
「あっはは~いいね~それでこそ私の社長かな~。決断できる男は好きさ~行動が早い男も好きさ~。ここにお金も持っている、だったら完璧だったんだけど~完璧な男ってつまんないんだよね~。社長ってどこか必ず抜けててアンバランスなんだよな~セリフは真面目なのに、私の足をべろべろ舐めまわしたり~そういうところがすごく私を惹きつけるんだよね~」
後半だけ聞いたら、私は足をベロベロ舐める男に惹かれるだぞ、それ。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます