第100話 ジゼリィ=アゼリィ収穫祭 海賊の兄妹様
「よぅ! 来たぜ! 久しぶりだなレンジ! 差し入れ持って来たぜ!」
収穫祭も後半、ポテトチップスは売り切れ、フライドポテトとコロッケしか屋台は在庫が無い状況になってきた。
夜はお酒をいつもより割引で出すので、お客さんの層がファミリーからいつもの酒場のお客さんが増えてきたところだ。
よく通るデカイ声が誰かを呼んでいる。
気にせず使い終わったテーブルを拭いていたら肩を力強く掴まれた。
「レンジ! 元気か!? 相変わらず腕ほっそいなーうはっは!」
意識飛ぶ勢いで肩を掴まれ前後に揺さぶられる。
誰と勘違いしてんだこの人……。
「だ、誰かと勘違いじゃ……あれ?」
太陽によく焼けた肌、無駄のない芸術的な筋肉。上半身裸にジーパン。そしてこの声、どっかで会ったことあったような。
「最近漁船に乗らないのか? 親父が寂しがっていたぞ? いつでも待っているからな、うはっは!」
漁船……!? うっ、網、お尻の刺激、ぬるぬる……うわあああ! 封印していた記憶が……。
「あ、漁船の乗組員さんの……」
そういえば以前、隣町に漁船で行ったときにこの人いたな。
新人が落ちたぞー! ってすぐに助けてくれた熱血漢の人だ。
「隣町はどうだった? 帰り歩きだったんだろ? 山越えきつかったろ、レンジ!」
「あの時はお世話になりました。おかげで旅が満喫出来ました。山越えは色々あってきつかったですね、あはは……あのレンジって……?」
さっきからずっと俺のことレンジって言っているが、なんでだろうか。
「ああ、気にしないで、ないで。親父がオレンジ兄ちゃんって呼んでいるのを聞き間違えて、レンジって覚えちゃったの。私もそう呼んでいいのかな、かな?」
俺より背が高いスマートにガタイのいい男の後ろに、背の低い十二歳ぐらいの女の子がマグロを抱えて立っている。
片目に海賊みたいなアイパッチをして、自分の体よりサイズ大き目のぶかっとした海賊衣装。なんかすごいかわいいな。
「あ、ああ……それでもいいけど。君は?」
「兄貴はレセント。私は妹のシャム。親父から差し入れ持って来たの、来たの」
漁船の親父? おおぅ、もしかして海賊おっさんのお子さんかい。
「この街を守ってくれたんだろ、親父がベタ褒めしてたぞ、レンジのこと! 俺なんて漁船守るので手一杯だったってのに、お前はすげーな! うはっは」
「レンジ、これ親父から。街を守った英雄にはささやかなお礼だけど、収穫祭で使ってくれって、くれって」
大きなマグロを手渡しで受け取る。
「んごご……!」
片手で軽々渡してきたから普通に受け取ったが、この大きさのまぐろって百キロ近くあんぞ! 持てるか!
「うはっは! 貧弱だぞレンジ! マグロぐらい片手で振り回さねーといい船乗りにはなれねーぞ!」
落としそうになったマグロをレセントさんが持ってくれた。
「ありがとう、レセントさん……さすがにマグロは無理っす」
「おいやめろよ、さんとか。一緒の船にのった兄弟だろ? 俺はレセントだ!」
上半身裸の胸にビシッと親指を指してポーズを取るレセントさん。
「私もシャムだ。気軽に呼んで、呼んで」
「じゃあレセントにシャム。差し入れありがとう。夜のお酒のメニューにマグロを加えさせてもらうよ」
レセントにそのまま厨房に大きなマグロを運んでもらう。
それを見たイケメンボイス兄さんが大喜び。マグロって一匹単価高い高級魚だしな。
「お~ガトの子供達~! あれ、妹~大きくなってる~あっはは」
お酒を飲んでいた水着魔女ラビコが二人を見つけ、声をかける。
ガト? 海賊のおっさんはガトさんと言うのか。初めて知った。
「あ、ラビコ姉さんお久しぶりです! 相変わらずお美しい! よければ俺と!」
「あっはは~さすがレセント~見る目があるじゃないか~! でも無理~私の体は社長の物になったんだ~あっはは」
ラビコがゲラゲラ笑いながら俺に抱きついてくる。
お、おい誤解されるような言い方は……。
「そ、そ、そうだったんですか……! す、すげーなレンジ! あのラビコ姉さんを落とすとか、なんと羨ましい!」
カラ元気で大きな声出しているが、レセントは明らかに動揺した顔をしていた。
あれ、もしかしてマジでラビコのこと好きなのか。まぁラビコはかなり美人さんだし、エロいというよりスマートに格好いいスタイルは俺もたまに見とれる。
お胸様が豊かなのはロゼリィなんだが、露出少な目だからなぁ。
でも最近俺にはアプティという、間近で眺めても怒らない天使が側にいる。
「さすが街の英雄さん、手が早いんだなーだなー。ひひひ、私もあと五年も経てばレンジに手を出されちゃうのかなーかなー?」
「あっはは~社長は年齢関係ないよ~? 隙見せたらシャムも危ないから近寄らないほうがいいよ、あはっは~」
大爆笑するラビコ。こりゃーお酒がいいとこ入ったっぽいな。
つーか幼女にすら手を出しかねないとか、ラビコの中での俺はどんだけ鬼畜なんだよ。
「シャム、そのコレはラビコのジョークだからな? 俺は誠実真面目を絵に描いたような男で……」
「マスター……私の胸を眺める時間……今日もどうぞ」
アプティが最悪のタイミングで側に来た。
……その、たまたま、たまたま昨日この時間にアプティの豊かな胸に視線をチラと送っただけだって。
たった一分眺めただけだぞ、チラ、だろ? なあ?
レセントとシャムの視線がすごい……
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