第99話 ジゼリィ=アゼリィ収穫祭 なでなでの列様


「ジゼリィ=アゼリィ収穫祭、スタートです!」




 バイト五人組に開始の合図をお願いした。


 さすがに五人だと、ちょっと豪華な感じ。



 宿の外に簡易屋台を用意し、オープンテラス風にテーブルとイスを配置。天気も良く、お客さんの入りはかなりいい。ハーメルの動物行進がいい宣伝になったようだ。




「フライドポテトなのです。軽く塩が振ってあって美味しいのです」


 アルバイト五人娘のオリーブが両手を振って宣伝している。


 一番数を用意したので、値段も安め。ぜひ、どうぞ。





「コロッケいかがですか、揚げたて熱々ですよー」


 ロゼリィにはコロッケを担当してもらった。


 ロゼリィは長く宿の受付をやっていたので、一番顔が売れているからか、かなり人気。さすが看板娘。


 無難なソースとチャレンジの鰹ダシのスープを用意した。崩しながらスープの具として食べる感じ。





「……どうぞ、塩とケチャップどちらか」


 屋台の三つのうち一番列が出来たのは、意外にもアプティ。


 彼女には薄く切ったジャガイモを油で揚げたポテトチップスを担当してもらった。


 アプティは俺に言われたからやっている、といった感じでサービス精神は一切見えないが、容姿の良いのと、バニーガール衣装という派手な格好に無表情というのが受けたらしく男性人気が高い。


 あとポテトチップスという物自体が子供に大人気になった。



「中では肉じゃが、蒸かしイモ、焼き鳥などありますので、宿の食堂にもお寄りくださいー」


 俺は紙を丸めた簡易メガホンで宣伝。







「なかなか盛況じゃないか~しかし色々とよく思いつくもんだね~社長~」


 水着魔女ラビコが中でコロッケを食べていた。


 鰹ダシのスープを選ぶとは通だな。イメージは温かいうどんとかそばにコロッケが入っているあれ。



「これ、結構美味しいな~こういう食べ方初めてだよ~」


「まぁそれ、万人受けはしないだろうと思ってチャレンジだったんだが、ラビコにはうけたようだな」


 ラビコが昼からお酒片手に食べている。


「いつも同じだと飽きられちゃうからな。小さなイベントでもいいから定期的にやっていると普段来ないお客さんを呼び込めないかな作戦だ。あと旬の美味しい物は多くの人に味わって欲しいじゃないか」


 農園のおじいさんの作る野菜は丹精込めて作られているから、美味しいしな。



「社長って本当に考え方が冒険者じゃなくて商人だよね~世界中見て回ってみたけど、いち宿屋でここまで毎日混雑するわ、イベント催すわ、食事のメニューが多種多様とか見たことないね~」


「そうなのか? 王都とか行けばいくらでもありそうだが」


 王都ってそりゃーもうすごいんだと勝手に思っていたが。人も多いんだろうし。



「まぁ、そりゃあ王都まで行けば色々あるけど~はっきり言って、ここまで精力的にやっているところはないかなぁ~もう普通に王都でトップ張れるレベルだと思うよ~」


 そこまでかよ。


 このぐらいならやっているとこ、いっぱいあると思っていたが……。


 じゃあもっとやろう。ローエンさん、ジゼリィさん、ロゼリィにはお世話になっているし、恩返しは出来るだけしたい。



「でもホテル、あるんだろ? 施設も豪華で綺麗なとこがあるなら、そこには勝てないよ」


「ホテルは確かに豪華で綺麗だけど~、基本庶民の泊まれる金額じゃないよ~。もう王族貴族、お金持ちしか利用出来ないかな~。豪華さでは勝てないだろうけど、サービスの質、料理のレベルは同等……いやとっくに超えているかな~?」


 ほう、他にも宿屋、料理屋さんは多くこの街にあるだろうに、この宿屋が混むのはレベルが高いからなのか。


 でもそれはローエンさんの柔軟な判断と資金、イケメンボイス兄さんの調理の腕があったから、だしな。


 本当に最初にこの宿屋を選んでよかった。もし他のところに行っていたら、今頃俺はどうなっていたのだろうか……。








 混雑が一段落したので、屋台のみんなに休憩に入ってもらうか。




「マスター……人間酔いしました……解放してください」


 アプティがフラフラと俺に抱きついてきた。


 おっと、一番人数並んでいたからなぁ。さすがにきつかったか。


「おつかれ、屋台はセレサに代わってもらったから大丈夫だ」


 頭を撫でるとアプティの尻尾がぴくぴくと動いた。


「?」


 風か? いっつもつけてんのな、この飾りの尻尾。


 バニーな姿にはすごい似合うからいいけど。でもさすがにバニーのままってのもな、アプティお金ないみたいだし今度他の服買いに行くか。えーと、二百G、二万円までなら出せるぞ。





「うう、私も疲れたなー……なー……」


 ロゼリィがチラチラこちらをうかがっている。


「ロゼリィおつかれ、休んでくれ」


「はい! じゃあ私も」


 そう言って俺の左腕を掴んで頭を向けてくる。


 撫でろ、と……いいけど。




 ロゼリィの頭も撫でていたら、オリーブも側に来て順番待ちを始めた。


 ヘルブラもその後ろに並ぶ。



 なんの列だよ、これ。







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