第40話 蒸気の龍と一角の加護様
「はぁっ……はぁっ……!」
俺は川沿いをひたすら走る。巨大モンスターは動きが遅く、このまま走れば振り切れるか……。
しかし自分だけ助かろうと振り切ったら、キャンプ場の人が……くそ……!
オオオオオ……!
地鳴りのような声が響き、巨大な蒸気の塊が俺に向かって飛んでくる。さっきよりデカイ……!
「危ねぇ……!」
慌てて左に跳んで蒸気を避ける。前方の川で大きな爆発と水柱が吹き上がる。あんなもんくらったらひとたまりもないぞ……。
モンスターの目が赤く光り、巨大な口からまた蒸気が溢れ出す。口を開き真上に蒸気を吐き出し、それが上空で大きく爆発し周囲に蒸気が分散して降ってくる。
「うわっ……熱っ! 熱いって!」
雨のように降り注ぐ蒸気を避けることは出来ず、俺は何発かまともにくらってしまった。
分散させたせいか、致命傷にはならず野球の硬球が当たったぐらいの痛み。いや、いてーよ。ものすごい痛いよ……熱いし。
正直、手立て無し。ロゼリィが警護の人呼んでくれるのを信じるしかない状況。
オオオオオオ……!
巨大モンスターが吼える。
耳が痛いぐらいに響く……!
モンスターがぐっとかがみ、そのままジャンプ。巨体が五メートルほど浮き上がり、そのまま地面に降りてくる。
ズズン……と腹に響く音が鳴り、激しい揺れと衝撃波が俺を襲う。
揺れでまともに立っていられないところに、かまいたちみたいな物が飛んできて顔や腕が切られる。
「いってぇえ!!」
左腕に激痛。血がドバッと噴き出す。やべぇ……これ。
破裂音が聞こえたと思ったら、巨大な蒸気の塊が俺の目の前まで迫っていた。
はは……こりゃーあかん……。
わりぃ、ベス……ラビコ……ロゼリィ……結構楽しかったぜ。
「目覚めよ、一角獣の加護! アランアルカルン!!」
その声と共に俺の背中のマントから光る長い角が上空に伸び、角の頂点から溢れた光が俺の周囲を覆う。
光の外の地面が吹き飛び、後方で爆発が起きる。
俺の周囲の地面だけが残り、マントから伸びた光る角が消えていく。
目眩を覚え、意識が遠くなる。
俺の前に空中に浮いた人が現れ、巨大モンスターを睨んでいる。
紫に光るものを体に纏い、手には杖を持っている。
「はは……その杖にキャベツが刺さっていなかったら……格好いいんだろうなぁ……」
俺はラビコの背中を確認したところで意識を失った。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます