第41話 魔女の怒りと有能ベス様
「無事か……おい! …………ッ!」
男が意識を失い、地面に崩れ落ちる。
纏った紫の光が膨れ激しく動き出し、周囲の色をも紫に変える。
「やってくれたな……蒸気亀……私はとぉっても温厚で平和主義な女なんだが……絶対に許せないことが一つ。それは私の大事な物を傷つけ踏みにじる行為……そしてこいつは私の今一番のお気に入りの男でな……」
上空に七つの光が生まれ、照準が合うようにモンスターに光が集まる。
「私の物に勝手に傷をつけてくれたお礼をしないとなぁ……天の怒り、その身で受けるがいい! さぁ耐えられるか……天の七柱……ウラノスイスベル!!」
天空から七つの光が降り注ぎ、モンスターの体を貫く。
オオオオオオ……!
体に開いた穴から激しく蒸気が噴きあがり、モンスターは唸り声を上げる。
蒸気はモンスターの体全てを包み、跡形も残さず蒸発していく。
「十年かけてあれだけ消し去ったってのに……どこかにある元を絶たないと無限に沸くのかい。異界の化け物め……!」
「…………ぅ…………」
目を覚ますと白いカーテンに包まれた知らない天井とベッド。いつつ……どうなったんだ、あれ。
左手がいてぇ……。見ると包帯が巻かれており、誰かが処置してくれたようだ。
右手に暖かく、優しい感触。ロゼリィが俺の手を握り、寝ていた。
相当泣いた跡が見える。
「生きてるな、俺」
ロゼリィの手を握り、生きていることを実感する。
「……ぅ……は! あ……あああ! 良かった! 目を覚ましたんですね……良かった……」
ロゼリィが俺に抱きついて来た。
「いってて……左手あかーんって……」
「あ……ご、ごめんなさい……つい嬉しくて……」
俺は右手でロゼリィの頭を撫でる。怪我はなさそうだ。
ベスがトトトと歩いて俺の胸に座り、顔を押し付けてくる。
ああ、これ寂しかった合図だ。
「……キャンプ場に戻って警護の人に状況をお伝えしていたところに、煙を吐く怪鳥みたいのが現れて……警護の人はキャンプ場で手一杯の状況になってしまって……。すぐにラビコを起こしたら、紫の光りを出してあなたの元に飛んでいってくれました」
……! キャンプ場にさらに新手が来たのか。しかしここの警護の人って優秀なんだな。
「怪鳥はベスちゃんが私を守るように動いてくれて、ほぼベスちゃんが倒してくれました」
そ、そうか……ベスが……。ご主人様と違って、うちの犬どんだけすげぇんだ……。お疲れ様だベス、ありがとな。
俺はベスの頭を念入りに撫で、苦労をねぎらった。
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