第8話 おでん様


 宿に戻り寝ているベスを起こす。


「そろそろ夕飯だってよベス」


「ベスッ」



 ベスを連れ、宿屋の一階の酒場へ。


「あ、待ってましたよ! さぁどうぞこちらへ!」


 お姉さんが俺を見つけ笑顔でジェスチャーしている。




 案内されたテーブルには山盛りのメロン、スイカ。あと、おでん。



「うわっおでんだ! こんにゃく、練り物、ジャガイモ、と大根。すげぇ」


「ふふ、いい大根を仕入れてくれたので調理さんが頑張ってくれました」


 おお、おでんとか異世界で食えるとは思わなかった。これは嬉しいぞ。



「いただきます!」


 お、にんじんもあるぞ。おお、いい感じに染みてるなぁ。底のほうに沈んでいる大根を発見。頬張ると溶けるようにやわらかい。これはうまい。


「うめぇっす!」


「ふふ、よかった。あなたのおかげで他の宿泊客の皆様にもふるまう事が出来て、宿としては大助かりです!」


 まわりを見ると酒場のあちこちでおでんが湯気を上げている。


 そうか、がんばった甲斐があったなぁ。ベスもうまそうに食ってるし。




「そしてこれはあなただけのサービスです。今日はお疲れ様でした」


 お姉さんが俺の耳元で呟いた。出されたのはホワイトシチュー。にんじんやジャガイモが星だったり、ハートだったりに切ってある。かなり手が込んでいるぞ、これ。そしてうめぇ。真夏におでんとシチューは汗が止まらないが。


「シチューありがとうございます。すごくおいしいです」


「ふふ、おかわりありますよ?」




 俺は数杯シチューをおかわりした。本当においしかった。あとお姉さんいい匂いがしたなぁ。




 部屋に戻り、残金を確認。ちょこちょこ生活必要品を買ったりしているから、今日の二百Gから宿代五十G引いた百五十Gが全財産か。単純に宿にあと三回泊まったら終わり。


「こりゃあ、もっといい仕事みつけないとなぁ」


 あといつまでも宿暮らしってのもな。稼いで安い貸し出し住居でも借りたいなぁ……それには結構な額が必要そうだ。



「うーん」


 また明日センターで探すか。




 とりあえず今日は疲れた。あと股間いてぇ。


 あんのクソ鳥……でも焼き鳥はうまかった。



「明日も頑張ろうな、ベス」


「ベスッ」


 ベスの頭を軽く撫でて布団に潜り込む。







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