レイナの雀荘めぐり☆素人麻雀伝説

野口マッハ剛(ごう)

第1話 東風戦事件

 どうしよう。私、レイナは就職に失敗した二十三歳。私は今は無職だ。貯金は、ある程度ならば。駅前の雑居ビルの辺りをうろうろしている。


 とある看板に目が留まる。雀荘の看板である。あ、そういえば、私はネット麻雀では十段なのよね~。東風戦? あー、四局戦ね? 私は財布の中身を見る。五千円。別に高いレートでもないから、ちょっと打っていこうかしら?


「いらっしゃいませ~。フリーですか?」


 ん? フリー? 確かに私は彼氏が今まで出来ないけど、ちょっと失礼じゃないかしら?


「お客さん? 一人ですよね? フリーで打たれますか?」


 え? あ、あー! そういうことね?


「はい、フリーです私!」


 すると、店員から一通り説明を受けたけれども、あまりにも説明が長すぎて何一つ頭に入って来なかった私。


「お客さん? アイスコーヒーは、アリアリ? ナシナシ?」


 え? アリアリ? ナシナシ? なんのことかしら? まあ、いいや?


「アリアリで」


 私は適当に席が一つ空いてあるところに座る。五千円は受付でチップとやらに替えている。なんなのかしら? これ? あ、アイスコーヒーが来たわ。一口飲む。うげっ、甘い。


「そこは勝ち席だからね? お姉さん、ついているよ?」


 全自動雀卓を囲む向かいの男性客からそう言われた。よーし、勝ちまくるわよ☆ それじゃ、サイコロを振ろうかしら? ボタンはこれかしら?


 ウィーン!


 え! 中央が上がって、新たに色違いの麻雀パイが上がって来たのですけど!? ボタン、間違えた?


 これには、卓を囲む三人の男性客が苦笑いである。私は顔を真っ赤にしながら、店員に元通りにしてもらって対局が開始した。


 うーん、冷静に打とう。それにしても、ドラは赤色よね? 何かしら、この青い色のドラは?


 すると、アッサリと向かいの男性客が上がった。リーチが早かったなぁ。ん? ご祝儀五百円って何かしら? 私は点棒とチップ五百円分を渡した。うーん? リーチを掛けて一発目で上がりパイを引いたからご祝儀? なんのことかしら?


 そして、二局目。ん? あっという間に親がリーチを掛けて一発目で上がりを引いたから、え? ご祝儀が二千円? ちょっと待ったー!


「あの~? 私のチップがどんどん減っていくのですが?」


「え? お姉さん? 一発と赤色ドラの千円、青ドラ千円、計二千円ですけど?」


 え? 開始から五分で二千五百円分のチップが飛んだのですが?


 そして、二局目の一本場で、私はトビになる。


「あの~? お姉さん? トビを含むと三千円だけど、チップある?」


「え! ごめんなさい! 私、ちょっとお金をおろして来ますね!」


 ウソだろ? ネット麻雀十段の私が雀荘で負けた挙げ句に五百円の借金? くうーー! 悔しい!


 私は半泣きでお金をおろして負け分を支払い、今日のところは自宅に帰って枕を濡らした。


続く

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