「み」宮澤賢治(みやざわ けんじ)

●宮澤賢治(1896~1933)


岩手県花巻に生まれ、詩人、童話作家として知られる宮澤賢治。生前発表した詩集は『春と修羅』(1924)、童話集は『注文の多い料理店』(1924)。

地方在住の多くの詩人仲間と交流しながら教師、農村運動などを経て東北砕石工場の社員となり、「肥料の神様」の手腕で尽力しましたが、営業に奔走中、病に倒れそのまま生涯を終えました。


その晩年の東北砕石工場時代。定期的に仙台を訪れ、できれば仙台で自活したいとの希望も持っていたようですが現実は甘くなく、自嘲や愚痴らしき表現がその時期の手帳に見られたりします。

結局農村のためをうたいながら農村生活の現実に入りきれなかった、という一面もあったようです。しかしそれもわかるけれどお勤めしてたら愚痴くらい書きたくなりますよね、と思わないこともなく。

賢治の遺稿整理を手伝った吉田コトさんが赤坂憲雄先生との対談で、〈「農民を救うんだ」みたいなことは言ってたんだけど、実際に救われた人いないんだよ(笑)〉と語った上でもやはり賢治と作品に惹かれる気持ちを語っていますが、私もこんなことを言われてしまう賢治がダメっぽくて好きです。


本作品では〈宮澤先生〉として一行しか登場しませんが、仙台に定期的に仕事で来ており、文通している文学仲間もいましたので、カフェーコネコの前を通ることもあったでしょう。秀真くんにはちょっと会ったことがあり、噂はよく聞いている大先輩、だったかもしれません。


参考:『宮沢賢治全集 9 書簡』ちくま文庫(1995)

『宮澤賢治と東北砕石工場の人々』伊藤良治著 国文社(2005)

『宮澤賢治殺人事件』吉田司著 文春文庫(2002)

『月夜の蓄音機』吉田コト著 荒蝦夷(2008)

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