貯金が少ない

バブみ道日丿宮組

お題:死にぞこないの貯金 制限時間:15分

貯金が少ない

 人が死んでるのを見た。

 1人は主婦、そしてもう1人はサラリーマンの男。

「……」

 包丁でつついてみても反応はない。

 かわりに肉を侵食させる感触が返ってきた。

 これがかつての親というのだから、面白い。

 あれだけ文句を言って、あれだけ怒鳴ったってたのが今じゃだんまり。

 生臭い匂いは鼻につくけれど、静寂には抗えない。

 これで僕は自由になった。

 あとは……この死体をどうするかだ。

 特殊な業者に頼めば片付けてくれるかもしれないが、あいにくそんなアドレスは知らない。掲示板なんかでスレを建てれば、すぐに警察が駆けつけてくるに違いない。

 そもそもそれを依頼するための貯金がない。

 うまく死体をどうにかできれば、保険金が下りるかもしれない。

 考えろ……考えろ。

 思考がループする。

 結局のところ、誰かを犯人に置き換えればいいのだ。

 そうだ。強盗があったと連絡しよう。

 そうして、慌ててるように精神を操作する。

「はぁ……はぁ……はぁ……」

 息が荒くなる。

 大丈夫。バレはしない。

 直接の死因となった包丁は握ってしまった。返り血は、抱きしめたからついた。

 あとは誰がどうして、どうやって、ここに入って殺したかだ。とりあえず、警察に連絡してから決めよう。この心臓の高鳴りをまた作り出すのは億劫だ。

「あ、あの! は、母と、ち、父が、し、死んでます。どういうことですか!」

 警察に電話が繋がると、必死の様子で通報した。

 何秒か、何分か話すと、駆けつけてくれることになった。

「……ふぅ」

 第一条件はこれでクリアされた。

 あとは強盗が入ってきた条件を作ろう。

 ベランダに繋がってる窓を割るべきだろう。

 そう思い、ガムテープと包丁を持ってベランダに出て、窓にガムテープを鍵がついてくるところに接着し、包丁の後ろで殴りつけた。

 音はあまりしなかった。

 ここで誰かの指紋をつけられれば、良かったのだがそんな人はいない。

 誰か友人にお願いできればいいのだが、引きこもりには難しい話だ。

「……」

 さて、これで誰かが入ってきて、両親を殺したという状態にはなる。

 少し安心した。

 そして、また死体で遊びたい欲求がでてきた。

 両親であったモノに近づくと、ざくざくと包丁を突き刺した。

 最初にした頃と違って、あまり血はでなかった。

 びっしりと床が血で浸されてるのだから、でないものかもしれない。

「……ふぅ」

 ゆっくりと、座り込み警察が来るのを待つ。


 そうして、僕は逮捕された。

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貯金が少ない バブみ道日丿宮組 @hinomiyariri

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