第五話 誘い

 休日のお昼頃、俺がベッドに横になりスマホを弄っていると、いきなり誰かから電話がかかって来た。

 通話待機画面には姫野由愛、そう記されていた。

 連絡先を交換したとはいえ以来一度も連絡を取り合っていなかったのに、いきなり電話をかけられ不思議ながらも右耳にスマホを当て電話に出る。

『ごめん急に電話して、今大丈夫だった?』

 スマホからは確かに由愛本人と思われる声が聞こえてきた。

「まぁ大丈夫だが、なんかあったか?」

『今から一緒に遊ばない? 恋珀もいるんだけど』

「えー家出たくないんだけど」

 今は七月、もうすぐ夏休みも始まり外の気温は平均三十度を超えているというのにこの女は何を言っているのだろうか。

 こんな暑い中外にだたら確実に熱中症になるし、下手したらぶっ倒れる、俺はそんな身の危険を冒してでも行きたい所は無い。

『別に良いじゃないちょっとくらい。あんたの行きたい所行ってもいいからさ』

「行きたいところ行って良いって、予定決まって無いだけじゃないか?」

『いや、一応目星は付けてるけど、あんたの行きたい所あるならそっちでも良いかなーって。あんた普段家出ないし行きたい所とかあるかなって』

「いや、特に無いかな。てかこんな暑い中外出たくない。」

『ほんと引きこもり体質よね』

「引きこもりだからな。てか、女子二人で遊べばいいんじゃないか? 由愛だったら友達多いだろ俺と違て」

『誘える友達がいないからあんたを誘ってるのよ。ほら、恋珀って不登校だし学校で共通の知り合いなんてあんたくらいしかいないのよ』

「あー、なるほど。なんとなく理解したわ。」

『だからあんたを誘ったんだけど、まぁ嫌なら別に良いわ。無理に誘ってもアンタに気使わせるだけだと思うし』

 まぁ確かに女子二人の中に男子が一人とか完全荷物もちコースまっしぐらだとは思うが、友達がいないと言う理由で誘われるとなんというか、心が痛い。

 正直行きたくは無いのだかがここで断っても後で後悔する気がしたので承諾することにする。

「分かった。それじゃあ駅待ち合わせで大丈夫か?」

 俺は仕方なく立ち上がり準備を始める。

『え? 来てくれるの?』

「まぁ特別用事あったわけでも無いからな。迷惑なら行かないが」

『別に迷惑じゃないけど』

「そうか、それじゃあ三十分後に駅前で待ち合わせで」

『分かったわ。それじゃあ待ってるわね』

 由愛の返事と共に通話を終了させる。

 正直気が乗らないが、行かなくても家でゴロゴロしてるだけで特にする事も無いので、行くことにした。

 俺はクローゼットから適当に服を取り出し、駅へ向かうのだった。

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