灰色

紙吹雪のように灰が降る。

革命の名残に侘しさと虚しさを覚える。

僕は赤い空を見る。

雪が降りそうだ。

向こうの空が白い。

昔、僕は王宮を訪ねた。

弟が栄光を掴んだから。弟は戦死した。弟の代わりに名誉を預かる。

王座に座る王は死の匂いを漂わせていた。お付きのものたちは死の匂いに顔を歪ませてながらも王への使命を全うしていた。

王座に、今は誰もいない。

国は滅びたようなものだ。

アレは最後の王だ。

王が死んだあと、次の王を誰にするかで揉めた。

騒動が起きる。もみくちゃになる。その間に国民は王座を叩き割った。新しい王が権力者の間で決定したあと、新王は驚いた。王座がないのだから。

新王は即座に王座の作成を依頼したが、もう誰も王に権威を委ねないことは認識していた。王は存在するが、本当にただいるだけだ。

今、灰が降り積り王座のような形が出来上がっている。

其処には一人の灰の女が出来上がっている。

僕は女を見つめる。

儚い。

此れは奇跡だ。

僕は触れようとする。

触れれば崩れて女は形を失うのに。

僕は触れる。

深く指を入れる。

肺は横にスライドし崩れる。

女は姿を消した。

僕は自らを包む液体が弾けたように、奇妙な後悔を覚える。

真実の女が何処かにいるはずだ。

私は昔出逢ったことがある。

しかし、私は女を手放した。

だからこそ、今は何も見つめられない。

言葉にすることが億劫となる。

生きることが億劫になる。

灰色に染まる大地で如何にして僕は生きていくか。

いつもくだらないことを考えている。

ビューと風が鳴っている。

人も鳥も見当たらない。

灰の匂いしかしない。

みんな何処へ行ったのか。

寂しいのだ。僕は。

ゆっくり首を縦に振る。

僕は涙を流す。

寂しいのだ。

悲しいのだ。

あぁ。

あぁ。

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