閣下と爺や

@kajiman

第1話 閣下と爺や

閣下、戦争を行う上で最も重要な要素は何だと思われますか。


情報だろう。


それはどうして。


お前の問いで一番足りていないからだ。

相手も何も、前提となる条件が全く開示されていない。

そんな相手とどうやって戦う?


例えば、どんな相手も圧倒できる数の兵を用意すればどうでしょう。


否だ。


その理由は?


こちらも問おう。お前の求める答えは、ただ一度の戦いに勝つ方法か?

百の相手に万の兵を用意していては割に合わん。

そのような無駄を繰り返せば、国は滅びる。


では、百の敵兵を一番効率良く討つには、何人の兵を用意すれば良いでしょう。


情報。


では、二百人を用意して戦った場合、五十人の損耗があったとします。


なら三百でも用意しておけ。


三百では二十人の損耗が出たとしても?

例えば五百人いれば、損耗はゼロになるとしましょう。


それは相手が逃げるからだろう。

幾ら兵を多く集め、損耗を減らせたとしても、敵を減らせないなら意味がない。

例え戦えても、すぐに逃げられたら同じ。

五十人減らされたとして、相手を削り切れれば戦争はそこで終わる。

反対に、損耗がゼロでも相手が逃げ続ける限り戦争は終わらない。


左様ですか。


答えなど元よりないのだろうが。

練兵の差も士気も、指揮官の甲乙、置かれた状況すら分からない。

同数の兵力ですら戦いを避ける将もいるであろうし、戦わずとも時を稼げば勝ちの場合もある。

お前の問いはいつも情報が足りない。

態(わざ)とだろうが、毎回では馬鹿にされた気分になる。

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