ラブコメみたいな恋をしたい
水石イズミ
1章
プロローグ
俺は決して主人公では無かった。
基本的に作画すらまともにされないクラスのモブ。よくて主人公の友人C役とかだろう。
そもそもクラスの陰キャオタクに物語のスポットライトが当たるわけが無かったのだ。オタクの俺が美少女に告白された!?とか、ゲームで知り会った人が実はクラスの女子だった!とかはフィクションだけ。現実であるわけがない。
それでもラブコメアニメとかを見ると、胸にくるものがあった。彼らはあんなにも輝いているのに自分は何をしているんだ、と。
そして俺はそれに強い憧れを抱いた。ラブコメみたいな恋をしたい、と思った。
だから俺はそのために自分を一回殺したのだ。
表情、髪型、トークスキル、姿勢、感情、人間関係、その全てを一年かけてリア充のものへとトレースした。全てはラブコメみたいな恋をするために。
そして今やクラスのリア充だ。それも全て血も滲む努力によるもの。自分の行動力が我ながら恐ろしい。
ここ一年の辛い人生を急に振り返ったのにも理由がある。
俺は今から告白するのだ。
それと同時に俺は今から罪を犯す。法には裁かれないだろうが決して許されないであろう罪。
嘘告、と言えばいいのだろうか。他人の心を弄ぶ卑劣な行為。
今からする行為を俺は近い将来、後悔するのだろうか。
しかし、その答えがどうであれ現実世界は残酷だ。ゲームのように前のセーブデータに戻ってリセットすることは出来ない。いや、むしろそれがあるべき姿なのだろうか。ゲームのようにリセットなど出来てしまうのなら、リセットされる前の世界はどうなる。そっちの方がよっぽど残酷ではないか?
ヒロインと結ばれたら、それを放置して別のヒロインの攻略をする。それがゲームの残酷さでもあり醍醐味であるのだ。
ただ、俺は人生を一度リセットしている。今ここにいる自分は一年前の自分とは全く違う自分だ。
だから今からやることもその一環だと思えばいい。人生はやり直すことが出来ない。ただ、何も持たないものならルートは変えられる。今俺はその分岐点にいるだけなのだ。
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