白雪と兄

桐崎 春太郎

第1話

「ホワイトスノー?ホワイトスノー?どこなの?」

 そう甲高い声でホワイトスノーを探し回るのは母だった。私は、とっくに起きて着替えをして髪を整えていた。本当にホワイトスノーは駄目な子。美しくて愛らしいけどどこか抜けている。可哀想に、私が頑張らなければ。鏡に映る美しい私を見つめていた。マロンクリームのようになめらかな髪。天使の輪が見える。白くて美しい肌。そんな肌が引き立てるピンクの薄い唇。高い鼻。そして一段と際立つ青い瞳。私は世界で一番美しい。黒い髪で緑の瞳のホワイトスノーよりも美しい。兄として頑張って美しくなった。ホワイトスノーが駄目な子だから…。


 お母様は扉を開けた。何も言わずに。全く礼儀のない人、と思いながらお母様を見上げた。

「おはよう御座います、お母様。」

 私がそう、小鳥の鳴くような美しい声で言えばお母様は一度こちらを見た。でも、「おはよう。ホワイトスノー?どこなの?」とホワイトスノーのことばかり。仕方ない。ホワイトスノーが駄目な子だから。私が迷惑をかけないことをお母様はわかっているのだわ。そう思って再び鏡をも覗き込んだ。

 もっと美しくならなければ。



「おはよう!ホワイトスノー!」

 そういうお粗末な顔をした少女。ホワイトスノーは笑って「おはよう!エリザベート!」と言った。全く、よくあんな子と絡めるものだわ。そう思いながら服の裾を地面につかないように持ち上げた。

「ゲッ…またスノーリリーがいるよ。」

「最悪だわ。」

「スカートなんて履いちゃっ穿いちゃってお姫様かよ。」

 そう言う男子。とても醜い顔をした。私は顔を顰めながら無視をした。この服装がドレスに見えるのかしら?確かにドレスも素敵だけどこれはただの私服よ。なんて思いながら勉強を始めた。成績もホワイトスノーより上。本当にできた兄よね?でも、どうしてかしら、大人しか私を認めてくれない。父も、貴族の方も認めてくれるのに子供は私を嫌う。なんでなの?どうして勉強もできない美しくない妹の方が周りに気に入られるのかしら?やっぱり女の子だから?でも、私こんなに女の子らしくしているのに。わざわざドレスみたいの選んで、口調も一人称二人称三人称全部全部女の子らしくしたのに。

 美しいだけじゃ駄目なことぐらい、わかってるけど。


 私の相手をしてくれるのはいつだって貴方ね

「ローズベルト。」

「何?スノーリリー。」

 明るく笑ってそういった。私よりは美しくない。けど美しくて私の美を認め、愛してくれるローズベルト。彼は私の執事だ。でも、兄弟のような友人のような存在だ。

「紅茶を取ってきて頂戴。」

「もちろん!」

 彼は、彼だけは私を見捨てないわよね?

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

白雪と兄 桐崎 春太郎 @candyfish

★で称える

この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。

フォローしてこの作品の続きを読もう

この小説のおすすめレビューを見る

この小説のタグ