意思
各所に設置されたスピーカーが共鳴して正午を告げる音が輪唱しているようだ。転送装置は未だ止まらない。おかげで、総務の清水さんがかなり怒っていた。仕方ないだろう。緊急事態なんだから。
三日月が
【No.1224】がこの世に顕現してから30年は経過している。学生のときに読んだ『人喰本一覧』にも載っていた。最後にそれを開いたのは8年前。犠牲者の数は定かではないが、当時は180人前後が喰われていたはずである。そういえば、最新の情報は隣町の図書館から【No.1224】が廻ってきたときに200人とか言っていたような気がする。隣町では幸運にも犠牲者は出なかったが、
司書の女性陣からの差し入れのお菓子を片手に、各館から送られてきた調査報告や事故報告書に目を通す。30分間でわかったことは2つある。
そのいち、「本のイシ」はツユクサと仮称されている。誰が付けたのかわからないが、本人がそう名乗っているということは、おそらく潜本士の誰かがツユクサと呼び始めたのだろう。長い黒髪の女性の姿をしていて、耳飾りをつけているらしい。彼女は「人喰本」の「本のイシ」によく見られる特徴である「潜本士への干渉」を積極的に行うとのことである。「本」にはそれぞれ「イシ」が宿っているというが、それが何なのか、「本」はどこからやってくるかは未だにわからないという。ツユクサのイシは
そのに、これはおよそ10年前の記録から見られるのだが、「赤い髪の男」がいるらしい。彼は
とりあえず、この2つを三日月に連絡しないといけない。三日月の石の欠片を手のひらに乗せると、熱が石に吸い込まれていく。目を閉じると、三日月が誰かと話しているのが見える。黒い髪の女だ。いや、でもこれは……どういうシチュエーションなんだ。三日月が女に抱き着かれている。疑問がわく中で一つの答えが落ちてきた。まさか、いや、そんな―。
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