されど世界は

嘘

もうすぐ夜が明ける。

真っ黒な世界が、次第に明るみを帯び始め、また一日が始まろうとしてる。

私はこの世界が大嫌いだ。

でも同時に、この世界が大好きでもある。

『矛盾してる』なんて自分がよく分かっている。

この世界は嘘つきばかりだ。

みんな、自分が可愛くて仕方ないから、嘘で塗り固めた自分を周りに見せている。

嫌われないように って、必死に。

私は自分が大嫌いだ。

幼なじみは私が小学三年生の時に死んだ。

私の誕生日を祝うための道中で事故に遭った。

7月29日、この日は10年経った今でも、好きになれない。あの日私が誘ってなければ…

父親は私が中学1年生の時に死んだ。

癌だった。絵に描いたような仕事人間だった。

最期に「遊んであげられなくてごめんな」なんて言ってきた。そんなことはどうだってよかった。

生きてて欲しかった。

中学の親友は、いじめの末に死んだ。

葬儀でみんな泣いていた。

いじめてたくせに。いじめがあったことを見て見ぬふりしていたくせに。

……それは私も同じか。

19歳、好きな人ができた。

地元から上京して、誰を信じればいいのか分からず過ごしていた。

そんな時に出会った。

可愛くて、透き通るような声をしていて、髪が綺麗で、少し不器用なところもあって………とにかく大好きだった。

でも、ダメだった。手の届かない存在だった。

その子は、とても優しい子だった。

相談をしたら、ちゃんと目を見て話を聞いてくれた。

肯定はしつつも、否定もしてくれる。

くだらない話でバカ笑いしてくれたり、なんというか本当に優しい子。

そんな子も嘘をついていた。とても優しい嘘だった。

もう一度言おう。

この世界は嘘つきばかりだ。

みんな自分が可愛くて仕方ないから、自分を守ろうと必死になる。

そんなヤツらがごまんといる。

でも、優しい嘘を吐いてくれるひともいる。

私はこの世界が大嫌いだ。

汚いことばかりで、残酷なことばかりで、正直地獄だ。

でも、そんな残酷な世界にも、優しい人間がいることを知った。

この世界が私は大嫌いだ。だけど、この世界が私は大好きだ。

理不尽なことばかりだし、嘘つきばっかりだし、そんな世界で私は生きている。

世界は残酷だ、されど美しい。