魔法がとける前に

飯田橋諭

プロローグ

「お疲れ様でした」

僕は、コンビニのバイトが終わり徒歩で家に帰るところだ、

自分の小遣いは自分で稼げという家の方針でバイトをしている。

「今日は疲れたな・・・」

思わず声がでる。

はっとして辺りを見回す。

よかっただれもいない・・・

ふと、空を見上げると驚いたことが。

「え?」

女子が空を飛んでいる?

漫画やアニメじゃあるまいし、何かの見間違いだ。

もう一度空をみる。

「飛んでいる・・・」

たしかにそこには、スーパーヒーローが飛ぶように身体を水平にして飛んでいる。

じっと見つめていると、女子が気付いたのかこちらに向かって飛んでくる。

いや、なにこれ?逃げた方がいいのか??

でも僕の身体は緊張で動かない。


少し離れたところで降りた少女はこちらに向かってくる。

そして少女は口を開く、

「あれ?ユウトじゃないの?」

その声に聞き覚えがある。

そして僕の事を『吉岡佑都(よしおか ゆうと)』である事を認識している。

「君は誰だ?」

僕は聞く、

「私よわたし・・」

少女は街灯に近づき顔がはっきりと見えた。

「浅海さん?!」

そう、そこにはクラスメイトの『浅海香織(あさみ かおり)』が居た。

「浅海さん、今空飛んでいたよね?!」

すると浅海さんはため息をつき

「まさかクラスメイトにみつかるとはね・・・」

バツが悪い顔をする。

「なんで空を飛んでいるの?君は何者なの?僕はどうなっちゃうの?」

混乱して色んなことを聞く。すると浅海さんは、

「どうもしないわよ、私は魔法使いなの」


え?魔法使い??

「何を言ってるの?魔法使いなんて物語じゃあるまいし」

と言うと浅海さんは真剣な顔と落ち着いた声で、

「あのね、魔法使いは『居る』の確実に」

「そんなバカな・・・」

「大昔、魔法使いは普通に存在していたの、でもその魔法の力を悪用しようとした人間が現れた。このままだと魔法使いによって世界は終わってしまうと・・・」

僕は黙って聞いていた。

「それを阻止しようと、『大魔法使い様』が全ての力を使って世界の人間から『魔法使いの存在の記憶を消し去った』のよ」

「消し去った?」

「そう、魔法使いは人前で魔法を使う事を止めたの、忘れなかった人は少数、だれもその事を信じなかった、そのうち『魔法使いは物語の架空の存在』になったの」

そう言われて僕は気付いてしまった。

「でも僕、みちゃったんだけど・・・」

「そうなの、失敗しちゃったな。でもこれで終わり・・・」


浅海さんは右手から光の玉を作り、素早く僕のおでこに光を当てた

「ごめんね、今日の事は忘れてもらうわね」

身体が暖かい感じがしたと思ったらすぐに元に戻った。

・・・

・・・

・・・

あれ?

「浅海さん・・・僕忘れてないけど・・・」

「えっ?え???」

さっきまで落ち着いた声とは裏腹に明らかにあせっている。

彼女は光の玉を作り何度も僕のおでこに光を当てた。

しかし僕の記憶は消えなかった。

「なんでユウトは記憶が消えないの?」

「僕に言われても・・・」

「もしかして、ユウトは魔法が効かない人間?!」

「しらないよ・・・」

すると浅海さんが僕を指さして

「いい?この事は絶対に言わない事!もし言いまわしたら魔法以外の手を使ってユウトをどうにかするから!」

「どうにかって?!」

「じゃあ私は帰るから!いい?絶対に内緒だから!」

彼女は走って行った。

「空飛んで帰らないんだ・・・」

僕は走って行く彼女を見えなくなるまでじっと見つめていた。

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