敬称のアレ

 イロイロな作品で、敬称についてテキトーに扱っているのを見て、非常にモヤモヤしています。


 その前に、礼儀作法というのはなぜ発達したのかというところから、考察してみます。さてそれでは皆さん、何故に、挨拶や礼儀が必要であるかと考えたことはありますか。それは、そのコミュニティの一員であるというサインや符丁であるという事です。皆さんが所属しているコミュニティがありますよね。例えば、学校で名前や顔を知らなくても、「こんにちは」とか「ごきげんよう」とか「おはようございます」などの挨拶をしますよね。これが、私は悪い魔物じゃないから、警戒しないでねというサインになるわけです。私はこの地域(大きなコミュニティ)の最低限のルールを知っていますよという、自己アピールになるわけです。まあ、それを装って近づいてくる、悪い魔物もいるので、さらにお近づきになるためには、さらに上の段階である、その中の小集団独自の挨拶や礼儀が必要になってくる訳です。


 さて、絶対王政とか封建制度とかを考えてみましょう。現代の建前では人には上下はなく、全員平等なんだよと言われています。しかし、身分制度があって、王族、貴族、平民、農奴、奴隷など、人の扱いに上下がある世界では、その身分に所属する構成員である証明というのはどのように行われるのでしょうか。例えば、外国から来た人が、私は○○国の貴族ですので、この国でも貴族として扱ってねという主張をするとしましょう。表面的には○○国の政府が発行する身分証明書みたいなものを見せてもらって、国交があって事前の取り決めに従っていて不備が無ければ、とりあえずそのような待遇でお迎えします、となりますよね。それで、実際に個別にお付き合いしてもらう段になって重要なのは、礼儀作法です。貴族社会で通用する独自の礼儀作法が出来ていないと、最初の挨拶くらいで面会してもらえても、その後によほどのメリットが無い限り、相手にされなくなります。何故なら、仲間とみなされないからです。こいつは貴族と言っているけど、貴族社会の礼儀作法(しきたり)を知らないのだから、その振りをしている偽物だろうと判断される訳です。

 それでは何故、そんなにも礼儀作法に拘るのかと言いますと、第一に暗殺されない為です。身分に上下があって、上の身分ほどいろいろと持てる者(権力、利権、財産など)な訳です。それで、ターゲットが居なくなると自分がその後釜になれるとして、貴方はどうしますか。まあ、現代日本で教育を受けている場合には、人殺しはダメだよとか言って、如何するも何もというところでしょう。でも、病死に偽装できる方法で害することができて、あまり疑われないと分かっている場合にはどうしますか。すみません、話がそれました。極端に言えば、持てる者にとって、仲間のサインを知らない人間は、ならず者なんですよ、誰かが送り込んできた暗殺者かもしれないんですよ。だから、門前払いになるわけです。


 それではここで、前振りが長かったのですが、敬称について考え見ましょう。敬称をきちんと云えて挨拶できるという事は、相手が何者かを理解しているという事になります。そして、表面上は相手を敬っているという礼儀に則っているという事です。また、王族や貴族が何故に権威に拘るかというと、皆さんもご存じの通り身分に上下など無いと言う観点からすると、彼奴はなんで俺たちの上にいるって事になっているのかな、っていうのをとにかく偉いから偉いという事で、そういう社会を造った訳です。では、継続するにはどうすればいいのかというと、王族や貴族が偉いという事を刷り込めば良いのです。偉いから敬わなくてはいけない、敬っていることを言葉に出さなければいけない、それは特別な言葉を使わせればよい。その特別な言葉を言わない奴は反逆者として認定すればよいというわけです。王族や貴族はもちろんですが、関わりを持てる上流の平民は、反逆者にされたくないのでその特別な言葉を使うように、教養として強要されるのです。


 なので、上流階級にいる人たちが、国王を王様と口に出しているとか、違和感が半端ないのです。おぢさんは気になって気になってしょうがないのです。ちなみに、その国には王は一人しかいないので、国王を話題にする場合には、「陛下」だけで他国の王の場合には名前か国名のしたに「王陛下」とすると良いと思います。教養のある人が、国王に向かって「王様」とか言ったら無礼打ちの対象か忠誠を疑われますので、気を付けましょう。王妃や王子、王女は複数いることもあるので、名前の下に「殿下」でOKです。

 ちなみに4,000年の歴史を持つ中国では、「皇帝陛下」が一番上で爵位として「王」があるので、陛下になりません。この場合、皇族なら「王殿下」、皇族でなければ「王閣下」なのかな。

 現代日本では、法律で「天皇陛下、皇后陛下、皇太后陛下、太皇太后陛下、上皇陛下」で。皇族方は「殿下」と制定されています。


余談ですが、言語が発達していないのでそういった敬称が無いので、「王様」というのが最上級の敬称であるなら、それはそれでありかと思いますが、為政者は箔をつけることを是としますので、たぶん自分の呼び名という敬称を造ると思います。俺だけが、その呼び名で呼ばれる偉い人ってね。

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