　薬師丸ひろ子が『セーラー服と機関銃』の後に休業したとき、ポスト薬師丸ひろ子を求めて（実も蓋もないが、『バラエティ』＊にそう明記してある）、「角川映画大型新人女優公募」が行なわれた。すごいネーミングだが、角川春樹一流の、派手さだ。

　優勝したのが、一六歳の渡辺典子。特別賞に選ばれたのが、一四歳の原田知世だった。なぜ特別賞かというと、年齢が応募基準に満たなかったからである。このコンテストの優勝者は『伊賀忍法帖』に出ることになっていて、確かに一四歳ではどうしようもない役なのだ。原田知世は、テレビの『セーラー服と機関銃』、『ねらわれた学園』に出演する。

　恥をさらすと、私はこの時、原田知世にほとんど興味がなかったし、今になって校くことになるとも思っていなかった。よって、知識がまるでない。テレビの『ねらわれた学園』を見てやっと、これはすごいかも、と思ったぐらいだ。好みのタイプの顔ではなかったのだ。

　それよりテレビ版『ねらわれた学園』では、敵役の高見沢みちるを演じた伊藤かずえが気になった。きりっとした風貌であり、後に大映テレビ作品で大活躍する、少女ヒーローには欠かせない女優だ。ちなみに伊藤かずえの出世作は、映画『セーラー服と機関銃』の併映作品『燃える勇者』である（その前に、二、三の出演作がある）。伊藤かずえについては、後でみっちり語ることになる。

　しかし、それ以上に惹かれたのは、伊藤かずえの部下になっている西沢響子こと麻生えりかだった。額が広く、理知的な顔立ちなのである。やや西洋的でもある。

　時間が後先になるが、この麻生えりかは、森田芳光監督の劇場デビュー作、『の・ようなもの』（八一）で準主役の由実を演じている。売れない落語家・しん魚（読みは「しんとと」・伊藤克信）のガールフレンドの女子高生で、しん魚は彼女の家へ遊びに行くのだが、父親（将棋棋士の芹沢博文）にさんざんにへこまされて、終電が終わった夜明けの街を歩いて帰る。

　道中づけ（★注）、とも呼ばれる長いモノローグに乗せて、夜明けの谷中から浅草の風景が映し出される長いシーンは、日本映画史に残るべきものだが、由実は、それをスクータで追いかけていく。ポニーテールがよく似合う、心に残る少女だった。近年になっても朝のテレビ小説『カーネーション』など、主に関西制作のドラマなどに出演している。

　話を戻して、テレビの『ねらわれた学園』は、ドラマとバラエティの融合した『翔んだ』シリーズの系譜を継いではいるが、最後にはピュアな青春物語として、感動的に終わる。この作品、落ちが命だし、ＣＳなどで見られるかもしれない、とは思うが、幻の作品に終わらないという保証はどこにもないので、記しておく。まずい、と思った方は飛ばしていただきたい。

　超能力が発現した楠本和美（原田）によって、未来から歴史を変えに来た未来人・京極（本田恭章）は、計画をあきらめ、未来へ帰ることにする。ただ、彼は和美に惹かれており、一緒に連れ帰ろうとする。和美は、この時代を離れる気はない。一方、現在の世界で京極を支えた高見沢みちるは、自分こそが京極と一緒に未来へ行きたい、と願う。そこで、和美とみちるは話し合い、互いの精神を交換する。即ち、和美の肉体を持つみちるが京極について行き、みちるの肉体を持つ和美が、現代に残るのだ。

　京極を巡る三角関係が、こんな形で解決されるとは。私は驚いた。

　ちなみに『ねらわれた学園』は、ここで紹介した映画とドラマ以外に、ＮＨＫ少年ドラマシリーズ（『未来からの挑戦』）を初めとするいくつものバージョンがある（第三章）。

　その他にも、イベントやＣＭで原田知世人気は、すでにあった……ようだ。記憶がないのがほんとに恥ずかしいのだが、興味がなかったものはしかたがない。

　従って、今や少女映像ファンのバイブルとも言える『時をかける少女』を観に行ったのも、角川映画で大林宣彦監督だったから。それだけだったのだ。

＊『バラエティ』――角川校店が出していた映画雑誌。当然かもしれないが、角川映画の宣伝媒体になった。

＊道中づけ――森田監督のシナリオによれば、「次々に地名を言っていく落語の技法。例・志ん生の〝こがねもち〟等」とある。