コオリノ怪奇譚
コオリノ
第1話初めての心霊体験
私が初めて体験した心霊体験について語りましょうか。
全てはここから狂い始めたのかもしれません。
これは私、コオリノがまだ十歳の頃に体験した話です。
当時、私には大好きな叔父がいました。
叔父はタクシーの運転手をしていまして、よくタクシーに纏わる怖い話なんかを聞かせてくれたんです。
私はそれが聞きたくて、よく理由をつけては叔父の家に泊まりに行ったものです。
ある日いつもの様に叔父の家に泊まった時でした。
叔父の部屋で隣に布団を敷いて寝る準備をしていました。
叔父はいつも帰るのが遅く、帰ってくると風呂に入り、そのまま直ぐに寝てしまうという人でした。
その日も遅くに帰って来て風呂に入り、寝室にやって来ました。
狸寝入りしている私に直ぐに気が付き、
「なんだ、また怖い話を聞きに来たのか?」
と、寝たフリをしていた私に話しかけてきました。
「うん……何か聞かせて……?」
そうやって甘えると、叔父は直ぐに顔をほころばせながら、得意げに怖い話を始めるんです。
子供ながらに叔父ってチョロい、何て思いつつ、叔父の怖い話に胸踊らせていました。
その日はいつもより長く怖い話をしてくれました。
二時間位立ったでしょうか。
もう寝ようと思い、叔父に、今日はもう寝るねと告げた時です。
「いや、まだあるから聞け」
と言ってきたんです。
何か言い方に違和感を感じつつ、私はうん、と言って話を聞く事にしました。
しばらく話を聞き、タイミングを見計らって、今日はもう寝るね、と告げると、
「ダメだ、寝るな。もっと聞け」
少し乱暴な言い方で言ってきたんです。
やっぱりどこかいつもと変でした。
私が黙っていると、叔父はお構い無しに話を続けます。
しばらくし、もう寝てもいい?と私が聞くと、
「ダメだ、聞くんだ」
またもや乱暴な言い方で話を続けようとしてきたんです。
段々と怖くなってきた私は、トイレに行きたいと言って起き上がり、部屋の電気を点けようとしました、すると、
「やめろ!」
叔父の叫び声が部屋に響き、私は驚いて部屋を飛び出してしまいました。
騒ぎに駆けつけた叔父のお姉さんが起きてきて、廊下で震える私にどうしたのかと聞いてきました。
私が一連の流れをお姉さんに話すと
「何言ってるのコオリノちゃん、弟はまだ帰って来てないわよ?」
唖然としてしまいました。
じゃあさっきまで私に怖い話を聞かせてくれた人は?
あれは誰なの?
確かに叔父の声だった。
いつもの叔父だった、途中までは……。
次の日。
叔父が仕事中、タクシー強盗に遭遇し亡くなった事を、泣きじゃくる叔父のお姉さんから聞かされました。
ちなみに犯人は直ぐに捕まったそうです。
以来、私は親戚中から奇異の目で見られるようになり、頭のおかしな子だ、病気だと言われ今日に至ります。
私が怪談を書くという事は、それだけで一族の汚名なのだそうです。
まあそうでしょうね。私がこれまでに体験した事は、どれも非現実的な事が多くありましたから。
それを一族が認めるということは、非現実的な世界を肯定する事になります。
これからも私は、一族から忌み嫌われ続けるのでしょうね。
この世在らざる者を否定する為に……。
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