指輪

指輪が欲しいと キミに言われて

俺は 途方にくれたんだ

あれはたしか 数年前の年末近く


だって俺には 金もないし

キミを幸せにする 権利もない

あるのはただ 気持ちだけで


一緒に行った店の前で

どうしていいか分からずに

木偶の坊みたいに 突っ立って


楽しそうな キミの顔を

嬉しそうな キミの顔を

俺はただ 眺めていたんだ


右手の薬指に収まった指輪は

キミらしいシンプルな指輪

値段の方も 実にシンプルで


それでもキミは

嬉しそうに笑って

幸せなそうに笑って

ありがとうって 言ったね


俺 頑張るから

こんな俺といてくれる

キミのために


いつか左手の薬指に

光輝く指輪を贈れるように

キミを幸せにできるように


そんな男に絶対なるからと

照れたようなキミの笑顔に

俺は強く誓ったんだ


そんな男に なれてるだろうか


不安を胸に 小箱を握る

指輪の入った 小さな小箱

キミの笑顔を 思いながら

幸せな笑顔を 思いながら

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