第15話 アユムの気持ち
その夜の結果も散々だった。
やっぱりどん兵衛は自ら敵の前に出ていきゲームオーバーになったし、アユム達は出来るだけの奮闘をしたものの、結局銃撃戦で敗れた。
くそっ!
『Gun's World online』の世界から戻った時、彼は自室で放心状態になっていた。
「アユム〜?アユムー!お風呂沸いたわよー!」
下の階から親が呼んでいるのが聞こえても、アユムは放心状態のままであった。
くそ!
知らぬ間に、アユムの目からは涙がこぼれ落ちていた。
「くそ、くそ!くそ!!」
たかがゲームのはずだったのに。なんでこんなに悔しいんだよ!
「なぁ、アリサ。」
「なんよ?」
いつものように、アリサはアユムの隣に座り、焼きそばパンを食べていた。
「オレらのパーティさ、もし今週中に1キルも出来なかったらゲームに参加出来なくなるんだって。担任に言われた。」
アユムは別に何でもない事のように言った。
「まぁ、それでもいいのかもだけどな。ほら、最近どん兵衛のやつ、やる気ないじゃん?それにレナも部活も勉強も忙しいっぽいし、アリサだってさ。オレのわがままに付き合わせちゃってるわけだし、」
「よくないよ。」
アリサは言った。
「へ?」
「何言ってるの、アユム。良くなんかないよ。」
アリサはいつになく真剣な表情をこちらに向けて言った。それだけではない。アリサはどことなく悲しげな表情をしていた。
「アユムは何のためにここまでゲームを続けてきたのさ?」
「それは‥‥、レナにいいとこ見せたかったってのがほんとのところだ。」
アユムは正直に告白した。
「それで、レナにいいとこ見せられたの?」
アユムはそう聞かれて、うーんと考える。
「見せられてはないな。でもさ、この間レナがオレの事すごい人だって言ってくれたんだ。正直オレは自分の事これっぽっちもすごい人だなんて思っちゃいないんだけどさ。でもゲームに一生懸命になってるのがすごいって。」
「うん。それで?」
「オレ、そう言ってもらえてすげぇ嬉しくてさ。だから、もしオレが一生懸命やってダメだったら、それはしょうがないのかなって。FPSがなかったらオレはレナとこんなに仲良くなれてなかったし、レナがオレの事見ててくれたなら、それで十分だなって。」
そこでアリサは不意に立ち上がった。
あまりに急な行動にアユムは驚く。
「いっけない!次の授業英語だっけ?私今日当たる日だ!宿題ちゃんとやっとかないと!」
そう言ってアリサは走り出す。
「え、ちょっと待てって」
アユムは戸惑っていた。
「ごめーん、また後でね。」
そう言うとアリサはアユムに背を向けて駆け出した。
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