第13話 迷子になりました
「あれ……? ここどこ?」
レオと話し合い(喧嘩)をして家に居たくなかったので、学園の図書館に本を借りにきました。
その後本を読める場所を探していたら、迷子になってしまいました……
「なんでこんなに広いの……」
歩き疲れて、目に入ってきたガゼボまでなんとか辿り着き、腰掛けました
「森の中にいるみたい」
草木が生い茂っている場所で心細くなってきました。レオと喧嘩した事と迷い込んだ事による不安で頭がいっぱいでした
するとガサガサと葉の擦れる音が聞こえてきます。なにか……いる?
葉の擦れる音がどんどん近づいてきて、人影が確認されて、思わず
「きゃっ」
っと声を上げてしまいました。口を押さえて身体を縮める形で人影を見ると目が合いました。
「こんなところで何をしている?」
艶やかな黒髪に、まるで水晶のように美しい黄金の瞳の男子生徒でした
「あんたに聞いてるんだけど?」
ハッとして
「迷子になってしまいました」
恥ずかしさを抑えきれませんでした。この歳で学園内で迷子になるなんて……
羞恥心から顔を下に向けました
「なんで、学園で迷子に……新入生か?」
呆れたような言い方をされてしまいました
「はい、すみません」
多分顔は赤くなっています
「今日は休みなのにわざわざ図書館に?」
チラリと横に置いた本を目にしました
「はい、本を読める場所を探して歩いていたらここに辿り着いてしまいました」
新入生と聞いてくるところから、上級生である事が分かりました。少し低めの声を聞いてくると落ち着いてきました
「なんで泣いてるんだ?」
頬に涙が伝いました
「私なんで? そんなつもりないのに」
ハラハラと涙が溢れてきました。
迷った場所で一人になって心細かった所に、誰かに声をかけてもらえた事で安心したのだと思います
「ほら、拭いとけ」
少しぶっきらぼうにハンカチを渡されました。
急いで家を出てきたので、ハンカチを忘れてきてしまいました。淑女としては失格です
「ありがとうございます。お借りします」
ふわっとハンカチからミントの香りがした。その香りで気持ちが落ち着いてきました
男子生徒は、私が落ち着くまでその場で待ってくれていました
「落ち着いたか?」
「はい」
気持ちが落ち着くと、泣いている姿を見られた事により益々気まずくなってしまった
「立てるか?図書館まで送って行くよ」
「え! 良いのですか? こちらに来たということは何か用事があったんじゃ?」
「……避難かな? ここは静かであまり人が来ないから気に入っているんだ」
確かに人は来ない感じがした。
でも改めて辺りを見回すと、森林の中にいるようで落ち着く場所だと感じた。
サワサワと風が吹くたびに心地の良い葉が擦れる音、風の動きが感じられた
「良い隠れ場所ですね」
「さっきまで泣いていたやつが言うセリフではないと思うが?」
呆れた口調だった
「近道するが良いか?」
「はい」
舗装された道ではなく、植木の間を通るルートだった。
「ほら、あそこが図書館」
「こんな近くだったんですね……いっぱい歩いたのに」
「君が歩いてきたルートは散策コースだ。わざわざあの道を通って、あそこに行こうとは誰も思わない。何があるわけではない。もし来ても暇なやつだろうな」
結構いい場所だと思ったんだけど
「あの場所が好きでよくここを抜けて行くんだ」
「すみません。お邪魔してしまって」
「別に誰の場所でもない。もし辿りつけるならまた来るといい」
そう言った男子生徒は私の近くにより、髪の毛についた葉っぱを取ってくれた。
「あの、ハンカチを洗ってお返しに来ます」
「べつにいいよ。ハンカチの一枚くらい」
「いえ。お返しします。お名前……教えてください。私はセイラと申します」
頭を下げてお辞儀する形になった
「ウィルベルト、この学園の二年だ」
「ウィルベルト様、ありがとうございました。それではまた」
ペコリと軽くお辞儀して、両手で本を抱きしめ家路につく
良い人だったな、ウィルベルト様か……
二年生ということはレオと同じ学年だ
あっ……。レオ怒ってるかな
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