第12話 初めて喧嘩をしました

 おばさまから手紙を貰いました。


【セイラちゃん、元気にしていますか?

学園から手紙が届きました。レオの成績が下がったようで、このままでは落第の可能性もあると言われました。レオの学園生活はどう? 手紙を書いても返事がないから心配しています。セイラちゃんも忙しいと思うけれど、レオの事よろしくね】



 レオの成績が悪いだなんて! 信じられませんでした。

 領地で過ごしていた時は勉強が好きで、領地経営について学園で学んでくると言っていました。



 レオが落第寸前だなんて……



******



 馬車を降りて、校舎に向かって歩いていると、学園の寮の方向からレオが歩いて来ました



「セイラ、おはよう。なんか久しぶりだな」

 少し気まずそうに声をかけられました


「うん。久しぶりだね」

 話すことがあるのに何故か切り出せないまま数秒……



「「あの」さ」


「「え?」」

 同時に声を上げました



「ごめん、レオから言って」


「あぁ、っと……。次の、休み屋敷に行っていいか?」


「うん」


「じゃあまたな」


「うん、待ってるね」



 レオとの会話は数分で誰にも見られる事はなかった



******




「いらっしゃい、レオ」


「悪い。遅くなった、これ」

 お菓子を買って来てくれたようだ



「ありがとう」



 応接室にレオを通した。 



 

 今回はお菓子を作らなかった。

 レオはお気に召さないから。この前はお茶も残していた。

 ハーブティーは口に合わなくなったみたいなので、メイドにコーヒーを淹れてもらった



「セイラはコーヒーじゃないんだな」

 レオはコーヒーを口にして言った


「苦いからあまり好きじゃないの」


「セイラはお子様だな、この苦味が良いんだけど」



 好みがあるんだもん。コーヒーの苦味にはまだ慣れないけれど、コーヒーフレーバーは嫌いじゃない。

 お茶会でいただいたお菓子はおいしかったから



「ねぇ、レオ、おばさまにちゃんと手紙の返事を書いてる?とても心配をされているのよ」


「はぁ、セイラも説教か? やめてくれよ」



 心配している事をレオは説教と捉えるの? でも言わなきゃ……




「落第しそうってどう言うこと? 勉強好きだったのに」



「学園に来て思わないか? 上には上がいるって。どうせ勉強しても卒業後は田舎に帰って男爵領を継ぐ。それだけだ、王都の近くに領地がある奴らが羨ましいよ。領地に帰っても何にもないんだ」


 

「だから勉強をやめたの? 領地経営はどうするの?」


「なんとかなるよ。元々頭は良いんだから、落第しなけりゃ良い」



「だからって遊んでばかりじゃ、」


「別に浮気をしているわけではない。

 ただカフェに行ったりイベントに行ったりしているだけだよ、あいつらが誘って来るからそれに応じているだけだよ。俺から誘っているわけではない。 それに……

 学生の間しか遊べないんだから、今を楽しんでいる、それだけだ。セイラもしかしてヤキモチを妬いてるのか?」


「レオが遊んでいたって、なんだっていい。でもおばさまを心配させたままじゃダメでしょ! ちゃんとしてよ!」



「ちゃんとするよ、卒業後は。俺はセイラとも結婚する。俺の将来はもう決まっているんだ。女の子と遊んでいるけど、ここ王都では普通のことなんだよ、田舎とは見解が異なる、わかってくれ」


「そんなのわかんない! そんなのが常識なら王都になんて来るんじゃなかった」




「セイラはモテるんだろ? 告白されたって聞いた。婚約者がいながら隙があるから告白なんてされるんだ。悪い気はしてないんだろ? それにセイラは都会にはいないタイプだから物珍しいだけだ。セイラの友達は都会のご令嬢だろ? 垢抜けない田舎娘が珍しいから、からかわれてないか、心ぱ」



「帰って!」


「は?」




「そんなレオ知らない! 自分勝手なことばっかり! 私の友達を悪く言わないで!」


「田舎の子爵家の令嬢だから物珍しいに決まってるだろ? 明らかに都会の令嬢で上位貴族が本気でおまえと仲良くしてくれているとでも思っているのか?」


「フローラ様はそんな方じゃない!」



 初めてレオに怒りをぶつけた



「女の子と遊びたいのなら好きにすれば良いわ。だから私の交友関係に口出しをしないで!」


「少しモテるからって調子に乗ってるんじゃないのか?」



「レオがヤキモチを妬いているんじゃないの?」


「おまえも好きにしろ、俺に構うな!」



「……おばさまに連絡して、それと問題を起こさないで! それだけ約束してくれたらレオに構わないから!」


「分かった。言いたい事はそれだけか?」


「帰ってくれる? もう話す事ないから」





「……じゃあな」










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