第6話 セイラが来ていたとは

 アイリに連れて行かれてセイラとは結局話が出来なかった。


 ユベール兄さんもいたから、流石にまずいな。近いうちに謝罪に行くとするか。

 そういえばセイラや母さんから手紙が来ていた。

 読まずに増えていく手紙を横目に見た



 セイラの手紙には近況報告が書かれていた。返事を書いていないのに、律儀に手紙を寄越すセイラは相変わらずだと思った。

 心配するなと言う方が無理だろうな




 夕飯のために食堂へと行った。友人達が場所を確保してくれていた。


「レオ! 聞いたぞ婚約者が今日来たんだって?」

「こいつらに聞いたがすごい可愛いらしいな」


「ん? まぁな。」


「なんだよ! モテる男は言う事が違うな」


「そんなんじゃないよ」

 


 たしかにセイラは可愛いが、垢抜けない田舎娘だ。都会の女の子とは違う。今日改めて思った。

 セイラのことは変わらず好きだけど、今は好きにさせて欲しいと思った



「レオ、こんなこと言うのもなんだけど、いい加減にしておけよ。セイラちゃんが悲しむ姿は見たくない」


「ん、分かってる」


「おい! 聞いてるのか?」


「俺とセイラの問題に口を挟むな、セイラのことを馴れ馴れしく呼ぶのもやめてくれ」



 セイラの手紙を全部読んだ。


 そうか四日も前に着いていたのか、これは悪いことをした



 セイラの顔を見にいくか……。



 【明後日会いにいくから時間を空けて欲しい】と手紙を書いて出した。


 王都の屋敷にいるセイラからはすぐに返事が届いた



【お待ちしています】


 文章に素っ気なさを感じたが、仕方がない事だった。今まで手紙を読まずに放置していたのだから



 ******



 謝罪の意味も込めて花束を用意した。屋敷に着くとセイラが出迎えてくれた


「いらっしゃい、レオ」


「うん、会いに来るのが遅れてごめん。これ……」

 黄色いバラの花束を渡した


 セイラは受け取るのを戸惑っていた。


 その意味を後で知ったのだが、なんてことをしたのだろう。黄色いバラの花言葉


【愛情の薄らぎ】【友情】だと知った



 パッと目に入ったのが黄色いバラの花だった。

 セイラを連想させるのはピンクか白なのに何故か黄色が目に入ったんだ



 ******


「これセイラが作ったのか?」


 庭にテーブルが用意されて、焼き菓子が並べられていた


「うん。レオ好きだったでしょ?」


「街に出れば、いつでもいろんな種類のものが手に入る。わざわざセイラが時間をかけて作る必要はないよ」


 セイラの事を思って言った言葉だった。

 作る時間が勿体ない。買った方が早いし、その分自分の時間になるんだ


「うん、そうだね」


 寂しそうにセイラは答えた


「ごめん、手紙読んだよ。返事を返さなくて悪かった」



 セイラが淹れてくれたハーブティーに口をつけたが味がしなかった。 

 最近王都ではコーヒーが流行っているから、苦みに舌が慣れてしまったのかもしれない


「おばさまが心配していたから、返事を書いて差し上げて」


「ん。そうだな、書くよ」


 久しぶりにセイラに会ったのに話す事がなかった。

 一年前まではセイラと過ごす時間は何事にも変えられなかったのに、居心地が悪いような気がした。



「セイラは相変わらずだな。今度街に買い物へ行こうか? 流行りの店へ連れて行くよ」


「レオは……変わったね。忙しいのに今日は来てくれてありがとう」


「あ、あぁ、それは気にしなくて良いんだけど」


「話はそれだけ?」


「あ、うん。まぁ。セイラが王都に来たから会いに来た……婚約しているんだし」


「そう。分かった。忙しいなら無理しないで」


 帰れと言う雰囲気だろうか……。セイラは何に怒っているのだろうか、こんなセイラを見たことはなかった。いつも笑顔でにこにことしていたから。今は息が詰まる思いだ


「また、来るよ」


「うん。でも忙しいんでしょ? 無理しないで」


「学園でも会えるだろう?」


「そうだね」





 やっぱりセイラの様子がおかしい


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