第50話 図書館にて
アルは放課後、よく学校の図書室を利用していた。
魔術にかんする記述を調べるためだ。
いろいろな本を読めば、もしかしたらアルの身体に魔力を宿す方法が見つかるかもしれない。
学校の図書館には数えきれないほどの魔法の専門書があり、国内でも有数の蔵書数を誇る。
これこそがまさに、アルがこの学校に入学した理由でもあった。
「うーん、今日も収穫はなしか……」
アルがお目当ての本を見つけられずに、うなだれていると、教頭先生が図書館に現れた。
キール教頭――アルは彼をよく思っていなかった。彼はアルに対して、なにかと意地悪なのだ。
今日も教頭がわざわざこんなところまでやって来たのにはなにか理由があるに違いない。と思った。
そしてその嫌な予感は的中する。
「あー……アル・バーナモントくん? ちょっといいかな……?」
「はい?」
教頭は、アルを見つけるや否や、声をかけてきた。
そしてアルを別室へと案内する。
「先生、いったいなんのようなのでしょう? 僕はただ図書室で調べものをしていただけです。呼び出しをうけるようないわれはありませんよ」
「それがだね、アルくん。最近きみは図書室に入り浸っているようだがね?」
教頭はもったいぶって話した。
はやく本題に入らないものだからアルもこれはなにかあるなと感づく。
「それがなんだというのですか?」
「最近、図書室の本がたびたび紛失しているのだよ……。それも魔力に関する記述のあるものばかり……。なにか知らないかな……?」
教頭は眼鏡をくいっと指で押し上げ、上目づかいでアルを睨む。
「いえ、とくには」
「おやあ? それはおかしいな。どれも君の名前で貸し出しカードが押されているんだけどねぇ? それとも何か? 君が借りたあと、その本たちがかってにどこかにいったとでも言うのかな?」
「はい? 僕は図書室で読んでるだけで、一度も借りたことなどはありませんけど?」
アルはなんのことかわからなくて混乱する。教頭の目的はいったいなんなのだろう。
「嘘を言うんじゃない! ここに証拠だってあるんだぞ!」
教頭はアルの名前が入った貸出カードを机に叩きつける。
だがアルはそんなカードを書いた覚えはない。
「はあ……」
「それに、街の古本屋には、君が借りたのとおなじ本が売りにだされていた! これでも言い逃れるつもりかな? 関係がないとは言わせないぞ!」
(嵌められたのか……?)
「よって、君は当分の間、図書館への立ち入りを禁止する」
「そんなバカな!」
その後もアルが抗議をしつづけるも、教頭は聞く耳をもたない。
アルの魔力研究の手段は、絶たれてしまった。
「くそう……どうすればいいんだ? これじゃあ入学した意味がないじゃないか」
アルは帰り道、一人うなだれた。
◇
校長と教頭は、校長室にて邪悪な笑みを浮かべる。
「ふっふっふ、アル・バーナモントへは圧力をかけておきました。これでヤツは魔力の研究ができません。自主退学するのも時間の問題でしょうな」
「教頭、よくやってくれた。あとはグリシャをAクラスに戻せば、それで理事長の気もおさまるだろう」
校長と教頭は、その後自分たちの身におこる災害を知らずに、無邪気にほくそ笑むのであった。
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