眼鏡を以て天を窺う

@yatumi

本文

"眼鏡"

それは多くの現代人に欠かせません。


今日もまた、僕は目覚めました。

ベッドの上です。

ぬあぁ~と重苦しく、気怠げな声を出した後にすることは、まず第一に眼鏡を探すことです。


付けたまま寝る習慣はないので、大体ベッドの上、隣にあります。

それを片手で取り、モダンと言われる耳掛けの先が、目に刺さらないように瞼を閉じ、ゆっくりと眼鏡をかけます。

すちゃ、っと。


そうすれば霞がかかった風景が澄んで、世界の輪郭がはっきりと認識できるようになります。


またある日、いつものようにすちゃっ、と眼鏡をかけます。

その日は土曜日。とても暇な朝でした。


壁に縋って、眼鏡を30センチほど離すと、数メートル先のエアコンがレンズを通さずそのままと、右と左のレンズからで合計三つに見えました。


ふいぃ~と大きな欠伸をします。


ゆっくりと流れる朝の時間。

まったりと眼鏡に思いを馳せてみました。


眼鏡って、家にあるはめ込み窓によく似てるなぁ~、と。


透明な何かが、多くは何かの枠に収まっていて、人はそれを通して世界を見ます。

瞳とレンズの距離はわずか1センチほど。

大人でもこの距離は1センチなのに、これじゃあまるで小さな子供が、家にあるはめ込み窓に張り付いて、食い入るように外の景色を見ているようです。


その窓のほかに、外の景色が見えるところは家の中にありません。

窓から離れれば、どんどん景色が狭まって、

窓が見えなくなったら、あるのは部屋の明かりだけ。

その子には景色が見えません。


その窓は時々汚れます。

窓から離れて、ふきふき、ふきふき。

そうしてまた窓から外を覗けば、なんだか新鮮な感じ。


またその窓は、時が経てば古くなります。

そんな時には窓を思い切って取り替えて、その後にどうかな?と最初に覗く瞬間にはちょっと感動。


なんとまぁ、今までより世界がくっきりと鮮明に見えるではないですか。


そんな眼鏡を作り直したときのことを思い出しながら、レンズを拭き終え、またすちゃっと眼鏡をかけました。


今日の朝ご飯は、何にしましょうか?




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