アキバスマイル! -オタクが日帰りで秋葉原を救ってくる話-
タトネ
1.秋葉原にやってきた!
ついに来たぞ。秋葉原。オタクの聖地。
今日は僕が推していたアイドル、トライアンクルプリンセスのラストライブが秋葉原で行われる。
そう、ラストライブなのだ。
僕みたいな弱小オタクの推し力では、彼女たちを救うことは出来なかった。でも、僕は何度も彼女たちの頑張る姿に救われてきた。
だから、せめて最後だけでもと意を決して、秋葉原まで遠い道のりを経てやってきたのだ。
「見たことあるぞ……レディオ会館!」
改修が行われているため、アニメで見た時とは異なる外観になってはいるが、紛れもなくレディオ会館である。
普通のビジネスマンのような服装をしている人から、コスプレをしている人まで、さまざまな人が道を歩いている。これが秋葉原なのか。凄え!
しかし、どのコスプレも見覚えのないキャラクターばかりだ。アニメは毎シーズン10作は欠かさずに見てるし、3話までは20作確認している。そんな僕が知らないキャラクターだらけというのも、いささか不自然に思える。
そう、少し考え込んでいたら、コスプレ少女の一人が近づいてきて僕の顔を覗き込んでくる。
なんだろう、顔に何かついているのだろうか? 目線を合わせるのも気恥ずかしいので目線を逸らしつつ、チラリと横目で少女の顔を確認する。
かわいい。文句なしの美少女だ。クリッとした黒目の大きい瞳に、少し栗色がかったツーサイドアップ。肩が露出している妖精のようなコスプレ衣装もよく似合っていて、まるで本物の妖精のようだ。
だが、明らかに僕の知り合いでない。
引き続き僕を見つづける少女に対し、どうしたものかと迷っていると
「キミ……私が見えてるの?」
「へっ?」
見えてる?いや、見えてるよ。当たり前だろう。
「声も……聞こえてるのよね?」
「え……あ、ああ」
新手の勧誘だろうか。しかし、こんな美少女になら騙されても……
と、少し警戒したような僕の態度に気づいたのか
「ああ、ごめんね!私たちが見える人に会うのが久々だったから」
私たちが見える人?何を言っているんだ?
「えーと、そう。私たちは普通の人には見えないの」
「あの、一体何を言って……」
僕の言葉を待たずに、彼女はとてとてと歩いていき、一人のサラリーマンっぽいスーツの男性の前に立つと、あろうことかスカートをたくし上げた……!!
「今あなた、私のパンツ見たわね? 訴えてやるんだから!」
彼女はサラリーマンの男性に向かって指を刺しながら、大きな声でそう叫んだ……!
冤罪どころじゃない、完全なる言いがかりだ!
男性も怒り出す……かと思ったら、一切の反応をせずに通り過ぎていく。周りの人たちもそうだ。……いや、何人かいたコスプレ少女たちだけが彼女の方を見ていた。
「……ね、見えてないでしょ?」
僕の前に戻って来た彼女はそう言って笑いかける。
「いや、僕には見えてたんだけど……」
「あっ……」
急にあたふたし始め、顔まで真っ赤になる彼女。
自分が人に見えてないことを示すために目立つ行為としてアレをやったみたいだけど、その行動が僕には見えてることは頭から抜けていたらしい。
「忘れて!」
「……わ、忘れたよ!」
薄いイエローに控えめなフリルのついた可愛らしいパンツ。忘れられない。
「……とにかく。私が妖精でみんなから見えないことはわかってもらえたかな?」
「見えてなさそうなことはわかったけど……妖精!?」
妖精っぽい衣装だな、と思ってたけど本物の妖精だったのか。秋葉原には妖精もいるのか。凄えなあ。
展開が早すぎて、既に僕の脳は言われたことを受け入れるだけのモードになっている。
「私たちは、秋葉原の”萌え”を守る妖精なの」
そう、彼女は改めて僕に宣言した。
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