ヴィープタイム
エリー.ファー
ヴィープタイム
金色の風になればいい。
そうやって、私は嘘をついてしまう。
皇帝ペンギンを煮込まないように気を付けてください。
マグカップで二回、皿を四回、冷蔵庫を十二回。
死体が溢れている。
気を付けてください。
完全に煙の中で死ぬ。
茶色に塗りつぶして灰になれ。
どうか、静かにハイになれ。
いずれ、君と僕で作り出すのだ。
きっとここには愛があるだろう。
熱と人生は暮れなずむために必要だ。
政治と経済を使った遊びは貧相だ。
蔑むなと叫んだ。
その前に、蔑んでいた。
四角い思考を失って、至高の思考へ。
あそこに書いてあった詩ですか。
どうしたかなあ、あぁ、消してしまったかもしれません。
何が書いてあったか、憶えているか、ですか。
いやあ、何だったか。
でも、そうだな。
黒でしたね。色は。
まぁ、それくらいですよ。
誰が書いたかご存じなんですか。へえ、有名な詩人が書いたんだ。じゃあ、価値があったとか。
あぁ、そういうことでもない。
なるほど。
まぁ、詩なんてどこにでも書けますし、印刷すれば何個もできちゃうもんでしょ。これに価値があるとか考える人がいるとは思えませんよねえ。だって、ただの言葉ですから。
誰でも使えるものを、誰かよりもちょっと上手く使えることがなんなんですかね。それで上か下か競ったり、もしくは競わなくてもその上とか下がなんとなく決まったり。それで、どうするんですかね。
カッコいいとか、そういう判断基準なんでしょうかね。
分かりませんよ私には。
一生、分からないことです。
でも、怒る人とかいるんでしょうね。この価値が分からないなんて、とか。文化的な価値の高さを理解できないのは、人間の進化に唾を吐きかける行為だとか。これがどれだけの人の心を癒すかも分からないのか。とか、言うんでしょうね。
キモくないですか。
正直。
そういうやつ、キモくないですか。
知らねぇよって思いませんか。
ウザすぎませんか。そういうの。
場合によっては、そこに詩が書かれていなかった時の方が価値が高いかもしれませんよね。だって、人によっては何も書かれていない壁を所望する人だっているでしょう。もっと言うなら、あそこに詩が書かれていたという過去ができたせいで、その上に何を描いても、あれを塗りつぶしたものとして価値の比較をされて非常に迷惑だと感じる人もいますよ。そうしたら、その場合って価値の高い低いの前に、他人に迷惑をかけるかどうかの話になってきますよね。もはや消しても、その迷惑がそこに存在し続けることをどう解消するつもりなんですかね。
高尚だからなんなんですか。
ねぇ、高尚だからなんなんですかね。
高尚だったら、許可なく壁に詩を書いて、これは藝術だって叫んでいいと思ってるんですかね。いいわけないでしょ。ねぇ。本当に馬鹿なのかね。
藝術って、社会不適合者のための逃げ道じゃないでしょ。
社会不適合者が、日々社会に迷惑をかけてることで罪悪感を抱えて生きているから、俺たち迷惑をかけられている側は気持ちの面でチャラになるわけでしょ。
あぁ、ああいう馬鹿でも、毎日ごめんなさいって思いながら生きてるんだって分かるから。小さい迷惑には目を瞑ってやるわけ。
でもさ。
藝術やってるから凄いんです。藝術やってるから偉いんです。藝術やってるから高尚なんです。藝術やってるから立派なんです。藝術やってるから文化人なんです。
何にもなれなかったやつが、必死にすがる藝術って言葉ほどだせぇものはねぇよ。
あんたも、そう思うだろう。
「そう、ですね」
詩を書いたのがお前だって気付いてるからな。
ヴィープタイム エリー.ファー @eri-far-
★で称える
この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。
カクヨムを、もっと楽しもう
カクヨムにユーザー登録すると、この小説を他の読者へ★やレビューでおすすめできます。気になる小説や作者の更新チェックに便利なフォロー機能もお試しください。
新規ユーザー登録(無料)簡単に登録できます
この小説のタグ
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます