雪が降る
@soundselect1
雪が降る
(夢の中)
笑顔:……なお、す、なお
素直:(あれ、誰かが私を呼んでいる)
笑顔:すなお!すなお!(遠くから聞こえるように)
素直:(この声……、何だかとても温かくて、懐かしい。まるで、空まで響く鐘の音を、内側から聴いているみたい)
笑顔:素直、行かないで。約束したじゃない(だんだんはっきりと)
素直:(当たり前じゃない。私はここにいるから、笑顔。あ、視界が綺麗。こんな景色、生まれてはじめて)
笑顔:素直!!(はっきりと)
素直:えっ?
(夢から覚める)
笑顔:もう、素直全然起きないんだもん。
素直:ごめんね、なんかちょっと変な夢見ちゃって。
笑顔:大丈夫?汗かいてるよ。
素直:本当だ
笑顔:拭いてあげるね
素直:ありがとう
笑顔:何の夢を見ていたの?
素直:え?えっと、それはね…忘れちゃった
笑顔:ふーん、こわい夢?
素直:ううん、怖くなかった。とても温かかった
笑顔:そうなんだ
モキュ:素直起きたモキュ?
笑顔:うん、ようやく起きたよ
モキュ:呼んでも起きなかったから心配したモキュ
素直:ごめんね、そんなに寝てたのかな?
笑顔:もう昼だよ、ほら。休みでよかったね
素直:本当だ、もういい加減起きなくっちゃ
モキュ:珍しいモキュ
素直:そういえば夢の中でね、雪が降ってた
笑顔:雪?
素直:うん、雪…。綺麗だったなぁ
笑顔:もう冬だしね。
素直:雪見れないかな?
笑顔:雪かぁ、ねえ、モキュちゃん、魔法で雪は降らせることはできないの?
モキュ:魔法にも限界があるんだモキュ。例えば、死んだものを生き返らせたり、人の心を操ったり、天変地異を起こすには、魔法の力が大きすぎて代償も大きくなるモキュ。
笑顔:そうなんだね。残念
モキュ:その昔、そういった力を使ったせいで魔法の力が制御出来なくなった魔法少女がいたモキュ。彼女は、戦争を止めようと世界に天変地異を起こしたモキュ。けれどその代償は酷(むご)いものだったモキュ、彼女は魔法が抑えられなくなり暴走した。他の魔法少女たちは力を合わせ、彼女自身を魔力の欠片(音符)の一部に変えたモキュ。
素直:そんな、そんなの、悲しいよ。
モキュ: 魔法は、自分の想いの強さの分だけ、自分への代償がかかるもキュ。これは封印されし魔法少女というおとぎ話モキュ
笑顔:封印されし魔法少女…
素直:魔力の欠片?って、何?
モキュ:魔力の欠片は、魔法少女にとっては大切な源モキュ。これがなくなると、魔法が使えなくなるモキュ
素直:そんなのがあるんだ。知らなかった
モキュ:年に一度、空に星が一層輝く時、魔法少女達の魔力の欠片が星と共鳴し、安らぎを得る。その為、魔法の力が抑えられるんだモキュ
笑顔:ってことは、一日魔法が使えなくなるってこと?
モキュ:そのとおりモキュ!
素直:そうなったらどうしよう。私も笑顔も魔法が使えなくなったら、ブラックラビット達を倒すことが出来なくなっちゃう
モキュ:一日の辛抱モキュ。そうならないように、モキュは音符の欠片を集めなくてはならないんだモキュ
笑顔:音符の欠片はどこにあるの?
モキュ:音符の欠片は、音楽のあるところに発生するモキュ。それは、キュアラビットにしか見えないものなんだモキュ
素直:そうなんだ。もし、私達が普通の人間になっちゃったら、モキュちゃんその時はよろしくね
モキュ:任せるモキュ
笑顔:ねえねえ素直、せっかくこんないい天気なんだし、一緒に外でお買い物しよ!
素直:いいね、そうしよう!モキュちゃんも行こ?
モキュ:アイス食べるモキュ!
素直:もうモキュちゃんたら
―――――――
(SE:ガヤ)
笑顔:素直、こっちだよ!
素直:ちょっと待ってよ、笑顔
笑顔:見て見て、この髪飾り、素直に似合いそう
素直:え〜、笑顔の方が似合うよ
笑顔:ちょっと付けてみて……ほら!
素直:なんか恥ずかしいよ
笑顔:自分でも似合うって思ったでしょ
素直:やっぱり笑顔も似合うってことだね
笑顔:え?
素直:だって、私達、顔おんなじだもん
笑顔:それもそうだね
素直、笑顔:ぷっ…うふふふ(吹き出して笑う)
素直:じゃあ私、笑顔にプレゼントしてあげる
笑顔:私も同じこと言おうと思ったのに!
素直:お揃い…だね
笑顔:うん。素直とお揃い、嬉しい
素直:私も、笑顔とお揃いで嬉しい!
(SE:レジのチンという音)
モキュ:大変モキュ!!
笑顔:モキュちゃん、どうしたの?
モキュ:敵が現れたモキュ!
素直、笑顔:ええ!!
素直:急がなきゃ!
笑顔:うん!
―――――
素直:いないよ、敵。外まで来ちゃったけど…
笑顔:どこ行ったんだろう。それに、何だか静かじゃない…?車の音も聞こえない
素直:あ、あれ!建物の壁に何か張り付いてる!
笑顔:あれって、うさぎの着ぐるみじゃない?
素直:でも、それにしては妙だよ
笑顔:なんか怖いね
敵:ひひひ、見つけたな、僕の姿を(ヘリウムガスみたいな声)
笑顔:わあ!
素直:変な声!
敵:変な声だって?ならこんな声は?あーあー(低い声)
素直:声が変わった
笑顔:あなた一体何者なの
敵:僕は可愛いうさぎの着ぐるみだよ。だけど、僕の声はまだ未完成。君達の声はとても可愛いね。僕にその声ちょうだい!(以下ヘリウム声)
素直:笑顔危ない!
笑顔:きゃあ!(ドスン)
敵:一回避けても次は当てるよ
素直:笑顔、変身するよ!
笑顔:う、うん。
笑顔:双子の音使い素直と笑顔の名において音魔法に命ずる
召喚獣キュアラビット モキュが見届け我を護れ
素直:心の扉を開き音を選ぶ力を我に与えよ
素直、笑顔:サウンドセレクト!
素直:あ、あれ!?
敵:それがどうかしたのか?
素直:やだ、変身出来ない!
笑顔:なんで〜!?
モキュ:大変モキュ!二人とも、魔法の欠片が!
笑顔:もしかして、さっきモキュちゃんが言ってたあれのこと?
素直:ってことは、私達魔法使えないの?
モキュ:今、急いで魔法の欠片を取りに行ってくるモキュ!
敵:そこのキュアラビット!何もわかってないな
モキュ:どういうことモキュ!
敵:僕の名前はミスターラジット。得意技は録音と再生。つまり、他から奪った音を自分のものにし、しかもその音を消すことも可能なんだよ。
モキュ:なんだって!
敵:僕がいなかった範囲ならまだ音は残ってると思うけど、そこまで行った時にはもうこの二人の命はないだろう。魔法を取り戻したら厄介だからね
素直:どうしよう、私達ピンチだよ
笑顔:大丈夫だよ、素直と私の二人なら
敵:何が大丈夫なのかな?魔法が使えないお前達に何が出来る?
モキュ:笑顔、素直。信じてくれるモキュか?必ず戻るモキュ。だから、二人でなんとか…
素直:うん、モキュちゃんを信じてる!だから、安心して行ってきて!
モキュ:わかったモキュ。待っててモキュ。
笑顔:行ってらっしゃい、モキュちゃん。
敵:ふん、行ったか。よし、笑顔!お前の声を頂く!(SE:キーン)
素直:うわっ何この音、笑顔、手繋いで!
笑顔:……して
素直:え?
笑顔:離して!
素直:え、がお?
笑顔:素直なんか大嫌い
素直:笑顔!?
敵:動揺したな。音刃(おんぱ)の舞!
素直:笑顔、危ない!
敵:何!
笑顔:す、なお。重たいよ
素直:笑顔、大丈夫?
笑顔:なんで…、素直…血が!!
素直:ごめん、ね
笑顔:そんな!謝らないで!あの言葉は…
素直:知ってるよ。笑顔が言ったんじゃないって
笑顔:え?
素直:笑顔はそんなこと言わないもの。伊達に双子やってないよ
笑顔:素直、信じてくれるの?
敵:チッ、笑顔の声を奪い、録音した音声を笑顔に再生させたのだが、騙されないとは。まあいい、死ぬ前に素直の声を頂くか。
笑顔:素直に触らないで!!
素直:笑顔…
笑顔:ごめんね、素直。あんな事言って。私は素直のこと
素直:いいの、笑顔、もう私
笑顔:だめ!素直、行かないで。約束したじゃない
素直:当たり前じゃない、私はここにいるよ、笑顔
笑顔:ねぇ、素直。見て、雪が降ってる
素直:本当
笑顔:綺麗でしょ
素直:ピンクの雪、綺麗…
笑顔:素直…?返事してよ、素直。素直!!
敵:貴重な声を無駄にしたな。その責任はとってもらうぞ
笑顔:素直はまだ死んでなんかいない
敵:何を寝ぼけたことを
笑顔:素直は私が生き返らせる
敵:なんだと!それが、何を意味するかわかってるのか
笑顔:だって、素直は私の命と引換にしてくれたんだよ?だったら、私は私の命と引換える
敵:そうはさせるか
笑顔:世界の魔法の力よ、我にその全てを与えたまえ。この祈りに自然の源を音と声と歌に変え、ポリヒュムニアの名の元に、魔力を宿したまえ!
敵:その呪文は
笑顔:素直、お願い、生き返って!
(SE:ゴゴゴゴ 地響き)
素直:笑顔?あれ、私、どうして
笑顔:素直!!
素直:笑顔っ、重たいよ
笑顔:えへへ、ごめんね。もう離れないから絶対
素直:もう甘えん坊さんなんだから
敵:ここはもう危険だ、逃げなくては
素直:笑顔、これってどういうこと?もしかして!
笑顔:うん、実はね。素直を生き返らせたの、私なんだ…
素直:え?笑顔、何言って
笑顔:どうしても、素直に会いたかったの
素直:笑顔
笑顔:ごめん、逃げて。私もう魔法が抑えられない
素直:笑顔!!
(SE:ビルが崩れ落ちる音、騒音)
素直:きゃあ!
(ニュース音:突如発生した自然災害に東京は騒然として逃げ回っております。救助隊が)
笑顔:素直、危ないから私に近寄っちゃダメ
素直:でも
笑顔:もうコントロールできないの。素直、お願い。モキュちゃんに会ったら私を封印して?
素直:そんな事言わないで!
笑顔:お願い、素直
素直:双子はいつも半分こでしょ
笑顔:え?
素直:一緒に祈って。笑顔の魔法が光に変わるように
笑顔:無理だよ
素直:無理じゃないよ、私を信じて、笑顔
笑顔:素直……わかった!
素直、笑顔: 世界の魔法の力よ、我にその全てを与えたまえ。この祈りに自然の源を音と声と歌に変え、ポリヒュムニアの名の元に、魔力を宿したまえ!
敵:うわ!何だこの光は!くっ、奪った声が、放散していく!
封印されし魔法少女:素直、笑顔
素直:え?だれ?
笑顔:光に包まれちゃった、私達死んだの?
封印されし魔法少女:いいえ、あなた達は死んではおりません。ここは、魔法の欠片の中軸(なかじく)の世界。
素直:それじゃあ、あなたは、封印されし魔法少女?
封:ええ。
笑顔:やっぱり私達…
封:いいえ、危惧(きぐ)することはございません。あなた達は、一時的に迷い込んだだけなのです。
素直:それじゃあ、出られるの?
封:ですが、一人だけ…
笑顔:そんな!
封:ここを出るには、どちらかの祈りの力が必要なのです
素直:そんな
笑顔:私、ここに残るよ
素直:笑顔?
笑顔:会えないのは辛いけど、魔法の欠片として素直の中にいれるなら、同じことだよね?
素直:全然違うよ!だって、もう一緒にご飯食べたり、遊んだり、お風呂入ったり、夜更かししたり、手をつなぐことだって出来なくなるんだよ
笑顔:できるよ
素直:え?
笑顔:だって、私、素直と同じ感覚で繋がってるもん。それが双子でしょ?
素直:笑顔…
封:決めましたか?
素直:うん
笑顔:素直、元気でね
封:それでは準備を
素直:私もここに残るよ
笑顔:え!?素直、そんな
素直:いいの。私そうしたいの。笑顔は同じ感覚って言うけど、私はね、笑顔の笑顔を見るのが何よりも一番の幸せたから!
封:いいのですね。ここを出なければ二度と、元の人間には戻れません。一生魔法の欠片の一部として過ごすのです
素直:あなたもそうしたでしょ?だって、本当は誰かを救いたい強い想いから、魔法の欠片になったんだもの
封:もう遠い昔で思い出せない
笑顔:ううん、覚えてるはずだよ。あなたにも大切な人がいたはずだよ
封:皆、私を封印して…この世界を守って(思い出すようにポツリと)
封:あの人との未来を守って
封:思い出しました。そうでした。私もかつては普通の人間だったのです。その頃脅(おびや)かされた敵に、私の恋人を傷つけられ、守ろうとしたのです。そうしたら、こんな事に
素直:あなたもつらかったのね。でももう大丈夫。一人じゃないよ。私も笑顔も傍にいるよ
封:ありがとう。
笑顔:あれ、素直なんだかキラキラ輝いてるよ
素直:笑顔も
封:忘れかけていた想いを呼び起こしてくれました。あなた二人を、元の世界へ返します。私の祈りの力で。
笑顔:え、でも、そうしたらあなたは…!
素直:そうだよ、一緒に帰ろう?皆で祈れば帰れるよ
封:私はいいのです。あの人のいない世界に戻っても孤独なだけ。それに、ここが気に入りました。素直、笑顔あなた達に会えてよかった
素直、笑顔:私達も会えて嬉しかった!
封:ええ、さよなら。私はここに残ります。素敵な双子の胸の中に。
―――――――
素直:ううん、あれ…ここは。
笑顔:素直…いる?
素直:いる!笑顔!よかった、戻ってこれた
笑顔:夢じゃないんだよね?街が元通りになってる。あのウサギさんもいない
素直:夢じゃないよ、ほら
笑顔:本当だ。素直の手、あったかい
モキュ:おーい二人とも!大丈夫モキュ?
笑顔:モキュちゃん遅い!
モキュ:いきなり地震が起きてもしやと思って急いで来たモキュ。でも、無事のようモキュね
素直:封印されし魔法少女さんが助けてくれたんだよ
笑顔:封ちゃんでいいんじゃない?
モキュ:モキュ?魔法使えるモキュか?
素直:うん、ポコアニマート!
モキュ:本当だモキュ。魔法の欠片がないのに、何でモキュ。
笑顔:それなら、ここに
モキュ:これは、光ってるモキュ。相当な魔力が納められてるモキュ。
素直:これからは、ずっと封ちゃんが守ってくれるから、もう二度と魔力がなくなる日はこないよ!
笑顔:ついでにパワーアップしてるかもね
モキュ:二人とも、一気に成長したモキュね。
素直:笑顔、これからもよろしくね
笑顔:こちらこそ、素直とずっと一緒だよ!
―――
封:笑顔、素直。あなた達二人の魔法少女としての活躍を
これからも見守っています。
完
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