日本代表は場面によって攻守を変える、変形型フォーメーションという新たなサッカーの領域に到達した。

 ※時流に乗った記事になるかもしれないのでnoteに早出しする可能性があります。内容によってはしない可能性もあります。


 ※タイトルから書いています。内容が逸れていったら申し訳ございません。


 2022年11月24日(木)。21時27分。日本が勝ちましたが祝日にはなりませんでした。普通に仕事をしました。


 2022年11月24日、21時38分現在で分かっているワールドカップカタール大会の速報。

 モロッコvs.クロアチア、0-0。ドイツvs.日本、1-2。スペインvs.コスタリカ、7-0。ベルギーvs.カナダ、1-0。スイスvs.カメルーン、1-0。


 はい。というわけで、ご存じの通り、日本がドイツに勝ちました。リュディガーの舐めプではないかという動画が出回っていたり、色々と面白い試合でした。


 はい。こんにちは。井上和音です。


 日本が勝ちました。強豪ドイツ! と言われていますが、確かにドイツは強豪ですが、日本が全力を出せるフォーメーションだったり、選手起用だったりしたら、互角に張り合えるのではないかと、自分の中では思っていました。


 正直、フランスやイングランドの試合を観て、その両者が圧倒的な試合運びをしていたのに対し、ドイツは「そこまでないかな……」くらいには思っていました。スペインは強いのかもしれません。ただ、フランスやイングランドがあまりに強いサッカー、相手に何もさせないサッカーを展開している一方で、ドイツは「付け入る隙がありそうなサッカー」をしていたような気がします。


 日本の試合を生で観ました。昨日、2022年11月23日(水)の22:00。前半だけ見て、親は「もう勝てんな。寝る」と言って寝室へと入っていきました。


 自分も「(東京オリンピックの時と同じように、最後の消化試合となってしまうスペイン戦の時にようやく三笘薫選手とか出して、一点くらい軽く入れて、『日本、健闘しました!』みたいな感じで終わるのかねえ)」みたいなことを思っていました。


 正直に言うと、久保選手とか、体格のいいリュディガー選手に、ひょいっと身体を入れられて、何もできない場面などを観て、こんなことを言っていいのか分かりませんが、久保選手にワールドカップは早すぎたというか、久保選手の武器って若いことだけなんじゃないか、みたいに思ってしまいました。


 左サイドからの攻撃って、前半はあったっけ。


 前田大然選手のオフサイドも、伊東選手の絶妙なクロスからのオフサイドでしたからね。前田大然選手も、この大会でセミオートによるオフサイド判定で、ものすごくオフサイドに対して厳しいことは、事前の他の試合を観ておけば分かっていたはずなので、あそこまで完全なオフサイドの位置に猪突猛進で走りに行くのは、はっきり言うとサッカーIQが低いのではないのか。と思ってしまいました。


 後半から、少なくとも久保選手を三笘薫選手に替えなければ確実に負けるだろうと思っていました。


 そう、思っていたら、後半から久保選手に替えて冨安選手が入ってきました。森保監督が戦術を変えました。5バック。そして両ウィンガーは守備型、攻撃型、選手起用によって自由に変えることのできる、変形型フォーメーション。変形型フォーメーションという概念はサッカーにはまずあり得ない考え方だったので驚きました。日本全体を戦闘機に例えると、選手というオプションによって、攻撃になるか守備になるか、自分達で選べるという画期的な、超進化型のフォーメーションを森保一監督、ないしは日本サッカー界の分析班は送り出してきました。


 その後、長友選手に替えて三笘薫選手。前田大然選手に替えて浅野選手。そして、ボランチの田中碧選手に替えて、南野選手。右サイドバックの酒井宏樹選手に替えて堂安律選手。鎌田選手をボランチに下げて、選手交代というオプションを全て攻撃に特化した、超攻撃的な日本代表へと一気に変貌しました。


 これにはドイツも驚いたと思われます。


 前半は日本はマークの受け渡しも出来ていなくて、楽勝で勝てるだろう、という空気が一変します。日本代表のどの選手もゴールを取れる危険な選手ばかりになってしまった。あれ? こんなの日本の分析で観てないよ? 後半からカオル・ミトマが出てきて、そいつに距離感を持って対応しておけば、日本は何もできないはずだろう? ミナミノ? カマタ? イトー? アサノ? ドーアン? 何これ、全員ミドルを狙ってくる選手ばっかりじゃん。フォワードの選手多すぎない? どういうことなのこれ?


 と。ドイツ代表は真正面から、日本の超攻撃的なサッカーをまともに受けることになります。ドイツと日本がようやく対等に戦えるフォーメーションになりました。


 全身全霊。ゴールを多く取ったほうが勝つというシンプルなゲームなので、日本がシンプルにゴールを多くとれるオプションに切り替わりました。


 そして後半30分。日本のもっとも脅威と思われる、三笘薫選手に前線でボールが渡ります。


 「(何をしてくる……)」


 ドイツの選手はそう思ったでしょう。三笘選手はただ立っていただけでした。


 ただ立っているだけなのですが、跳び込めばかわされるという分析があったので、ドイツ代表は何もできません。


 そこで三笘選手は時間を作り、南野選手が一気に裏へと走ります。三笘選手、南野選手、堂安選手、浅野選手、鎌田選手。これらの日本人アタッカーは全員サッカーIQが高いので、何をどうすればゴールになるか、共有意識が生まれていました。


 南野選手がノイアーをわざとパンチングさせるくらいの絶妙な位置にクロスボールをあげました。まんまと引っかかったノイアー選手は、跳び出してしまい、ゴールはがら空き状態に。堂安選手が詰めて、日本は同点に追いつきます。


 超攻撃型のオプションに変えた、日本の戦術なのですが、大事なことというか、2010年南アフリカワールドカップのときの大久保選手もそうだったのですが、足の速く、テクニックもあり、体幹も強く、サッカーIQの高い攻撃的な選手は、充分に守備もできるのですね。三笘選手などが一対一の場面でも守備面で負けていませんでした。これが変形型フォーメーションでの最高の武器ともなりました。日本のサッカーの育成の段階で、一対一のミニゲームは、部活だろうとジュニアユースだろうと、ましてやストリートサッカーであろうと、徹底的に磨かれているので、大抵の攻撃的な選手は、守備でも充分に通用する育成を受けてきている、といのが、ドイツ戦で証明されました。


 そして後半38分。板倉選手のフィードから、浅野選手が利き足ではない右足で、加速した状態で、速度を殺さない、後ろ向きの最高のトラップをしました。「アイツ、後ろ向きのボールめっちゃトラップするもん。そんなんできひんやん普通!」という、有名なあのセリフのそのままのトラップを浅野選手が大舞台で、一瞬のスキをついてトラップしました。


 実況も、解説も、驚いて発言が出来ていなかった。


 次の瞬間、角度のないコースから、利き足ではない右足で、思いっきりボールを蹴り込みます。


 ノイアーは股を抜かれないように、ひざを曲げて、両手を広げてスターセーブと呼ばれるシュートブロックに入ります。まさにお手本のようなセービングでした。あの角度からシュートが天井をぶち抜くという確率は、ほぼ無いのです。入ってキーパーの股を抜いてのゴール。


 浅野選手のシュートは、そのわずかな確率である、天井をぶち抜くコースに刺さりました。もはや、狙ってできるものではなかったかと思います。あのときの浅野選手には、神がかった何かがあったかのように思いました。


 実況も唖然。解説も唖然。一瞬入ったかどうかも分かりませんでした。


 その後、超攻撃型のオプションで選ばれた選手たちは、体を張ってドイツの攻撃を防いでいきます。守る時は5バックになるので、ドイツは決定的な場面を多くは作れませんでした。


 日本の勝利。それは、今まで世界でも見たことがない、変形型フォーメーション。攻撃的にするか、守備的にするか、交代選手によって選べるという、とんでもない戦術から生まれました。今までにない、最も強い日本を引き出すことができました。


 世界に衝撃を与えた、まさにサプライズを起こした勝利だったのではないかと思いました。

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