辿った進路が全く違う同期と、職業や年収を比べてもナンセンスであることは確か。とにかく生きたいように生きろ。

☆☆☆

 タイトルは決めていません。

☆☆☆


 「どうやら本気で勉強する用意を整えたみたいですね。ルーズリーフすら持ってなかったって大丈夫ですか? なんでそれで公務員試験とか受かってたのでしょうか」


 試験対策と学びは違うというただそれだけだ。


 「ルーズリーフなのに2穴ファイルを買ったのですね。保存がきかないかもしれませんね。あと記録用のメモ帳が3つ。仕事用。プライベート用。プライベートで思い付いたとき用。それだけで1500円ですか。田舎の文具屋はさすがにぼったくってきますね」


 「ところで、車で自分一人で買いに行ったのでしょう。とうとう動いたというか。ようやく統合失調症の呪いを自らに課していたのを取っ払ったというか。でも、もう勉強する年齢なのか分からない部分もありますけどね」


 「考えてみれば、あなたの友人が成功した例を見ても、誰も統合失調症になっていませんし、受験勉強をしていない人もいますし、理系で色んな所に留学体験があるようなリッチ(留学資金は借りたと言っていたのでリッチではないのかもしれませんが)な経験をしている人もいて、そんな人にはあなたは勝てっこないんですよね。進路の選択の結果そうなっただけであって、あなたが『都会に行きたい』という理由だけで京都(都会?)を選んだわけですが、まあ、将来のことは考えていなくとも、他の人が歩めない道をあなたも歩んでいるわけです。例え友人から罵倒されようとも」


 「他にも受験勉強をあまりせずに、実学重視の専門学校に行った人なんかは、就職では確実に、あなたより勝ってるわけですよ。国家資格を取るために学校に行くようなものですから。哲学科で取れた資格は社会の高校教師の教員免許だけでしょうに。あなたは教師にだけはなりたくはないと思って、目指すことなどしなかったわけですが」


 「就活でなんとかなるだろうと思っていたわけですが」


 「なぜか統合失調症になりました。終わり」


 働いていないわけではないけど、そうなる。

 

 「統合失調症患者を集めて治験を行う国家プロジェクトとか無いんですかね。耳鼻科の薬と、ブログさえ書ければ閉鎖病棟だろうと行くと思うのですがね」


 また、エヴァンゲリオンのような『選ばれたような特別な感覚』を欲しがっている自分がいる。


 自由でこの上ない、今、この瞬間が、大概の20代後半の人生のなかでもかなり恵まれているというのに。


 資本主義から離脱している時点で、かなり特殊な立ち位置に立っている。今日だって働いている20代後半はいくらでもいるのだ。


 公務員だろうと、医者だろうと。警察官だろうと。みんなが憧れる職種は、もちろんそれだけ忙しいのだ。


 世界は優秀に厳しい。高校時代に嫌というほど経験した。


 「まあボチボチ勉強頑張ってくださいね。仕事辞めないでくださいね。それだけです。苦労を知らなくても、まあいいんじゃないですか。薬で幸せになってしまう人生を歩んでしまったわけですし」


 その幸せを、他の20代はほとんど知ることなく生きていく。

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