第6話
しかし役人にとってのそれは、鉄柵の向こうを照らし、生存確認をするためだけのもの。
人数を確認して黒パンを柵の向こうに置いたら用などない。
牢の中をまるで昼間のように照らした灯りを手に去っていく。
そして鉄の扉が重音と共に閉ざされると、ふたたび光のない暗闇の日々が訪れる。
希望を打ち砕かれた心。
それこそ、今まで彼らが平民たちに与えてきたこと。
そして今、彼らは理不尽だと憎むが……
平民たちがそれを知ったら声を揃えて言っただろう。
「特大ブーメランが返ってきただけだ」と。
「自業自得だ」と。
そして笑うのだ「今の気分はどうだい?」と。
自分がしたこと、言ってきたことが戻ったことを理解していたのは、暗闇の世界に戻っても鉄柵にしがみついて騒ぐ元貴族たちを冷ややかな目でみている
彼らは二度と戻れない世界に生きるわが子たちに思いを馳せる。
ここへ入ってこないように、と。
だから鉄扉が開く度に動けなくなる。
誰かが入れられたのかと、知っている者が連れてこられたのかと。
そして扉が閉ざされて暗闇に包まれると安堵する。
「無事に生きているのだ」と。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録(無料)
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます