第150話 混乱


国名は『イグニス』に決まったが、他にも決めることが沢山あるはずだ。

セオリさんのことだからきっといろいろと考えてくれていると思うけど、今までのことがあるから少し不安だ。


「国名は決まったけど、次は何を決める?そもそも砂漠をどうやって開拓していくの?」


「イチロー君、物事には順番があるのよ、次に決めるのは‥」


セオリが真剣な表情で答える。

「王妃よ。」


「いや、王妃かよ!それよりもっと考える事にあるよね?」


「いえ、まずは王妃です。」

セオリがキッパリと言い放つ。


「わかったよ。でもどうせ、セオリがするんでしょ?」

セオリ以外の全員がそう思っていた。

もちろん、みんな王妃になりたいと思っているがセオリに逆らえるわけがないので我慢していた。


「えっ?私ですか?まさか‥、私はしませんよ。」

セオリの言葉に全員が驚愕する。


「俺達、結婚してるんだよね?」


「もちろん夫婦ですよ。でも王妃はしません。」


「どうしてなの?」


「さすがに神の私が王妃になるのは問題ですよ。対外的にもこの世界の人が相応しいと思います。」


正論だ。

ただ、あえて『この世界の人』って強調するって事は‥。


「意義あり!」

緋莉が抗議する。


「納得いきません!何で妖怪が駄目なんですか!!」

明日香が吠える。


雪花は目をウルウルさせている‥、可愛い。

璃水、瞳、鏡月はセオリが怖いのか抗議はしない。

八重花、咲夜は王妃には興味なさそうだ。

妖怪以外の子達は、ライバルが減りそうなので少し嬉しそうだ。


「そんなに怒らなくてもいいのに‥。イチロー君はどう思う?」


最悪だ。

いつもの強権を発揮してくれればいいのに、こんな時だけ俺に振ってくる。

どうしよう、何を選択しても角が立つような気がする‥。


『セオリさん、助けて下さい!』

心の中でセオリに助けを求める。


『貸し一つですよ。』

正直、セオリに貸しを作るのは怖いけど、ここは助けてもらおう。


「あっ、よく考えたらイチロー君もこの世界の住人ではなかったので、妖怪でもいいかもですね。」


セオリの言葉で俺の立場は守られたが、王妃選びはさらに混乱していくのであった。

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